Column

相手観察で冷静になる

2016.06.26

遠藤友彦の人間力!

 いよいよ夏大会がスタートします。沖縄から予選がスタートして熱い戦いが始まります。三年生は最後の夏ですが、現時点ではチームとしても様々な状態だと思います。春大会に調子が良くて、今イマイチな選手も多いはず。どんな理由で調子を落とすのかをまとめてみました。

今調子を落としている選手の理由

夏の連戦に耐えられるように、「食事」を大切にしよう(写真はイメージ)

(1)肉体的に疲労が蓄積されて思うように身体が動かない
(2)極度の結果思考で意識することが抜け落ちてプレーしている

 原因(理由)に対して明確なアプローチをしなければ調子は上がってきません。疲労がたまっているのに、調子を崩しているからとたくさん練習をすれば益々動きは悪くなります。原因が疲労であれば、しっかりと食べることと寝ることが大切になります。

 最後の最後に失速する選手は、不安先行でとにかく直前で練習をする傾向があります。やればやるほど不安になって、マイナスのトンネルに入り込みます。直前になって焦っても良いことはありません。コンディショニングを優先して、練習量を抑えながら休息を意識します。暑さ対策は「食事」でカバーできるので、夏予選の連戦に耐えられるように食べることを大切にする時期です。

 最後だと思えば結果を出したいと誰でも思うことでしょう。それによって自分自身にプレッシャーをかけて自分を動けなくします。プレーのときに冷静に考えていたことが抜け落ちて余裕がなくなります。

 夏大会に結果を残すために一番重要なのは「余裕」です。余裕があれば自分有利に進められますが、結果を考えすぎれば必ず何かが抜け落ちます。応援してくれるのは嬉しいですが、本番で全校応援だと球場は異様な空気になります。

「格好いいところ見せよう」

 これは結果思考です。冷静さも失います。スタンドをチラチラ見ながら調子に乗ってプレーしようと思えば、大抵はダメな結果に終わります。状況が変わっても「いつもの自分」を保つ努力をするべきです。

 見て良いのはスタンドではなく「相手(敵)」です。冷静にプレーしようと思っても、自分のことを考えすぎれば相手が見えてきません。自分中心に考えるとどうしても結果がチラつきます。私が指導している選手には、【徹底的に相手を観察する】と伝えています。

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[page_break:相手を観察すると見えてくること]

相手を観察すると見えてくること

相手投手について話し合う金子銀佑選手と清宮幸太郎選手(写真はイメージ)

 相手を良く見ていると、敵が焦っているのか落ち着いているのかが見えてきます。相手も最後の夏なので、プレッシャーはかかっています。ピンチであれば心が揺れているし、チャンスであれば「何とか決めたい」と平常心ではありません。相手の動作・表情を観察すると「たぶん、こんな感じかな」と思っていることが予想できます。

 相手の心が何となく読めれば、自分の心はなぜか落ち着きます。強制的に冷静になろうと思っても冷静になれませんが、相手観察をして「こうかな」と思えば自然と冷静になるので不思議です。

 相手はこうするだろうと思えば、「じゃ、これを意識しよう」と自分の方向性も決まります。方向性が決まれば一点集中で意識を傾けます。周囲が全校応援だろうと、状況が不利有利であろうと関係ありません。こういった意識の傾け方を知っているのと知らないのとでは大きく夏の動きは変わります。

 プレーしているときに何を考えるのか・・はダイレクトに成功の確率にかかわってくるのです。

 単純に練習を積み重ねても本番での成果は出せません。試合の中でいかに冷静になれるのかがポイントで、そのためには相手観察は重要です。今から本番までの時間を、「相手をみる」ということをテーマに行うと良いでしょう。

 何が不安かも分からないけどソワソワするという選手もいます。どっしりと腰を据えて練習をしていなく、小手先で右往左往しているパターンです。練習でも周囲を見渡して、自分中心ではなく冷静に動くことです。

 ふわふわ感をなくすためにも、当たり前の実践にも意識を向けましょう。本番が近ければ足元のことが疎かになり、自分の部屋が乱れている選手も多くいます。心がざわついているときには、整理整頓を見直すことです。きっちり整えることで落ち着きを取り戻し、リズムが良くなってきます。

 今までうまくいっていなくても、最後の夏、一発勝負で結果を残せばいいのです。昨年の秋、今年の春ダメだったから夏もダメとは限りません。オセロで黒が連発していても最後に白に塗りかえれば大成功です。

 今なぜ調子を落としているのか・・冷静に自分の状態を感じながら原因に対してアプローチして欲しいと思います。原因が分からない選手は、今までの私のコラムを読み直すもの良いでしょう。「あ、これが抜けている」ということに気がつくはずです。

 最後の夏、今までの積み重ねを本番で発揮してほしいと思います!

(文=遠藤 友彦


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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