野球ノートに書いた甲子園4 高校野球ドットコム編集部 KKベストセラーズ
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書評
高校野球の選手たちが「野球ノート」を通して成長する姿を取材した書籍「野球ノートに書いた甲子園」はついに4作目を迎え、累計販売数は15万部を突破するという人気シリーズとなりました。今回は日大鶴ヶ丘高校、いなべ総合高校、高松商業高校、東海大甲府高校、そして仙台育英高校の5校が登場します。書くことで考える力を養い、指導者やチームメイトとの対面でのコミュニケーションを補い、さらには過去の自分の足跡をたどることができるというこの野球ノートは、それこそノートと鉛筆さえあれば誰でも取り組めるものであり、その身近さが人気シリーズへと成長した一因ではないかと思います。
高松商業高校では2014年に監督となった長尾 健司さんが野球ノートへの取り組みを提案し始めたといいます。「僕が高松商の監督に就任した当初、選手たちは『はいはい』しか言わない。監督交代で三年生には不満もあっただろうし、二年生が何を考えているかも分りたい。そう思って『なんでもいいから書け』と言って始めたんです」(P81より引用)。
今までのやり方をガラリと変えると当然反発も起こります。最初はその不満がノートにあふれることもあったといいますが、書かれた内容に目を向け、それを受け止めて返信を書き続ける長尾監督とのコミュニケーションは、次第に選手たちを「自ら考え、行動する選手」へと成長させていきました。そして自分のことだけではなくチームとしてどうあるべきかを考えられるようになることが、チームスポーツとしてはとても大切なこと。こうした選手たちの心の成長は野球ノートを通じて培われたものであると改めて思いました。
また甲子園常連校としても知られる仙台育英高校では「真っ白なノート」に思いついたことや、気づいたことを書くというスタイルを取っています。何も決められていない、どのような形式にもとらわれない、自分だけの野球ノートにただ書くということを続けていく。監督の佐々木 順一朗さんの言葉を借りると「自由に書かせることで、ノートに個性が浮き出てくる」(P154より引用)。
部員数が多いからこそこの野球ノートを活用し、コミュニケーションのみならず選手一人一人の思いや行動、性格に至るまで把握しやすくなったといいます。そして真っ白なノートに綴られる選手たちのノートはとても個性的です。文字だけではなく実際のノートをいくつか写真で見ることができるので、そのオリジナリティあふれる内容にも感心してしまいます。
野球ノートへの取り組み方はチームによって千差万別です。ルールがあったり、フォーマットがあったりするところもあれば、義務的な要素を一切とりのぞいて自由に書かせるところもあります。その中でも共通していえることは「続けていく・習慣化する」ということではないでしょうか。イチロー選手は「小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただひとつの道」という言葉を残していますが、野球ノートを書き続けるという一つの習慣を積み重ねていくことが、とんでもないところへ行く切符になるのであれば、ぜひ実践してみたいですよね。
(書評:西村 典子)