Column

逆算して考える

2018.01.29

遠藤友彦の人間力!

どんな選手になりたいのか方向性を明確にする

ミーティング中の選手たち(写真はイメージ)

 どんな選手になって勝負をかけるのか、選手は受け身ではなく自分で方向性を明確にして正しい努力をしなければいけません。

 チーム指導や選手指導をしていると、受け身姿勢の選手と積極的な選手がいることに気がつきます。どちらの選手も練習をして努力をするのですが、時間の経過と共に成長度合いは変わっていきます。当然、積極的に何かを得ようとする選手の方がうまくなっていくのですが、「どうしたら積極性が出るのか」を選手は悩みます。

 自分が歩む方向性が明確な選手は、自然に積極性が身についていきます。方向がはっきりしていれば「どうすれば」という心が芽生えます。目指す方向が不明確な選手は、今行っている練習の意味も分からず「なんとなく」という、やらされている感覚の練習になります。

 ある投手にこういった質問をしました・・

 エントモ「2018年はどんな投手になりたい?」
 投手「連投ができる中継ぎの投手になりたいです」
 エントモ「どうすれば連投ができる投手になれる?」
 投手「・・・」

 選手はなりたい理想像があっても「どうすればなれるのか」を詳しく考える必要があります。彼とは三時間以上個別にミーティングをしましたが、「どうすれば」「どうしたら」を繰り返していくと具体的行動に結びつき、それが積極性に変わっていきます。

 先発投手が一試合投げ切って連投することは故障にも繋がりかなり難しいですが、中継ぎとして短いイニングであれば連投は高校生でも可能です。ただ連投をするのではなく、相手打者を抑えながら連投をしていくためにはいつもフレッシュな状態で登板することが求められます。ふらふらの疲れた状態で登板すれば、持っている力を発揮できないで終わることでしょう。

 連投しても抑えられる投手を目指すならば、必要な資質を持ちつつ大事なことを意識して実践できる人になりたいものです。

 

 肉体的なことを考えると、登板した後の疲労回復が大切です。「食べる」「休む」ことで自分ができる最大限の疲労回復行動をすることです。積極的回復を考えると、身体を休める前にLSDなどを取り入れることも良いでしょう。ジョギング程度のスピードで有酸素運動をすることで、血中の乳酸を少なくするのです。

 

 技術的には、無理のあるフォームで投球していては回復に時間がかかります。身体に負担のかからないフォームの追及もしたいものです。明らかに腕や肩に負担がかかる投げ方をしている投手がいますが、そういった投手は1試合は投げられますが連投できない傾向にあります。

[page_break:試合でどんなプレイをしたいのか]

 

試合でどんなプレイをしたいのか

 

(写真はイメージ)

 では、試合の中で、どのように考えて登板すると連投できる投手に近づくのでしょうか。

 

 単純に考えると「球数を少なくする」ことで疲労は最小限に抑えられます。指導者が球数が少ないのでもう1イニングと欲張っては意味がないのですが、投げるイニングを決めてくれて先の試合を考えてくれる指導者であれば、少ない球数でトーナメントを連投することもできます。

 1イニング ⇒ 目標10球

 

 目標は10球ですが、15球までは合格と私はしています。16球以上になったときは失敗(投げ過ぎ)です。登板までのブルペンでの投球数も重要です。中継ぎですから登板までの時間をどのように使うのか、いつ監督から「いけ!」の指令が出るか分かりません。

 

 社会人野球時代、控え捕手としてブルペンにいたこともあります。ピンチになると交代のタイミングじゃないのに何度も捕手を座らせて投球練習。序盤からピンチの連続、結局終盤に登板。登板までに100球以上投げてマウンドに行く投手もいました。本来であれば中継ぎ投手は一番良い状態で登板し、ピンチの火消しをしなければいけないのに先発投手と同じぐらい投げて登板しているようでは、フレッシュな状態での登板には程遠いのです。

 戦況を見つめながら、ベンチ内の監督と連携を取りながら無駄な投球は控えながら(我慢しながら)ウォームアップすることが重要です。捕手を座らせるのは、登板するちょっと前が理想です。それまでは捕手を立たせて投げる「立ち投げ」が中心です。もしくは一度少ない球数で捕手を座らせ肩を作り、後は直前までキャッチボールと立ち投げで冷やさないようにするかです。

 ブルペンやベンチにいて登板する前にやるべきことはたくさんあります。二番手以降で登板する場合、登板したときには自分有利になっていることが大事です。試合開始から相手打者を観察して、どんな球に手を出してどのような結果を出しているのか。苦手と思われるコースや球種、逆に振れているコースや球種は何なのかを知ることです。試合中に情報を得ることで精神的安定にも繋げることもできます。

 試合の中で球数を減らす工夫もあります。相手打者との駆け引きによって減らすことも可能です。

 バッテリーからの質問で「どう配球しますか?」と聞かれます。

 エントモ「強打者が変化球を狙っていたら、何を選択する?」
 バッテリー「甘くなったら打たれるので、ストレートを投げます」
 エントモ「強打者がストレートを狙っていたら、何を選択する?」
 バッテリー「一発が怖いので、変化球を投げます」

 バッテリーは相手打者の雰囲気を考え、狙っていたら「狙っていない球種」を選択しがちです。それも間違いではないのですが、球数を減らす観点から考えると「狙っている球をあえて選択して勝負せよ」と選手に伝えます。その日のコントロールによって選択は変わりますが、ある程度コントロールできる日は打者が狙っている球を投げます。

 

 もちろん狙っている球を投げて甘く(高く)なれば打たれる可能性は高くなります。バッテリーが考えている「狙っている球を投げたら打たれる」という思考は、私の考え方では間違っています。狙っているがゆえに、その球種が来れば「きた!」と思いミスショットするのです。打者は力みが生じたり、強引に引っ張ったりすることもあります。

 

 狙われていることをマイナスに捉えるか、プラスに捉えるか・・。ここは重要なポイントです。狙っている球を、ちょっと甘め&低めに投げれば大抵の打者はスイングしてきます。低いぎりぎりのコースであればゴロになる可能性も高く、うまくいけば1球で凡打にすることも可能です。

 

 ファールで粘られる・・

 打者がファールにするコースを考えると、圧倒的に多いのがアウトコースです。インコースは逆にファールになりづらいのです。インコースは差し込まれて内野ゴロ、もしくはバットが球の下にもぐり込みフライになることが多い。たまに引っ張ってファールもあるのですが割合的には少ないのです。

 

 球数を減らすひとつの道具に「インコース」があります。では、どうしたらインコースに投げ込める投手になるのでしょうか。アウトコースに140キロを投げられる投手でも、インコースになると132キロしか出ない投手もいます。右打者のアウトコースは140キロ、左打者のインコースは132キロ・・投手から見ればホームベースの左端を狙っています。打者が近いか遠いだけの違いですが、球速は大きく変わる投手が多いのです。

 

 デッドボールを与えたくない

 甘いと一発食らう

 投球する前に様々なマイナスのことを投手は考えます。それによって十分な「ため」ができなかったり、体重移動のときに頭が突っ込んだり、グラブ側の肩が開いて腕が身体の中心から離れてリリースの力が弱まったりします。

 

 インコースに投げ込むためには、メンタル的に「冷静&闘志」の2つの思考が必要です。心と身体がセットになって不安感情を消して投げないと技術的なポイントが分かっていても体現できません。

 

 相手打者の情報も同時に必要で、それらを頭に入れつつ攻める意識で投げ切れるかです。「どうしたら」を追求していくと、やるべきことが明確になっていきます。

[page_break:「考える野球」を自分で追及する]

「考える野球」を自分で追及する

高校時代の大谷翔平選手(写真はイメージ)

 

 連投する・・というテーマから、準備の仕方、配球の工夫、インコース、投げ方について新しい課題が浮上してきました。コントロールは技術的なことだけではなく、様々な要素が絡み合っています。リリースの安定を考えると投球動作の体重移動でのリズムが重要です。小手先で何とかコントロールしようと思っても、それだけでは安定性のあるコントロールは得られません。

 

 「どうすれば」「どうしたら」

 

 繰り返して深堀していくことで「必要なこと」がはっきりして、今からするべき練習に行き着きはずです。理想を掲げても、実際にそれが本番でできるかどうかが重要です。

 

 今回のコラムは、投手の「連投」というテーマで細分化していきましたが、打撃、走塁、守備などの分野でも同じように逆算して考えると良いでしょう。

 

 2018年、がむしゃらに野球をするのも良いですが、私が唱える「考える野球」を自分なりに追求していくのも良いでしょう。どんな選手になって勝負をかけるのか、このコラムを読んで目覚める選手がひとりでも多く出てくると嬉しいですね。

 

(文=遠藤 友彦


注目記事
2017年秋季大会 特設ページ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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