試合レポート

岐山vs岐阜各務野

2011.07.18

岐山vs岐阜各務野 | 高校野球ドットコム

野々村(岐山)

岐山、苦笑いの「いつも通り」。野々村の好投で初戦突破

 これまで野球では大きな実績のなかった進学校・岐山が今春、県大会で3位に輝き、シード権を獲得した。140キロを超える本格派右腕・野々村高志と、強肩捕手・平光進太郎を中心に勝ち上がり、世間は「今年は岐山が強いらしいね」と驚きの目だ。この夏は期待がかかる同校が、岐阜各務野を3-1で下し、初戦を突破した。

岐山・長谷川哲也監督の試合後の談話は、ときどき冗談が交じって、クスリとさせられる。春も、次戦が強豪・中京と分かるや
「(野々村の登板間隔を空けるため)球場に雨天順延になるほどの水を撒いておいて。5回コールドにはならないよう頑張ります」
とユーモアが飛び出した(と言いつつ、中京戦もきっちり勝利した)。夏初戦の岐山レポートは、長谷川監督の試合後談話にのっかる形でお届けしたい。

▼「また『野々村が好投、打撃は少ないチャンスを生かして・・・』で記事が終わってしまうね」
長谷川監督は試合前、打者陣に「打撃で見返してやれ!」とゲキを飛ばしたという。だが結局、少ない点差をエースの好投で守り切るいつも通りの試合運びに終わり、「ゲキまで飛ばしたのに、これや(笑)」と苦笑い。

▼「今度の試合では、下位打線の時は(打者ではなく)“かかし”を打席に立たすわ」
3得点は、上位が出塁して中軸がタイムリーや犠牲フライで返したもの。音無しの下位打線に対して上のセリフを吐きつつ「・・・と言いながらも、今度は打ってくれるでしょう!」と期待を込めた。

▼「誰もダウンしなかったことと、最終回守備の三者凡退。良かったのはこの2か所だけです」
苦しい戦いになると覚悟はしていたという。打線は低目の変化球に手を出し、相手ピッチャーを助けてしまったと反省。ただし、こうした接戦は慣れたもの。点差の割に選手は落ち着いていて、焦りはなかったそうだ。

▼「あとは言葉のマジック!」
長谷川監督が気を使ったのが「熱中症」対策。食事管理や睡眠環境について選手にアドバイスし、サプリメントも効果的に使ったという。でも「最後は言葉のマジックだよ。選手に『足を吊らんぞ、吊らんぞ』と暗示をかけましたから」とのこと。その甲斐あって、昨年も今年も、試合中に足を吊った選手はいないそうだ。

▼「来年も来いよ(笑)」
これまでにない野球部の前評判に、多くの一般生徒が応援に駆け付けた岐山。学校の期待は最高潮だ。長谷川監督も「応援がすごく来ててビックリしたわ」と感謝する一方、評判の今チームだけで応援が終わらないようチクリ。

と、やや脱線モードでお伝えしたが、岐山がこれだけ躍進できたのも、長谷川監督の雰囲気作りがあるからかもしれない。


岐山vs岐阜各務野 | 高校野球ドットコム

平光(岐山)

もちろん、野々村という、県内屈指の本格派右投手が現れたことは大きい。
空振りがとれる140キロ超のストレートに、牽制やクイックもできて、性格的にも真面目で完璧主義。こんなエースがいれば、勝ち上がれるのも尤も(もっとも)だが、中学時代は無名に近い野々村がここまで成長できたのは、岐山の環境やチームメートにピッタリはまったからだとの声を聞く。
「いい選手、ウチに来てくれんかなぁ・・・。伸びる保証はないけれど、潰れることはないから(笑)」と以前話していた長谷川監督。
もちろん厳しい時は厳しいが、長谷川監督のもと、岐山の選手たちは伸び伸びとプレーしているように見える。

この日は守備陣がエース野々村を支えた。一塁手の川口尚杜は、三塁手や遊撃手からのショーバウンド送球を、見事にすくいあげて捕球し、後ろに逸らさなかった。
「逆シングルでのショートバウンド捕球は自信ありますが、体より左側での捕球についてはそこまででも・・・。ただ、練習の成果もあり、今日はうまく捕れました」と安堵の表情だ。「体勢を低くし、顔を地面に近づけます」とショートバウンド捕球のコツを語ってくれた。春から打順を下げたが(4番→7番)、打撃も上り調子だという。

注目の野々村は、この日も回転のいいストレートを決め、4被安打5奪三振の1失点完投勝利を挙げた。軽く放っているようで、球のノビが素晴らしい。


岐山vs岐阜各務野 | 高校野球ドットコム

マウンドに集まる岐山ナイン

野々村とチームメートの絆も、より深まっている。
川口も、「野々村は以前、一人の世界に入り込むことがあり、試合中、あまり声はかけ合わなかった。でも、春季大会あたりにミーティングをして、声をかけ合うようになりました」。
長谷川監督も春季大会の際、

「ちょっと春先、野々村がチームから乖離したときがあって。もちろん野々村は真面目な選手なので、非は無い(浮かれた訳でも天狗になった訳でもない)んですが、周囲とのレベルの差もあって、自然とそうなってね。元々、試合中は自分のゾーンに入り込むから、顔も怖くなってるし(笑)。僕も荒療治をしたし、野々村もすぐに分かってくれて、今ではメンバー同士声を掛け合ってできています」
と話していた。

そこから3か月が経過。今はスタンド、ベンチ、グラウンドの選手が一体となって、岐山はさらにいいチームになっている。

敗れた岐阜各務野は、エース武山勇太が投打に意地を見せた。
140キロ台も出るというストレートが伸びやかに決まり、打ってはレフトへ三塁打。敵将・長谷川監督も「スライダー・フォークが低目のいやらしい高さに落ちていた」と称え、スタンドで観戦していた某強豪校コーチも「プレーに強い気持ちを感じます」と目を見張った。

同校は2005年、各務原東と岐阜女子商が合併して設立された。数年前の夏はコールド負けが続いていたが、近年は強化され、武山や2年生・金子秀磨のような好選手も出現している。
シード校と互角の戦いをした今季レギュラーのほとんどは1・2年生であり、来年以降も楽しみな新興勢力だ。

(文=尾関 雄一朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.18

【神奈川】保土ヶ谷球場では慶應義塾、横浜が登場!東海大相模は桐蔭学園と対戦!<春季県大会4回戦組み合わせ>

2024.04.18

首都二部・明星大に帝京のリードオフマン、東海大菅生技巧派左腕などが入部!注目は184センチ102キロの大型スラッガー!

2024.04.18

強豪校を次々抑えて一躍プロ注目の存在に! 永見光太郎(東京)の将来性を分析する<高校野球ドットコム注目選手ファイル・ コム注>

2024.04.18

【山形】鶴岡東は村山産業と山形工の勝者と対戦<春季シード決定ブロック大会組み合わせ>

2024.04.18

【春季埼玉県大会】ニュースタイルに挑戦中の好投手・中村謙吾擁する熊谷商がコールド発進!

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.15

四国IL・愛媛の羽野紀希が157キロを記録! 昨年は指名漏れを味わった右腕が急成長!

2024.04.17

仙台育英に”強気の”完投勝利したサウスポーに強力ライバル現る! 「心の緩みがあった」秋の悔しさでチーム内競争激化!【野球部訪問・東陵編②】

2024.04.15

【春季和歌山大会】日高が桐蔭に7回コールド勝ち!敗れた桐蔭にも期待の2年生右腕が現る

2024.04.16

【春季埼玉県大会】2回に一挙8得点!川口が浦和麗明をコールドで退けて県大会へ!

2024.04.09

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード