Column

スタートに失敗した選手の逆転方法

2016.09.29

遠藤友彦の人間力!

 秋大会がスタートして全国で熱戦が繰り広げられています。「もう敗戦してしまった」というチームも多いことでしょう。新チームをスタートして今までの時間を少し振り返ってみましょう。

控え選手のときから「自分事」でいることが大事

いつでも「自分事」でいよう(写真はイメージ)

 私も新チーム指導を全国で数チームしましたが様々な課題が見えてきます。新チームとはいえ、夏までにやってきたことは踏襲して行っているチームがほとんどです。新しいことを・・というよりも今までやってきたことを今度は主人公として行うという感じです。

「えっ、まったく理解していない・・」

 各ジャンルの方向性を選手に聞くと、返答が曖昧で「何だっけ・・」ということもあります。控え選手のときに他人事のようにしていたのがやり取りで分かります。新チームになって練習を重ねても理解していないのでうまくいきません。指導者が大事にしていることも心の留めていないので指導者の目にもとまりません。

 新チームは厳しい競争があります。本来であれば上級生のいた夏までに用意周到な準備を重ね、スタートしたときに一氣に勝負をかけます。新チームスタートで「よーいドン」ではなくスタート時にかなり先を走っているような競争がベストです。準備を怠って、頭の整理もできていない選手は結果も出ないので、焦って益々マイナスの渦の中に埋もれていきます。

 頑張っているのに・・

 頑張っているのは評価の対象外です。すべての選手がそれなりに頑張っているので「頑張ることは普通」なのです。この文章を読んでいる選手で頭を抱えている人も多いのではないでしょうか。新チームスタートで良いイメージを植え付けられなかったという選手は、これからのチーム内競争でも当然厳しい流れになります。

 夏大会で主力だった選手が今秋活躍するのか・・経験があるので活躍すると思いきや「あれれ」という選手も多くいます。周囲からも「あのチームは二年生が●名残っているので強うそうだ」という噂をします。しかし、蓋を開けると全然機能しないことも多々あるのです。

 夏に活躍した選手は油断します。上級生がいたときには「上級生に迷惑をかけられない」と必死の感覚だったのに、自分たちが上級生になれば「やらなければ」と力が入ります。挑戦者的な意識ではなく、王者の感覚でプレーします。失敗すれば周囲から期待されているのもプレッシャーになり思うように身体が動きません。

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[page_break:これからの競争で追い抜かしていくためには]

これからの競争で追い抜かしていくためには

チームを理解し、積極的に発言!(写真はイメージ)

 もともと大したことないのに格好つけたプレーをしようとしてミスを連発・・こんな選手は全国にたくさんいるのです。甲子園に出場した選手が残っているとか、主力が何人もいるとかは強さのバロメーターにはならないのです。

 では、どのようにしてスタートロスした選手がこれからの競争で差を縮めて追い抜かしていくのかを考えていきましょう。

<1.チームの方向性を理解する>

 六分野(打撃、走塁、守備、バッテリー、当たり前の実践、ベンチワーク)についてチームが大切にしていることは何なのかを把握します。打撃であれば打ち方(形)や打席内で考えること(狙い球選定の目安)を頭に入れます。技術的なことからメンタル的なことまで理解します。何となくの理解でプレーしても体現できません。頭で理解しながら動いていけばプラスの結果も出てきて「なるほどこういうことか」と深めていけます。

・方向性を知る(把握)
・どうすればそれができるようになるか練習方法を考える(突き詰める研究)
・方向性を常に意識しながらプレーする(意識+動き)

<2.何が足りないかを知る>

 ライバルが持っているもの、自分が持っていないものを冷静に知ることは大事です。なぜあの選手が主力になっているのかを知ってから「どうすれば」を考えるのも良いでしょう。ライバルの持っていないもの(弱点)を知って、徹底的にそれを自分の強みにして違う戦いをするのも追い抜く方法のひとつです。ようは、現状把握をして未来をどうするのかを熟考します。闇雲に練習しても時間の浪費です。競争に勝つためにはより戦略的に冷静に考えなければいけません。

・ライバルが持っていないものを持つ
・ライバルが持っているものを自分も磨く

<3.積極的に動く>

 スタートの競争に負けた瞬間に消極的になります。逆にいえば消極的だったから今の立ち位置なのです。スタートで主軸扱いされている選手に後れを取り、ミーティングでの発言も他人事のように振る舞います。ミスを重ねているので失敗したくないという意識が強く、発言する機会があっても「こんなことを言って大丈夫かな」と正解を氣にして一歩前に出られません。

・発言の機会があれば正解・不正解を考えることなく積極的に発言する
・誰もが嫌がることを積極的に自分から引き受ける
・授業が終われば一番先にグラウンドへ向かい準備を率先する

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[page_break:背水の陣で前進を]

背水の陣で前進を

巻き返しは死に物狂いで!(写真はイメージ)

 大きく差をつけられたスタート、かなりまずい状況なのは間違いありません。秋から冬を過ごし、春が来て夏勝負となりますが、あっという間に二年生の最後の夏は訪れます。

 致命的なスタートの失敗をしたのですから、これからは死に物狂いで反転攻勢をかけるべきです。消極的な選手は「ちょっと前に出られない」なんて言っている場合ではありません。背水の陣で前進するしかないのです。

 何となくプレーしていた選手は頭の整理をして、泥臭く粘り強くプレーしていきます。頭を使いながら大胆に動くことです。もう失うものはないのですから「ダメ元」でミスを恐れずに挑戦者意識で動くだけです。

 このコラムを見ている中学生、もしくは高校一年生は来年の新チームスタートをしっかりと切ってください。今から他人事のように振る舞っていると同じようなミスをすることになります。今はうまくプレーすることはできなくても(できてなく当然です)、チームが向かっている方向性を頭で理解しておくことです。そして積極性は常に心がけ、自分の今の状態とライバルとを意識して何かに取り組みます。ボワッと時間を重ねるよりも戦略的に動いていきます。

 どうですか?

 私の考える野球は、単純な能力野球で挑むのではありません。考えながら自分有利に物事を引き寄せて戦うことです。相手チームと戦う前に、自分のチーム内競争に勝って背番号をもらわなければいけません。黙っていて背番号を貰えるならばこんな楽なことはありませんが、人数が多ければ競争は常にあることです。

 野球という競技で「競争に勝てる自分」に近づいて欲しいと思います。大人になれば様々で困難な競争があります。競争に勝てるマインド(考え方)と準備(行動)を野球を通してできるようになることは、これからの人生において素晴らしい経験になることでしょう。

 この文章を読んで猛反省した選手は、すぐに1、2、3を行ってください!!

(文=遠藤 友彦


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【9月特集】「試合の振り返り方」

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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