2010年07月25日 長良川球場

県岐阜商vs大垣日大

2010年夏の大会 第92回岐阜大会 準決勝
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県岐阜商 恩田&岩越

勝負の采配

しびれる試合だった。
7回を終わって0対0。大垣日大・葛西侑也、県立岐阜商・松田侑樹の息詰まる投手戦が続いていた。
初回無死一塁の初球から大垣日大・阪口慶三監督がエンドランを仕掛ければ、県立岐阜商・藤田明宏監督も2回2死一塁からエンドラン。4回裏の守りで大垣日大が併殺を奪えば、5回表の守りで県立岐阜商も併殺を奪い返す。レベルの高い攻防が続いていた。

そして、8回。
藤田監督が勝負に出た。ここまで5安打無失点と好投していた松田に、背番号18の岩越駿介を代打に送る。0対0の緊迫した投手戦で投手を代えることは勇気がいるが、藤田監督に迷いはなかった。
「松田が抑えていくなかで流れを見ていました。7回まででいいと思っていましたが、6回に4球で終わったりしてあそこまでいった。8回は(三者凡退で)抑えましたけど、フォームも球もキレがないように感じました。それで、ここしかないと。あと(の投手)は何人もいるので」。

秋の決勝では葛西から本塁打を放っている岩越。「対葛西はオレの仕事」と燃える切り札も準備はできていた。2イニング前からブルペンでバットを振っていた。
「(展開に関係なく)松田のところでいくぞと言われていました。葛西は出所が見えづらくて、インコースを突いてくる。それに対応できるように、普段から(インコースを)振り払うような打ち方をしたり、インサイドアウトのスイングをするためにインコースの球を右に打つ練習をしてきました。きのうは葛西のDVDやYouTubeの映像を見てイメージをしました。準備は万全でした」。
そしてカウント1-1からの3球目。岩越は内角のスライダーを思い切り引っ張りレフト線へ運ぶ安打。見事に期待に応えた。

「(右打者の)酒井田(照人)、今村(昴登)にはインコース攻めが多かった。藤田先生から『インコースが来たら、開いてもいいから回転で打て。振り抜け』と言われてたんですが、その通りのバッティングができました」。
殊勲の岩越にすかさず代走・後藤京佑を送り、犠打で1死二塁。福田晃規の二塁ベース寄りの当たりは好守に阻まれたものの、2死三塁となった。ここで阪口監督は伝令で間を取る。打席の恩田英臣は、そこを狙った。
「(藤田監督から)『初球を打て』と言われていたので、狙ってました」。
低めのストレートを叩いた当たりは、飛びついた三塁手の横を抜けるタイムリーになった。

ここで見逃せないのが、恩田のこの後の走塁。
リードを大きく取って、葛西に揺さぶりをかける。児玉健一郎に4球投げる間に、けん制も3球連続を含む4球投げさせた。結果的に児玉はライトフライに倒れたが、この間にもショートの小島啄矢がタイムを取ってマウンドに行くなど、なおも大垣日大に「攻め続けられている」「面倒だ」という精神的な負担を与える動きだった。

だが、このままで終わらないのが今春センバツベスト4の大垣日大
9回、代わった左腕の各務隼大から先頭の高田直宏がセンター前安打で出塁。続く時本亮はバントを失敗してカウント1ボール2ストライクと追い込まれるが、各務が痛恨の死球を与えて無死一、二塁と好機を広げた。
ここで打者は左腕対策で起用されていた背番号13の六番・富田壮大。富田はバントの構えで2球ウェーティング。カウントが1-1と整ったところで、今度は阪口監督が勝負に出た。
一、二塁の走者が同時にスタートし、富田が打つ。

藤田監督も「バントだと思っていました」と驚く、意表を突く采配だったが、各務の投じた球は外角高めへのボール球のストレート。富田のバットは空を切り、二塁走者の高田は挟殺された。
これで息を吹き返した県立岐阜商は、続く2人を内野ゴロに打ち取り、息を呑む熱戦に終止符を打った。
「バントで見逃して1-1になったでしょう。あとは左が続く(富田の後ろは6人連続左打者)から、エンドランをかけました。(同点ではなく)9回で勝負を決めたろうと思ったんでね。あそこでボールが来たということ。運もあります。毎日やっとる監督がやることがセオリーだし、それが采配。結果をどうこう言ったらサインなんて出せませんよ」。(阪口監督)
だが、この日はその采配が裏目に出た。9回から登板し、自ら与えた死球で無死一、二塁と窮地に立たされていた各務はこれで生き返った。勝負を決める1球になった。

実は、藤田監督が大会前に選手たちに言っていたことがある。
それは、「大垣日大戦は監督の采配で勝つ」ということ。阪口監督はベテランらしく、たびたび報道陣を使って“口撃”、“舌戦”を仕掛けることがある。
東邦時代にはこんなことがあった。中京大中京との対戦前のこと。報道陣を前に「選手の素材では負けているけど、監督ではこっちが上。監督の差で勝ちますよ」。事実、言葉通りに劣勢といわれた試合をものにした。今回も、県立岐阜商戦を前にそういう作戦で来る可能性がある。そのときに選手たちが動揺しないため、藤田監督はあらかじめそう言っていたのだ。
阪口監督が“口撃”をしてくることはなかったが、試合は言葉通りになった。

お互いの指揮官が、賭けに出た勝負。
明と暗を分けたのは、紙一重の差かもしれない。
だが、その裏には、藤田監督の言葉を信じて準備をしてきた県立岐阜商ナインの見えない力にあった。相手監督のコメントまで想定して準備をしてきた藤田監督。まさに、監督で勝った試合だった。

(文=田尻 賢誉




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