Column

小さな積極性

2015.08.16

遠藤友彦の人間力!

 夏の甲子園は3回戦に突入し大きな盛り上がりをみせていますが、その裏側では新チームがスタートしています。前チームの敗戦を振り返り、新チームでは同じことを繰り返さないように練習していることと思います。

 今夏、何試合か夏大会本番の試合を観戦しましたが、印象に残ったのは『積極性』です。積極性のある選手が活躍し、積極的に動けるチームが勝利していることに氣がつきます。

 私がサポートしているチームの中でも、積極的な選手と消極的な選手に大きく分かれていました。消極的な選手も夏大会前までは積極的に動いていました。最後の夏になると、驚くことに動けなくなっています。
消極的になったひとつの原因は、結果を強く考えてしまい失敗を恐れて動けなくなったことが考えられます。「負けたら終わり」という感覚が、自分の積極性を消していくのです。

 単純に動けばいいということではなく、自分がしようとしていることに対して身体が動いているかどうかです。手足に何か重りがついているように、鈍くなっている選手をみて積極性が来夏の大きなテーマと捉えていますが、「最後に積極的になる」ためにはどうすればなれるのか・・考えてみましょう。

大きな目標と小さな積極的行動の積み重ね

チーム全員に発言する機会は均等にあります。
(写真はイメージ)

 新チームの指導をしたときです。選手に意見を求めると同じ選手が発言をします。チーム全員に手を挙げて発言する機会は均等にあります。しかし、そこで手を挙げられる人と挙げられない人がいます。

「こんなことを言っていいのかな」
「間違っているかも」
「恥ずかしい」

 様々な感情で手が挙がりません。間違っているかどうかは発言してみなければ分かりません。アクションする前に「違うかも」という否定的な考え方を持ち、失敗をイメージしている人は野球で活躍できるわけがありません。

 たくさんの時間を共有して苦楽をともにしている仲間の前で「恥ずかしい」という感覚がある選手が、公式戦で活躍できるのでしょうか。

 発言するということは、自分以外の仲間に対しての発信でもあります。同時に、自分に対して改めて確認していることにもなります。狭い考え方で、自分のことばかり考えているようでは、チームのために・・という共有はできません。

 積極性を身につけるためには、目指す目標についても考えなければいけません。小さな目標であれば狭い考え方で終わり、自分以外のことについて考えられません。大きな目標を立てて絶対に叶えてやると思えば、自分だけではなく周囲の仲間のレベルアップまで考えられるようになります。

 野球は一人だけうまくても勝てないのはすべての人が分かっています。スタメンの9人だけではなくチーム全体がレベルアップしないと大きな成果は出せません。


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 □□□の目標を叶えるために、できることを増やしていく!

 これもできるように、あれもできるように・・

 目標が自分を積極的に変えていきます。今までは「何となく」という感じで言われたことだけをしている選手でも、主体的に自分で考え動くように変化していくのです。

 新チームのミーティングで、「発言する内容がどうこうではなく、まずは自ら手を挙げて発言する積極性なくしてレベルアップはありえない。誰かが発言してくれるという受身の消極的考え方を捨てろ」と厳しい口調で伝えました。
それからは発言する選手も増えましたが、言われてからアクションするようでは物足りません。言われてもやらないよりはやった方がいいですが、言われたからやるという心も弱いのです。

 自分から行う小さな積極的な行動の積み重ねが最終的に「前に出られる選手」に成長していきます。最後の夏「これで負けたら終わり」という試合でも積極的に動ける選手になるためには、小さな積極性を大切にすることです。

 誰かに任せる習慣、自分がしなくてもあいつがやってくれる。安全な場所で遠巻きに見ているようなスタイル。腰が引けているような毎日を過ごして最後の最後に、「積極的になろう」と思っても積み重ねた習慣は変えられません。

準備と積極性

積極的なミスは良いが、消極的なミスはダメ
(写真はイメージ)

「積極的なミスは良いが、消極的なミスはダメ」
指導者がよく使う言葉です。消極的な動きの裏には必ず消極的な心があります。

試合を見ていると、
「積極的に前に出たら打球がグラブに入ってくれた」
「積極的にスイングしたらポテンヒットになった」
「打者のインコースへ積極的に投げ込んだら甘い球だったけど詰まってくれた」

 なんてことは良くあります。動かないと何も始まらないし、動いてみると良い結果が生まれることはたくさんあるのです。

失敗を怖がる心
誰かに任せようとする心

 新チーム指導では各選手に「小さなことでも積極的に動くこと」を耳にタコができるくらいに言います。指導者として選手が積極的に動けば、それをその場で評価します。試合の中での動きだけではなく、普段のプレー以外のことについても積極性を感じたことについては褒めるようにします。

 選手を叱る対象は、失敗をしたとかではなく「消極的だったとき」です。積極的になるためには準備が必要です。何も考えていないで行動を起こしたとき、一瞬動きが遅れます。それが消極的に見えるのです。

 準備をしているとスっと身体が動きます。準備と積極性は一対なのです。


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小さな積極性

野球ノートを活用
(写真はイメージ)

 来夏、最後の最後に積極的なプレーができるよう今から何事も意識して取り組むことです。一日が終わった夜、寝る前に「今日一日積極的だったか」を振り返ると良いでしょう。私の考える野球ノートを活用している選手は、毎日のチェックシートに◎○△×を記入して振り返ると良いでしょう。

 小さな積み重ねが、大きな力になっていきます。毎日の確認が自分を変えていきます。

「次の機会に前に出よう」

 次、次と後回しにする選手ができたためしがありません。その瞬間瞬間が勝負なのです。積極的に動けばミスもあります。そんなミスは次に取り返せばいいのです。指導者も積極的なミスは大目にみてくれます。

「次はできるだろう」

 積極的なミスから「次」が生まれていきます。消極的なミスからは「繰り返したくない」という「ダメな次」が生まれます。甲子園をテレビ観戦する機会があれば、各選手の「積極性」をみてください。能力があっても、最後に消極的になれば力を発揮することなく終わります。

 積極的になるためには確固たる自信も必要です。「絶対大丈夫」と思えるくらいの積み重ねをして、ミスも結果も恐れないような心を一年間通して作り上げましょう。

 小さな積極性・・

 自分の成長のため、チーム強化のために重要なキーワードです。

(文=遠藤 友彦


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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