仁志 敏久氏に聞く!グラブの選び方!
茨城の名門常総学院を母校とし、大学野球、プロ野球、そしてメジャーリーグも経験している二塁の名手、仁志 敏久さんにグラブの選び方に関して話を伺った。自身のグラブへのこだわりや、グラブ選びのコツなど、これから選ぶ人にはぜひ知っていてもらいたい知識が盛りだくさんな話を紹介していく。
今と昔のグラブの違い
仁志さんの高校時代と、現在とでは高校球児が『グラブ』を選ぶ際に何か違いがあるのかと伺ってみた。
仁志 敏久さん(以下、「仁志」) 「今と昔とでは、まず種類が増えましたね。形に関して言っても、グラブ自体の形はもちろん、網の形まで色々な種類がありますね。なので、昔に比べて自分の好きなものが選びやすくなったと思います。今は、店頭にも多くのグラブが並んでいますが、僕の高校時代には、カタログを見て頼んでいましたから」
現在では、大きな野球用品店にいけば沢山の種類のグラブを実際にはめて吟味することができる。昔に比べてグラブが選びやすくなったと同時に、自分にあったグラブを一つ見つけることが重要となってくる。
グラブの形から選ぶ
仁志 敏久さん
現在、様々な形のグラブが売られているが、その中から自分にあったグラブを選ぶ際に仁志さんは、なにか気をつけることはあるのだろうか?
仁志 「今は、プロ野球選手の○○モデルのようなものが出ているので、自分のポジションに近い選手のグラブを選ぶのがいいと思います。たまに、万能だからという理由でとりあえず投手用のグラブを選ぶ人もいますが、あまり良くありません。僕でさえ、投手用のグラブで内野を守れと言われたら使いにくく感じますね。グラブで、パフォーマンスが落ちて、下手になることもあるので、自分のポジションにあったグラブを選ぶことも上達へのコツになります」
内野手、特に遊撃手や二塁手は小さめのものを、外野手は大きめのものを、というようにポジションによって適切なグラブの形を選ぶことにより、自分の最大限のパフォーマンスが発揮できるようだ。
また、最近は網の形も様々なものが出ているが、その形に関しての違いとは?
仁志 「ヒモでがっちりと結ばれているタイプは、打球の強さに負けないと言われています。比較的早い球が飛んでくるサードの人が使ったりしています。僕は、十字のグラブだと指が引っかかってしまうことがあるので、穴がないタイプのグラブを使っていました」
大きさ、形だけではなく、網の形もグラブ選びの一つの要因となる。自分のポジションにはどのような打球が飛んでくるのかを理解し、それにあった形を選ぶことでパフォーマンスはさらに向上するようだ。
革によるグラブの違い
仁志 敏久さん
続いて、グラブの材料である革に関して、仁志さんのこだわりを伺った。
仁志 「革に関しては、着色をしていないもののほうが素材の良さを生かせるという話を聞きますね。着色がしてあるものだと、手袋に色移りしたり、雨の際に色落ちしたりする恐れもあります。また、牛の革を使っていると言っても、どこの部位かによってグラブの形も変わってきます。同じモデルで同じ形のグラブだとしても、革の違いによって違うものになってしまいます。
グラブは一つ一つに個性が必ずあるので、同じグラブはありません。自分に合うものをしっかりと吟味して見つけたほうがいいですね」
同じモデルではあっても、一度実物をはめてみることでわかってくるグラブの個性がある。そのため、グラブ購入時にはやはり実際に店頭に行き吟味することが重要となってくる。
試合用グラブと練習用グラブ
プロ野球選手では、試合用グラブと練習用グラブを使い分けることが一般的となっている。なぜ試合用と練習用とを分けるのか、また、高校球児も試合用と練習用に分けるべきなのだろうか。
仁志 「僕も練習用と試合用は分けています。練習用では、様々な捕り方を試したりするので、形がすこし崩れてきます。そのため、試合用では形が崩れていないものを使っていました。高校球児もできるならば分けたほうがいいと思います。雨の中の練習などで、水を吸ったり、ドロドロになったりしたグラブはやはり形が崩れていくので試合用と分けた方がいいですね。よく、『グラブは大切にしなさい』という話を聞きますが、二つ持っていた方が一つの消耗が少なく大切にできると思います」
練習から使い慣れたグラブを試合でも使いたいと思う気持ちもあるが、完璧なパフォーマンスを追求すると、少しでも形の崩れていないものを使う方が良いようだ。また、グラブは消耗品でもあるため複数持つことで、一つ一つを大切に扱うことができる。
オーダーグラブと仁志さんのグラブへのこだわり
仁志 敏久さんモデルのグラブ
最近では、オーダーメイドグラブを作る高校球児も少なくはない。そのような現状の中で、オーダーメイドグラブに関しても話を伺った。
仁志 「しっかりと吟味をして、できるのであれば自分用を作ったほうがいいですね。やはり、自分の手になじむものが一番いいので。僕もオーダーのグラブを使っていましたが、作り手によってはすごくなじむグラブを作ってもらえるので重宝していました」
また、仁志さん自身が使っていた巨人時代と横浜時代のグラブには、大きな形の違いがあったという。
仁志 「実は、巨人時代と横浜時代とでもグラブの形は若干違いますね。大きな違いとしては、巨人時代のものはグラブの面に当てて取ることを考えて作られています。しかし、それでは難しい球を取るのに限界がきてしまうので、横浜時代のものは、しっかりと掴める形のものにしています。他にも、人差し指をグラブから出すと思いますが、僕のグラブでは、人差し指を出すところに特別に革を貼ってもらったり、出しやすいようにグラブ内の芯を抜いてもらったりと工夫をしています」
グラブをはめて握った瞬間に自分が使えるグラブかどうかがわかるという仁志さん。高校球児の皆さんもやはり、実際に店頭ではめてみてその質感を確かめることが非常に重要となってくるだろう。
グラブによってプレーが左右されることもあるため、グラブ選びは慎重に行い、その後の自身の活躍につなげていくことが大切だ。