Column

夏に向けてのコンディショニング「センスアップで、持っている力を引き出そう!」【Vol.2】

2017.08.11

「心と体のコンディショニング 心身一如」
 鹿児島県内を中心に、個人でスポーツトレーナーを営む高司譲さんの名詞にはこんなフレーズが銘打ってある。野球に限らず、スポーツ選手が持っている能力を最大限に発揮し、最高のパフォーマンスができるためには、心(メンタル)と体(フィジカル)、両面のコンディショニングが欠かせない。高司さんは、仏教用語でいう「心身一如」な状態をいかに作り上げるかをテーマにトレーナー活動を行っている。県内の野球部では公立高校を中心に10数チームを定期的に指導している。

 6月、夏の初戦を1週間前に控えた錦江湾で高司さんの指導があった。「夏の大会に向けてのコンディショニング」と題した講話は高司さんがこれまで20年近く高校野球の現場を見てきて、本番で力を発揮するために何をすればいいかをまとめたもので、あらゆる球児に参考になる話に思えた。以下、高司さんと錦江湾野球部の許可を得て、講話の内容を要約し、具体的なセンスアップトレーニングの方法をいくつか動画で紹介する。

 第2回では、グラウンドの外で気を付ける点(栄養補給や疲労回復のコントロール)、そして試合当日の行動プランについて解説します。

夏に向けてのコンディショニング「センスアップで、持っている力を引き出そう!」【Vol.1】から読む

体重コントロールと栄養補給について

スタミナ維持、疲労回復のために栄養補給に気を配ろう

 毎日必ず起床時と練習、試合後の体重をチェックしましょう。とにかく減らないことが重要です。体重の減少は動きのキレの悪さ、パワーやスタミナの低下に直結し、熱中症にもなりやすいです。

 暑い時期は食欲がわかないときもありますが、そうめんだけですませる食事をしないようにしましょう。とにかくよく食べること。食後に体重計に乗り、減っていたらその分また食べましょう。

 起床時にコップ1杯の水を飲む。寝ているときの発汗でドロドロになった血液をサラサラにする効果があります。

 朝食はきちんと食べましょう。食べることは水分補給にもつながります。ごはんかパン、味噌汁、汁物は必ずとりましょう。卵、納豆、牛乳、野菜、ヨーグルトやフルーツもとっておきます。試合の日には開始3時間前には必ずとる。そこでたくさん食べられなければおにぎりなどにして持ってきて、試合開始1時間ほど前に食べるといいです。

 水分は、授業中の合間もこまめにとるなど、一日中かけてとることを意識しましょう。アップの前にコップ1杯ほど飲む。がぶ飲みは吸収効率が悪くなり、お腹が重くなるので絶対にやってはいけません。試合中も同じでこまめにちびちび飲むようにしましょう。

 水分の中身は水やお茶、水、スポーツドリンクなどがいいでしょう。甘い飲料や炭酸飲料はのどが渇き、必要なエネルギーが不足しているので無意味です。

 

 スタミナ維持、疲労回復のためには栄養補給にも気を配りましょう。夏は特に暑さと最後の大会という緊張やストレスによる身体と心の消耗が大きいです。いろいろなエネルギーを消耗するので注意が必要です。

 回復、成長を促進するために、練習や試合直後から30分以内で食べるようにすることが大切です。その時間内に食事がとれない場合は、コンビニなどでおにぎりや豆腐、パンなどをとってから、帰宅してあらためて食事をとるようにしましょう。

 炎天下では汗とともにミネラル分を失いやすいため、その補給と疲労回復、活性酸素除去にきくビタミン、有機酸、発酵食品(納豆、キムチなど)を多くとることが望ましいです。

 試合前日は、炭水化物、野菜をしっかりとっておく。タンパク質は揚げ物以外の豚、魚、豆腐、納豆などでとる。当日の朝ご飯は試合の3時間前にしっかり食べておく。炭水化物中心に、足がつらないための塩分補給として味噌汁もとっておきます。

 試合中は、糖質や炭水化物などすぐにエネルギーになるものをとる。おにぎり、バナナ、ウィダーなどのゼリー類がおすすめです。100%のオレンジジュースなどクエン酸をとると疲労対策になります。

 試合後は、すぐにエネルギー回復になる糖質や炭水化物、疲労回復につながるクエン酸と身体を冷やすものをとるようにしましょう。食事は親に頼る部分が大きいです。その分感謝する気持ちを忘れないようにしましょう。

[page_break:入浴、睡眠、疲労回復のコントロール、エアコンなどについて]

入浴、睡眠、疲労回復のコントロール、エアコンなどについて

お風呂はシャワーだけですませずに

 お風呂はシャワーだけですませずに、ぬるめでいいのでお湯につかるようにしましょう。重力から身体を解放し、リラックスさせ、温めることで血流促進、疲労除去を早めます。数分お湯につかって、30秒から1分間シャワーで水を浴びるのを繰り返す交代浴も効果があります。温泉に行ってお湯と水風呂を利用するのもいいです。温泉の場合は、時間が長くならないように、上がった後はすぐに水分補給をしましょう。

 睡眠中は脳の働きにより、身体の回復や成長を促すホルモンが出ており、疲労回復、傷んだ組織や筋肉の修復が行われる大事な時間です。質の良い睡眠をいかにとるかを考えましょう。6-7時間半ぐらいが目安です。起床時間から逆算して生活のリズムを作りましょう。

 寝る前にはストレッチ、呼吸法を行い、リラックス、マイナスを吐き出し、プラスの感情を取り込むメンタルクリーニングをすると質の良い睡眠となるので毎日実行することを心掛けましょう。

 エアコンや扇風機を使用する場合は、設定温度を低すぎないように。26-8度ぐらいが目安です。寝るときは切るか、タイマーを設定しましょう。扇風機を使う場合は、風が直接身体に当たらないようにする。これも寝るときはタイマーを設定します。身体を必要以上に冷やさないように注意しましょう。

[page_break:試合当日の行動プラン]

試合当日の行動プラン

高司 譲さん

(1)始まる前にできること(練習前、試合前)
 起床時から学校へ行く前、球場へ行く前に必ずセンスアップを行う習慣をつける。起床時は身体が硬くなっていることが多いです。ほっておいてアップまで待つのではなく、早い時間から柔らかくしていく。

 例えば、起床時に背伸びをするなど、寝てできるストレッチをし、顔をマッサージしてから起きる。顔を洗う時に鏡で姿勢と表情をチェックし、側屈を気持ちよくしてから顔を洗う(腰痛を持っている人には特に有効です)。3-5分間、自分の課題のストレッチをしてから家を出る。歩く姿勢、自転車の姿勢、バスや電車に乗っているときの姿勢に注意する。学校の休み時間、昼休みなどを有効に使い、柔道場、体育館、トレーニングルームなどでストレッチや呼吸法をやる。アップ前に時間がある場合は無駄話をせず、始まるまで自分のセンスアップをするなどを習慣づけるようにしましょう。

 いつでもしなやかな状態を作る習慣ができ、アップにもスムーズに入れます。いつもいつでも準備する強烈に高い意識、通常の人間とは違うことをする意識が必要です。頂点を目指すならそれくらい当たり前にできるようになりましょう。

(2)始まってからできること
 ウオーミングアップは試合で能力を発揮するための大切な準備の場です。試合に向けてどんな状態を作るのかをイメージしながら、自分自身に集中する。チームワークを高めていく必要もあるので、声を出す時は元気よくエネルギーを出し、一体感を持ってひとつになる意識で取り組むことが大切です。

 アップの場所は集中しやすい場所を選びます。大会時はOB、学校関係者、保護者など周りで応援してくださる方々がたくさん応援に来ますが、アップ中はそれらの方々に接触しないところで行うのが重要です。周りの方々は良かれと思って話しかけてきますが、それに応じると集中力が乱れてしまいます。チーム一体となっている雰囲気を保って試合に入るためにも外部の集中阻害要因をなくすようにしましょう。

 暑さもあるので、ストレッチなどは日陰ですることも考えて場所を選ぶ。対戦相手が近くでアップしていても、そちらを見ないで自分たちのアップに集中しましょう。

 自分たちの試合が2試合目以降であれば、アップが終わって試合までに時間が空くことはよくあります。この時間は自分のセンスアップをする、ダッシュやフットワークをして動き続ける、バットを振る、ボールを投げる、集中を高める時間にする…何をするかはそれぞれで判断し、目的をしっかり持って取り組み、ただ待つだけの時間にならないようにしましょう。

 球場に入ってからは、相手のノックの時間、ノックが終わった後から試合開始までの時間には、立ち上がりに最高の入り、先手必勝ができるようにわくわくした気持ちを持ちながら、身体のコンディションを整えましょう。

 始まってからは次打者席の前からの準備、守備での準備のルーティーンワークを無意識にできるようにしながらプレーする。

 熱中症対策として、糖質や塩分も含めた水分補給をしっかりしましょう。アミノ酸の補給も動き続けたり、足がつらないための対策として有効です。ベンチに帰ってきたら氷で頭や首を冷やすクーリングをしましょう。

 5回後の整備時間は、どんな展開であっても、チーム全体で準備する意識を持ち、個人個人が後半へ向けて身体をしっかり動く状態を作りましょう。センスアップやペアで背中にのせて、背中や首、肩をリラックスさせます。

(3)終わってからできること
 すぐに次に向けての準備をする。片づけを済ませてすぐにダウンできる場所に移動するか、学校へ帰ってからクーリングダウンをする。全員が指示を待つまでもなく、すぐに行動する。勝った余韻に浸るのは弱者のやることであり、油断やスキを生むことにつながります。次があることに喜びを感じながら、すぐに次の試合へ気持ちを向けて取り組みましょう。

(文・写真:政 純一郎

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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