Column

来年甲子園に行くための一年計画

2013.08.31

遠藤友彦の人間力!

 

 夏の大会が終わり、新チームの始動が始まりました。しかし、いきなり練習試合をするのは「×」です。一年間あれば勝負できるチームを作れます。練習試合で経験を積むことが「勝てるチーム」になるとは限りません。

エントモ著書「準備力」にも書いていますが、チーム作りには取り組むべき順番があるのです。まず最初に考えなければいけないのは、目先ではなく「一年後」です。

 新チームになれば秋の大会がすぐ目前にあります。よって、試合経験の乏しい選手たちに「とにかく試合を」と思い経験させたくなるのが指導者です。でも、このスタートでうまくいっているでしょうか。今までを考えると”そうじゃない”ことに氣づくことでしょう。

 最初のスタートですることは、「なぜ前のチームではうまくいかなかったか」を把握することです。不思議な負けなし、というように負けには必ず原因があります。控え選手として、前のチームをじっと見ていた選手も「なぜ」は分かると思います。

技術的に足りなかったこと

メンタル的な弱さ

 新チームの選手たちに聞くと、「監督の見ている所ではやっているけど、見ていないところでは適当だった・・」とか、「整理整頓ができていなかった」など数々の問題が選手目線で出てきます。

 「逆方向に打たないと攻略できないのに、逆打ちの練習を怠っていた」「インコースに投げるのが苦手で、相手の弱点であるインコースに投げ込めなかった」など、技術的な問題も出てきます。

何がまずかったのか・・

 過去をしっかり見つめるのが一歩目です。大抵のチームは過去のことと考え、敗因分析を怠るチームが圧倒的に多いのです。新チームは「一歩目」が重要です。正しい一歩目を出さないと、時間と共にずれていきます。都度修正は必要ですが、一歩目の方向は重要なのです。

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[page_break:同じ過ちを繰り返さない]

同じ過ちを繰り返さない

 目標の定め方も重要です。車のナビゲーションは、目的地を入力するとそこまでの最短距離(道のり)をナビゲートしてくれます。目的地を入れなければ進めないのです。

「甲子園出場が目標です」

「全国制覇です!」

 どの学校も言葉は甲子園ですが、やっていることは地区予選一回戦負けってことが多いのです。目標を定めたら、「それに近づくための行動」を明確にする必要があります。行く場所(目標)を全員で共有し、選手全員で腹を決めないといけません。

 甲子園出場が目標であれば、それなりの覚悟を持って臨まないといけないのは誰でも分かることです。甲子園出場にふさわしい言動が求められます。覚悟なき挑戦は、途中で心が折れます。厳しい練習、数々の困難を乗り越える原動力は【目標】なのです。

 ここに時間をかけるのが、来夏、成果を出すコツです。この「じっくり話し合う」時間を取らずに進めば、選手ばらばらの感覚で動き出します。途中で様々な問題が出てきて、チームが成長するときに誤った方向に歩むことでしょう。

原因追求、解決策、そして明確な目標・・

次に必要なのは、技術の目安です!

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[page_break:勝ち上がるための年間スケジュール]

勝ち上がるための年間スケジュール

 打撃では、甲子園まで勝ち上がるためには好投手と必ず対戦します。好投手相手に、自由に打っても成果は出せません。全員で「逆方向に」ができないと勝ち進めないのです。

 誰でも「引っ張りたい」と思うのが打撃です。しかし、自我の欲求を取り除き「チーム打撃」に徹する精神力が必要です。「右に打て」といってすぐに対応できるほど甘くありません。一年間かけて試行錯誤しながら、どうすれば逆方向に打てるのかを突き詰めていくべきです。

 投手陣は、球のスピードがなくても「低め」「インコース」の精度を磨けば何とか抑えられます。

投手は、三振オリンピックやスピード選手権で一番になるために投げるのではありません。好投手の条件は、「アウトが取れる」ことなのです。

どうすればインコースにマイナス感情なく投げ込めるのか

低めに集めるための投げ方はどうすればいいのか

 ただ何となく日々を過ごすのではなく、【課題】を持って練習や試合をするべきなのです。大きな方向性をにらみながらやっていくことと、身近に出た課題を意識していくのも大切です。

 例えば、土日に行われる練習試合でミスがあったとします。そこで出た課題を月曜日から金曜日まで意識して取り組みます。そして次の土に日にそれを試してみる。「同じミスは繰り返さない」のが勝てるチームへの道です。小さなこともチーム全体の課題と捉え、取り組んでいく。大きな方向性を意識しつつ、目前の課題にも対処していくことです。

エントモが出版している「考える野球ノート」に、一年間の流れが書いています。

<8月>新チーム方向決定

スタートするときに、チーム・個人の方向を決める。目標・目的を明確にする。

<9月>基本反復

形を意識し、基本をとにかく大切にする。

<10月>失敗上等

強みをハッキリさせ、キャラクターを作る。失敗を怖がらずに、経験しながら修正していく。

<11月>身体強化

トレーニングで自分を追い込み、怪我のしない身体を作る。

<12月>食欲増進

好き嫌いなくバランスよく食べ、身体を大きくするためにたくさん食べる。

<1月>試合感覚

すべての動きを試合のようにする。

<2月>我慢忍耐

厳しいことを積極的に受け入れ、退屈と思われることを繰り返す。

<3月>爆発

試合ができる喜び、試合ができることに感謝する。

<4月>競争

決められたイスなどひとつもない。自分のポジションは自分で掴み取る。

<5月>原点回帰

技術の基本を大切にする。当たり前の実践を今一度見直す。

<6月>行動思考

結果思考は身体が動かなくなる。何を考え、自分の身体をどう動かすかに集中する。

<7月>全力

すべて出し切る。本番ギリギリまでは競争。役割が決まったらそれに徹する。

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[page_break:近くしか見ていないチームは勝てない]

近くしか見ていないチームは勝てない

 8月が新チームスタートで、翌年の7月が本番とします。エントモなら何を月の課題として意識していくかを、考える野球ノートに書き記しています。このように何かを集中的に意識しないと勝てるチームはできません。新チームのスタートに、「何となく」練習試合をしているようでは夏の成果は望めないのです。

 私がサポートして甲子園で優勝、優勝、準優勝したときの駒大苫小牧高校は、「一年のスパン」で考えていました。秋と春は関係なく、とにかく夏という考え方を持っていました。もちろん、秋と春を適当に戦うのではありませんが、夏を意識したチーム作りを秋からやっていたのです。

 春の大会が一年のスパンで「追い込みの期間」だとします。大会期間中でも「追い込み練習」(厳しい練習)をやめることがありません。選手はヘトヘトで春の大会を戦っていましたが、方向性をしっかり見据えているチームなので、結果的に負けることはありませんでした。

 その大会ごと「勝つ」ことを考えているチームがうまくいかずに敗戦します。その敗戦から課題を見つけることなく「次」と考えます。そして、同じ繰り返しをしていきチームの強化ができないのです・・

もうここまで読めば、目標と計画、心を決めてから歩んでいくことがいかに大切か分かったことでしょう。

遠くを見ながら近くを見る

近くを見ながら遠くを見る

 近くしか見ていないチームは勝てないのです。一年間かけてのチーム作り、どうぞ心を決めてからスタートして下さい!

※ 考える野球ノートは市販していません。興味ある方は下記へアクセスしてみてください。詳細が分かります。


http://www12.plala.or.jp/endou27/entomo_kp3.html

(文=遠藤友彦

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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