Column

ラントレについて

2011.10.29

保田貴史の「年間トレーニング計画」

ラントレについて2011年10月25日

種目特性

【冬場のトレーニングでは】

こんにちは。気温も下がり秋から冬に向けて走り出しているように感じる今日この頃ですが、一方では各地区大会が白熱しております。トレーニングの立場から高校球児を応援したいと思う私からの今回のテーマは、冬の走り込みです。

走り込みは、トレーニング同様色々なバリエーションがあり、目的・やり方・時期・方向性により選択していきます。
時には、野球の技術アップに間接的なサポートしてくれますが、一方で疲れなどからパフォーマンスを低下させてしまうこともあります。皆様のこれからの時期のプログラム作成に参考になればと考えます。

一般的に冬になると走り込みという練習が大半を攻めます。時には陸上部並みにマラソンしているチームもあるのではないでしょうか。それをどのように野球に結びつけたらいいのか。まずは、それぞれの種類を知ることからです。
野球は、短い距離が必要で長距離はいらないのではと考えがちですがそれぞれの必要性があります。

長距離は、有酸素運動疲労回復の効果があります。つまり血液を全身に行き渡らせ、酸素を取り込み、疲労物質を除去するから疲労が取れるのです。
このような作業を沢山行っていないと疲労を除去する機能がうまく働きません。シーズンに入ってからだけやっても効果が半減します。疲労が取れにくい、いわゆるスタミナがなくなるということは、練習の量が減って、それとともに技術向上が減るということにも結び付くのです。

中距離走は、非常につらい種目です。耐乳酸性機構が最も働くといわれるスタートして38から40秒で終わる種目を組むようにしています。これは人が全力疾走で走れる限界です。私はよくこの種目を活用させてもらいます。心肺機能や筋力だけでなく、心もトレーニングできる種目と考えています。
人は火事場の馬鹿力があるように限界には達していないところで動きを止めようとします。だから、あえてその限界までより近付けるこの種目は中学生や高校生に非常に重要かと考えます。限界を上げることで、自分を追い込める。つまり沢山ボールをとれる=技術がアップするというわけです。また想定練習にも利用することもあります。

短距離は、パワー・敏捷性・巧緻性を養成する種目と考えています。坂やアジリティートレーニング・10mや50mダッシュなど様々な種目があります。野球の実距離に近いといえるので、短距離の場合はスタートとmaxの話をよく話すようにしています。


特徴

このように距離で走る種目を分類するとこのようになります。

工夫次第で、心技体のあらゆるトレーニングすることができる走り込みは

心 しんどい状況を作り出し踏ん張る心

技 軸を確認することや力の出し方・身体の動かし方などをトレーニングできる

体 心肺機能を上げることができたり大きな出力に耐えうる身体作りができる

それぞれに特徴があり、それをどのような目的でどうしたいからという風に順序立てて選択し組み合わせていかないといけません。
ただ長距離ばかり、走ってもそのチームに適しているかはわかりません。

球速アップの要因

このようなフレーズを聞いたことはないでしょうか。
「冬場の走り込みのお陰で球速が上がった」

これから考えられることの一つに、効率よくパワーを出せるようになったということが言えると思います。
以前から少し話しているパワーを効率よく出すという動きが走ることによってできているからだと思います。
沢山の数や時間、距離をこなすと非常にしんどくなってきます。そこで人は、走り方に無駄な動きをなくすようになり、パワーのロスがなくなり軸の乱れや足の蹴り方で蛇行していた力の向きを走る方向に向けていきます。そのことによって、より力が伝わり速く走ることができ、さらに疲れにくく走れるようになり、もっと多く走ることができるようになるのです。

あくまで要因の一つですが、軸・重心・力の向きが整うから球速が上がるのではと考えます。

計画

そこでラントレーニングを計画する上で考えることは

●効率よくパワーを出せている動きができているか走りをみる

●それを学習するために短距離で反復する

●本数を増やしていき、その学習で本数が増えてもできているかみる

●距離や時間・種目を変えてもその学習ができているかみる

身体の動きができている状態を学習し、それを崩す状況を作り、それでもできるようにする。といった流れでトレーニングしています。


高校生のラントレで考えること

【高校生のラントレで考えることは】

高校生の場合、最大の目標である夏の大会にベストパフォーマンスを出すにはトレーニングも大事ですが、技術の未熟な選手に何カ月も打ったり捕ったりを減らしトレーニングにつぎ込むのは、沢山のボールを触り感覚や経験を積まないといけない時期にはどうかなと思います。

1年中ボールを使い投げ打つという動きをしていって、且つトレーニングをする方がいいと思います。最近では、沖縄でのこういった取り組みが紹介されていました。

感覚が研ぎ澄まされたプロの選手でさえ、長いことボールを触らないことを嫌うのは、感覚が狂うから。毎日、短い距離でもキャッチボールをするピッチャーがいるぐらいです。

だからまだその感覚がない高校生にはボールに沢山触れることが大切なことだと思います。

トレーニングと技術練習の割合を6:4くらいの割合で行えるようにすることがいいのではと思います。
私が高校生に指導する場合、トレーニングも沢山しますが、ボールを沢山使うということも考えながら工夫をしてトレーニングを計画しています。

技術練習とトレーニングの組み合わせを考え、こういったトレーニングの意味を頭に入れた状態で冬のトレーニングに取り組むと一つ違った形でよく監督が言う「目的意識・目標設定・取り組み方」の考えも変わってくるのではないでしょうか。
参考に計画を立ててみてください。

(文=保田 貴史

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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