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第96回全国高等学校野球選手権沖縄大会 展望

2014.06.16

 6月10日、第96回全国高等学校野球選手権沖縄大会の抽選会が行われ、参加61校がそれぞれの山に振り分けられた。最大の注目は、全国選抜高校野球大会ベスト8、秋春の九州地区高校野球大会連覇沖縄尚学だろう。追いかけるのはもちろん糸満美里工宜野座のシード勢。だがそれ以外にも、浦添商興南コザといった名門校らが虎視眈々と上位を狙う。たったひとつだけの切符をめぐる沖縄夏の陣。それぞれのブロックごとに目を置いて、今夏の展望を探ってみた。

Aブロック 東の横綱・沖縄尚学ブロックの展望

荻堂重晃(興南)

 冒頭でも述べた東の横綱・沖縄尚学ブロック。その最初の挑戦者が八重山沖縄水産の勝者だ。両校ともに春は2回戦敗退だが、それぞれに浮上するキーマンがいる。まずは八重山内原 令雄(2年生)。秋季県大会嘉手納戦で1番に座り4安打をマークすると、春季県大会ではチームのヒット数5本のうち、実に4本を内原一人で稼ぎ出している。沖縄水産では、秋季県大会読谷(2013年09月14日)で2安打を放った長田 佳祐(3年生)と3安打の大田 徳斗(3年生)が、春季県大会真和志戦でも共にヒットをマークした。

 対して反対側のA-2ブロックには注目校が集まった。ともに春季県大会で2回戦とはいえ、実力派同士の興南前原がいきなり激突。春、エースの荻堂 重晃(3年)をはじめ主力の故障者が4名ほどいた興南だが、その彼らが復調し充実感にあふれる。打撃陣も出塁率の高い崎濱 夏紀岩越 貴大(ともに3年)に、180cmを越す大型の島袋 志文(3年)、喜納 朝規(2年)といったパワフルな中軸打者が相手の驚異となるだろう。対する前原春季県大会、2試合で合計29安打15打点と打線がウリだ。

 秋3位八重山商工連続ベスト8の嘉手納も星を潰し合うという、何とも贅沢なカードが続く。それに春季県大会で4対3と接戦を演じた具志川浦添が、何の縁か最後の夏でも再び対戦が決まったのだ。

 さらに『高専の怪物くん』こと新城 翔太(3年生)率いる沖縄高専も侮れない存在だ。このA-2では、全体的にやや興南が一歩リードしている感じだが、全く読めないカードの連続でもある。だからこそ、このひしめき合う中を勝ち上がることで勢いをつけたチームが、このブロックで勝ち上がる可能性は十分あると言えるだろう。

 

第96回全国高等学校野球選手権記念大会 特設ページ
[page_break:Bブロック 第4シード・宜野座ブロックの展望]

Bブロック 第4シード・宜野座ブロックの展望

島袋 洋平(小禄)

 第4シードの宜野座ブロック。初戦で対戦する那覇商のキーマンは桃原 雅史中島 樹一郎(ともに3年)。の4試合で桃原の打率が.412(17打数7安打)、中島が.600(15打数9安打)をマーク。この二人の巧打者に、小禄島袋 洋平から本塁打を記録した4番宮里 貴明(3年生)らが噛み合えば面白い展開となるだろう。逆に宜野座サイドから見れば知念 諄也伊保 拓海(ともに3年)ら投手陣は、いかに桃原と中島の二人を波に乗せず、自分たちのペースに持ち込めるかがカギだ。

 さらにこのB-1ブロックには、商業大会で好投した幸地 勇河、と外間 康太(ともに3年)の長身右腕が揃う名護商工。さらに、普天間打線を8回までに僅か1安打に抑えた豪腕長尾亮緒と、バットコントロールが光る池田凛(ともに3年)をはじめとして身体能力の高い選手が揃う沖縄宮古。また、16強の豊見城も、前原戦で粘投した宮里 昂大(3年)がいる。ここに春季県大会ベスト4の立役者である浜川 優馬(2年生)の古豪沖縄石川が入った。

 B-2ブロックも全く先が読めない。一年生中央大会から主戦として投げ続けている島袋 洋平(3年生)の小禄と、北中城戦で途中登板ながら打者25人を相手に僅か2安打6三振を奪った長身の好投手・野原 陽介(2年生)を擁する宜野湾との戦いは投手戦が見込まれる。

 一年生中央大会準優勝投手で、春季県大会では強打の中部商打線を相手に9回1失点に抑えた首里中真 慶大(2年)には、この最後の夏に懸ける美里が立ちはだかる。

 そして最大の注目はやはり読谷だろう。秋季県大会では優勝候補の糸満を相手に4投手の継投で僅か2点に抑えて延長11回勝利。さらに春季県大会では興南戦で予想外の山城 航(2年生)を先発させて散発4安打に抑えて1対0で勝利を収めた。この最後の夏、ダークホースとなるが、読谷なのかも知れない。

 

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[page_break:Cブロック 春季県大会優勝・糸満ブロックの展望]

Cブロック 春季県大会優勝・糸満ブロックの展望

神谷 岬(西原)

 春季県大会優勝糸満ブロック。その糸満に挑むのは次の両チーム。神谷 岬(秋春20打数9安打5打点)、仲西 春風(同19打数6安打5打点)、壽 雄大(20打数6安打3打点)の三銃士(ともに3年)を中心とする西原に対し、美来工科の沖縄宮古戦で8回5安打4奪三振無失点と快投した屋宜 裕(2年)の左腕に懸ける。

 反対側のC-2ブロックにも強豪校が並んだ。秋16強春8強と昇龍のごとく勢いをつけてきた陽明は、春36イニングを投げて防御率0.75の大黒柱具志堅 光(3年)が健在。対する春16強北中城も、友寄 賀達喜友名 朝樹(ともに3年)ら好打者が揃う。秋8強知念は1年生ながら3試合(20回1/3イニング)を投げて防御率1.33を記録した銘苅 瑞輝(2年生)がどれだけ成長したかが楽しみ。

中部商北山はこのブロック一番の好カード。 仲本 翔伍喜友名 大地具志堅 辰吾(ともに3年)、前田 敬太(2年)ら投手陣の力を、主将でもあり攻守ともに軸となる捕手の新垣 宏太郎(3年)がどれだけ引き出せるか。対する北山のキーマンはマックス ウェル ジェリー(3年生)。春は故障もあって実力を発揮出来なかった未完の大器が、平良 拳太郎(巨人)らが昨年涙を飲んだ夏の大会で大暴れする姿を待ち望みたい。

 

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[page_break:Dブロック 秋季県大会優勝、秋季九州大会準優勝・美里工ブロックの展望]

Dブロック 秋季県大会優勝、秋季九州大会準優勝・美里工ブロックの展望

宮里 季築(コザ)

 秋季県大会優勝秋季九州大会準優勝美里工ブロック。伊波友和長嶺飛翔島袋倫といった投手陣に、松堂正神田大輝宮城諒大花城航ら豪華な打撃陣と、タレント揃いの美里工に待ったをかけそうなのがコザだ。具志川商戦で2失点完投した宮里 季築(3年)と貴重なサウスポー勢理客 雄大(2年)が試合の序盤に登板し試合を作る。彼らが6、7回を抑えればあとは140kmを超える剛球が魅力の内間 敦也(2年)が相手打線を分断。9回2/3イニングで自責点ゼロ、10三振を奪う一方で無四球と制球力にも優れる内間が、この夏は逆に先発に回るかもしれないと考えると相手にとっても脅威だろう。

 D-2ブロックでも凌ぎを削る戦いが見られそう。普天間では、184cmの長身右腕與那覇 大剛(2年生)に注目。秋8強浦添商商業野球大会で優勝し波に乗る。秋季県大会30回1/3イニングを投げたエース砂川 優士(3年)は、2試合連続完封勝利も収めており、また「四球一つあたり何個の三振を奪ったか」の数値である「K/BB率」でも4.80と制球力と奪三振率にも優れる頼れる右腕。ここに1年生中央大会優勝の原動力である天久 太翔宮城 清主(ともに2年生)らが控える。打撃陣では秋19打数11安打で打率.579の長田 涼太(3年生)が1番に座り、最初から相手を威圧してくる。

 その巨大な戦力に立ち向かうのは沖縄工仲里健吾(3年)。途中休部するなど紆余曲折を経たが、好きな野球にもう一度立ち返ったサウスポーは、春の大会で第一シードの八重山商工戦で完封するなど、3試合(22回1/3イニング)を投げて17奪三振、防御率0.40と圧倒的な存在感を示した。陽明戦で5エラーを喫して仲里の足を引っ張る形となってしまった野手陣が、我慢と粘りの八重山商工戦のような無失策を続けられるとしたら、浦添商をも飲み込むことは十分可能だ。具志川商真和志戦は、春季県大会浦添商コザをそれぞれ2失点に抑えるなど防御率1.89と活躍した平川雄斗(3年)と、秋季県大会沖縄尚学打線を2失点に抑えた山入端立郎(3年)の両エースの投げ合いに注目だ。

 

■2014年 第96回沖縄大会組み合わせ表(沖縄県高野連HP)

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(文=當山 雅通

 

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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