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投球動作習得ツール『ベタースピン』『アイピッチ』開発秘話

2011.07.26

投球動作習得ツール『ベタースピン』『アイピッチ』開発秘話2011年07月23日

 今回、野球専門トレーニングコーチの前田健氏(BCSベースボールパフォーマンス代表)とミズノとの共同開発で、“正しい投球動作習得”の目的に特化した『ベタースピン』と『アイ・ピッチ』を製作し、今年6月20日から発売しています。
 開発するまでに約3年かけたというトレーニング器具ですが、まずは正しい投球動作とはどのような体の使い方をするのか。そして、ベタースピンとアイピッチをどのように練習に取り入れることで、球威や球速アップにつなげることができるのか。その方法と開発秘話を前田健氏に伺いました。

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『ベタースピン』、『アイピッチ』とは?

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■『ベタースピン』編 

指先の力と、球速は比例する?!指のかかりを習得するベタースピンベタースピンの使い方とは?

■『アイピッチ』編

効果的なステップ動作実現のポイントは軸脚を傾けること?!アイピッチの使い方とは?

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指先の力と、球速は比例する?!

前田健氏(BCSベースボールパフォーマンス代表)

 効果的な投球動作では、腕は体幹の回転によって振られ、そこには遠心力が働いています。遠心力は外向きに飛び出そうとする力ですから、リリースでは遠心力に対する指先の抑えが大切になります。その両方の力が十分に働いたとき、ボールにスピンがかかります。

 ストレートとスライダーとで10キロくらいの球速差があるのは普通のことですが、誰もが知るように、この両者の身体の使い方、腕の振りは基本的に同じであり、違うのはリリースでの指先のボールの切り方だけです。

 つまり、同じストレートでも、リリースでの指先のかかりの善し悪しの差で、10キロくらい球速に違いが生まれる可能性があることになります。10キロは極端でも、指のかかりが常にいい状態で投げられるようになることで、コンスタントに5キロ以上の球速アップが望める選手はたくさんいるでしょう。

 実際、指先の力が出やすくなるような刺激をトレーニング的に与えた選手が、すぐその場で見た目にスピードが上がり、直後の試合で、それまで125キロが最高だった球速が131キロにまで伸びたこともありました。本人は「指が球にかかるって、こんな感じなんだ!」と、そこで初めて“指にかかる”という感触を体感し、覚えてしまったんですね。

 いいボールを投げるには、当然、リリース以前の身体の使い方が大事ですが、最終的な “かかる”、“かからない”という部分だけでも、球威、球速にかなりの差が生まれているんです。だから、そこをしっかりやらなくては、もったいないなと感じますね。


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■ベタースピン編

指先の力と、球速は比例する?!指のかかりを習得するベタースピンベタースピンの使い方とは?

■アイピッチ編
効果的なステップ動作実現のポイントは軸脚を傾けること?!アイピッチの使い方とは?

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指のかかりを習得するベタースピン

ベタースピン(MIZUNO)

 私が社会人野球、プロ野球でトレーニングコーチを務めていたときには、投手の指のかかりをよくするために、登板直前や登板中のイニング合間にタオルなどで抵抗をかけて成果を上げてきました。

 しかし、それは2人1組で行うものであったため、専用の器具さえ作れれば、選手1人でも 指のかかりをその場で高められるようになり、スピンの効いたボールが常に投げられるようになるはずだとずっと考えていました。そこで、ミズノさんと開発したのが「ベタースピン」です。

 一番にこだわったポイントが、このバネです。

 ちょうどバネに指がかかる角度が、実際にボールが指にかかる感じに近い角度を何度も探っていきました。

この“指のかかり”というのは、遠心力に対して指の力を抑えこむ状態になるので、リリース時と同じ“指がかかる方向”を探し出すのが難しかった。また、大人と子供では筋力が違うので、万人に共通して、「強く引けば強くかかる」、「弱く引けば抵抗が軽くなる」という丁度良いポイントを探すのも大変でした。

 そのため、試作品を何度も作り直していただいて、ベタースピンが完成するまでに実は3年以上かかっているんです。


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■ベタースピン編

指先の力と、球速は比例する?!指のかかりを習得するベタースピンベタースピンの使い方とは?

■アイピッチ編
効果的なステップ動作実現のポイントは軸脚を傾けること?!アイピッチの使い方とは?

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ベタースピンの使い方とは?

“指にかかっている”という感触を指先に残す

 “指にかかっている”という感触を指先に残すために、1度にそれなりの反復回数が必要ですが、やり過ぎて疲労感が残るようではダメです。

 そこには個人差があるので、目安として20~50回としていますが、私が自分で使うとしたら40~50回やりますね。その程度なら、私にとっては疲労感は無く、ちょうどいい感触が指先に残るくらいです。

 それを、登板前か、試合中の少し指のかかりが悪くなってきたようなときのイニングの合間に行って、指のかかりをいい状態に整えて試合に臨む、あるいは、指のかかりを復活さるというように使うわけですが、その即効性が「ベタースピン」の最大の特徴です。まずは慣れて、自分のちょうどいい回数を掴むことですね。

 また、「ベタースピン」を継続的に使えば、投球専門の指の筋力トレーニング器具としての効果も当然得られます。この場合は単純に追い込めばいいだけです。


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■ベタースピン編

指先の力と、球速は比例する?!指のかかりを習得するベタースピンベタースピンの使い方とは?

■アイピッチ編
効果的なステップ動作実現のポイントは軸脚を傾けること?!アイピッチの使い方とは?

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効果的なステップ動作実現のポイントは軸脚を傾けること?!

アイピッチ(MIZUNO)

 遠投をするとき、後ろから助走をつけて投げれば誰でもより遠くに投げることができますね。これは、着地以降の、実際に「投げる」ということをする前に、重心を投げる方向に勢いよく進めて、そこで生まれるエネルギーを大きくすれば、誰でもより速い球が投げられるということです。この「重心を勢いよく投げる方向へ進める」ということが、下半身の大切な仕事のひとつであり、ステップを行うことの一番の意味です。

 この勢いのある重心移動を実現するためのポイントになるのが「軸脚を投球方向へ傾ける」ということです。よく、「脚を真っ直ぐ上げてバランスをとる」と言われますが、これは「グラグラしちゃダメ」程度の話であって、真っ直ぐ立って安定すること自体には、効果的なステップ動作を実現する意味はありません。片脚で立ったところから、効果的なステップ動作にどう移っていくのかという“降り方”が大切なのです。

片脚で真っ直ぐ立ってその場で重心を沈めても、そこには何も生まれません。片脚で立った流れで軸脚をわずかに投球方向へ傾けていき、そこからさらに軸脚の傾きを強めながら重心を沈めると、軸脚は全身を投球方向に押し出すように勝手に働き、勢いのあるステップが実現します。
また、このように軸脚を使うと、踏み出し脚は腰の移動に遅れて引き出されるように、後から前に運ばれます。効果的なステップでは軸脚が腰(重心)を進めることが先行し、踏み出し脚は後から前に進む、だから「お尻から出て行く」と言われるのです。

 このような観点で指導をしていると、真っ直ぐ立ってさらに軸脚に体重を残そうという正反対のことを繰り返し練習してきた選手が実に多い。こうした間違った身体の使い方が染み付いた選手の動きを簡単に改善するために、これまでは勝手に軸脚が傾くような台を踏ませて指導をしてきましたが、その球速への即効性とあまりの使用頻度から、野球界全体に向けて、ミズノさんと最適な角度や形状を割り出して「アイピッチ」を開発しました。


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■ベタースピン編

指先の力と、球速は比例する?!指のかかりを習得するベタースピンベタースピンの使い方とは?

■アイピッチ編
効果的なステップ動作実現のポイントは軸脚を傾けること?!アイピッチの使い方とは?

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アイピッチの使い方とは?

「勢いよく進むこと」と「開かずに進むこと」の両方を習得

 「アイピッチ」には投球方向へ倒れる傾斜がついています。簡単に言えば、これに軸脚を乗せて片脚を上げて立てば、軸脚は勝手に投球方向へ傾くので、それで実際に投球練習やシャドウピッチングを行って、効果的なステップ動作への移行に必要な軸脚を傾ける感覚を養っていくわけです。

 この際、軸脚を傾けて、バランスが不安定なようでも、その状態は軸脚がしっかりとコントロールしている必要があるので、そのためのちょうどいい傾斜角と形状、素材の反発力を割り出すのが大変でした。

 そして、効果的な使い方はもうひとつ。「アイピッチ」の傾斜部分は中央からつま先側とかかと側に下がったアーチ型になっていますが、踏む場所を中央からかかと側にずらすことで、足は少しつま先側が上がった形になります。

この状態で軸脚を曲げて重心を沈めると、軸脚の膝がつま先方向に出ていくのが抑えられ、勝手に股関節中心の動作が起こります。重心を沈める際に、膝がつま先の方向に出る動きが強いとステップの際に身体が開き、股関節中心に動ければ開かずに進んでいけるんです。つまり、「アイピッチ」は、効果的なステップ動作に求められる、「勢いよく進むこと」と「開かずに進むこと」の両方の身体の使い方の習得ができる練習器具なんです。

 「アイピッチ」と「ベタースピン」の両方に言えることですが、上達の第一歩は、今までに経験したことのない効果的な動きをまず1回体験することから始まり、そこから何度でも繰り返しできるようにまで身体が感覚を覚えていくわけです。自転車の補助輪と同じで、最初は簡単に体験できる器具を使って新たな感覚を知ることが上達の近道なんです。

BCSベースボールパフォーマンス公式HP

http://www.bcs-bp.com

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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