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第10回 宮城県高等学校野球連盟 リーダー研修会

2013.12.18

 10回目の開催となった宮城県高野連のリーダー研修会が14日、仙台工を会場に行われた。宮城県高野連に加盟している硬式、軟式野球部の主将が参加した。

仙台育英・上林誠知前主将のメッセージ

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仙台育英・上林誠知前主将

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 プログラムのはじめは、毎年恒例となった、夏の甲子園出場校の3年生キャプテンが後輩キャプテンたちに向けて体験を話す体験発表。今年は仙台育英上林誠知前主将(福岡ソフトバンクドラフト4位)がメッセージを送った。

 仙台育英は、前チームの甲子園出場に伴い、新チームのスタートは他校より遅れをとったため、不安の中でスタートしたことを話した。それでも、秋は無傷で勝ち進み、明治神宮大会優勝。「その時、監督さん(佐々木順一朗監督)からは『不安があったから日本一になれた』と言われました。不安があった中での戦いでがむしゃらにやったのが結果に結びついたと思います」と振り返った。選抜の優勝候補に挙げられるなど注目度は高かったが、「自分たちは勝つことが当たり前だと勘違いしてしまって、その後は、選抜はベスト8、夏(の甲子園)は2回戦敗退という結果で終わりました。勘違いによって結果は出なくなったと思います」とチームを分析。昨秋からこの夏までを振り返った後、キャプテンを経験して思った、または佐々木監督から指導を受けた、キャプテンとして大事な5つの要点を話した。

1) みんな違っていい
「去年の(仙台育英の小杉)キャプテンは声で引っ張るタイプだったが、自分はプレーで引っ張るタイプ。みんなも一人一人、違っていい」

2) 一人で抱え込まない
「みんなの意見をまとめて、助け合いながらやっていた。一人で悩まずに周りに助けてもらってチームを作ってほしい」

3) 行動で示す
「大事なのは、言動と行動が違ってはいけないということ。言葉でいいこと言っても、行動が違えば示しがつかない」

4) 言う時は言う
「人間なので、この人には言い難いとかあると思うが、相手を選んではいけない。言うべきことがある時は言う。今、ここにいる熊谷敬宥と仲はいいが、何回も怒ったことがある」

5) 群れを作らない
「特定の集団の輪の中に入らない。気の合うところで仲良くしたいという気持ちがあると思うが、自分はA班B班関係なくみんなと話すようにしていた」

 また、冬の時期の重要さを説き、チーム内でよく話し合って意思疎通をはかることの大切さを話した。
 東北学院榴ケ岡岩渕俊博主将の「キャプテンは試合でヒットを打ったり、いいプレーをしたりしてチームを引っ張っていくことが自分の中で理想なんですが、どうしても結果が出ない時や調子が悪い時にキャプテンとしてどうすればいいですか?」という質問には、「自分も調子が悪いことがよくありました。2年生まではベンチで悩んだりして先輩たちに迷惑をかけたんですが、キャプテンになってからはチームの勝利を第一に考えて、打てなくてもみんなに声をかけたり、冗談っぽく『今日も打てないから、みんな頑張れ』とか試合中に言ったりしていました」と具体例を交えて答えた。
 また、「自分が言ったことに対してチーム内で反発してくる人がいたらどうしたらいいですか?」、「野球の技術も大切だと思いますが、キャプテンとして私生活で大切にしていることを教えてください」、「冬場の練習で、メンバーは頑張れるんですが、(メンバー外の)2年生で腐ってしまう人がいて練習に支障をきたしてしまいます。そういう人たちをどうやってメンバーと同じモチベーションに上げていけばいいか教えてください」といった質問に丁寧に答えた。
 「選手とのつながりも大事だと思いますが、監督や顧問の先生と付き合う中で意見の食い違いがあった場合はどうすればいいですか」という難題にも「自分は監督さんを信頼していたので意見の食い違いはありませんでした。そのチームに入った以上、監督さんを信じるべき。それがその人の運命だと思うので、違いが出ても信じていくべきだと思いますが、もし野球ノートとかをやっていれば、意見を書いて先生がどう思っているかを聞いてみるのもいいのでは」と自分の考えを述べた。

 例年ならば、ここから講演に入るが、今年はもう一つの体験発表が行われた。高校日本代表として18Uワールドカップを戦った仙台育英熊谷敬宥選手が、日本代表としての経験を伝えた。

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18Uワールドカップの経験

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日本代表の経験を話す仙台育英・熊谷敬宥

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 「上林誠知の後で喋り難いんですが、本題に入る前に」と前置きした上で、熊谷が思うキャプテン像を話した。
 「自分は正直、練習が好きではありませんでした。集中力がなくて、普段はおちゃらける性格なんですが、プレーで引っ張る誠知の後ろ姿を見て、自分ももっと練習を頑張らないとなという気持ちになっていました。自分はテレビの前になると打てて、みんなも打っているイメージが強いと思いますが、本当はそんなにバッティングがよくありません。でも、(試合になると)キャプテンの誠知ひとりだけが頑張ったちゃダメだなという気持ちになり、その気持ちで結果が出たと思います。キャプテンは、キャプテンじゃない人たちをどれだけ引っ張れるかだと思います。声で引っ張る人は恥ずかしがらずに自分を出すのが一番だと思います。プレーで引っ張るというのは野球を真剣にやるということ、誰よりも練習すること。誠知はそういう人で、自分も負けないように頑張っていましたが、断然、誠知の方が上で追い越せませんでした」

 本題では、「日本代表に選ばれると思っていませんでしたが、選ばれてからは日本代表として、宮城の代表、仙台育英の代表として頑張ろうという気持ちになりました」と話し始めた。最初は自分を上手く出せずレギュラーからほど遠かったが、「いいところを出そうとするのではなく、道具の片付けや元気を出すことなど今まで通りやろうと思ったことがレギュラーへの近道だった」と振り返った。また、「日本は外国と違ってキビキビとしていて、攻守交代も早く、全力疾走もできていて、試合時間も短かったです。高校野球の良さを実感しました」と高校野球での取り組みが生きた経験を語った。10回目を数えるリーダー研修会で、主将以外の部員が話しをしたのは初めてで、キャプテンではなかった選手の目線からの話しは貴重なものになった。

 「出来は完璧でした」とホッとした表情を見せた2人の3年生に続いて、大崎市立古川中学校教諭の鈴木陽大先生が「高校野球のリーダーとして必要なもの」と題して講演した。鈴木先生は宮城県白石高校時代に第1回リーダー研修会に参加。今回の参加者の“先輩”になる。

 まず、「リーダーとして」4つのポイントを挙げた。

・ 信頼されるリーダーになろう
「すべてのことに全力で取り組む。特に嫌なことほどチームで一番頑張る」

・ チームメイトの良い点を見つけよう
「ダメな点を見つかるけど、良い点を見つけるのは難しい」

・ 目的が何か考えて行動する
「グラセンをしてほしいという目的に対し、やらない人に注意することは手段。目的のためにどんな方法があるか考える」

・ どんな人の話でも真剣に聞こう
「グラウンドにはOBや父兄、近所の人などいろんな人が

来る。苦手な人の話しはなかなか聞けないが、聞き流さず、真剣に聞いておくと後々役に立つことがある」

 次に「1つ1つの練習に目的を持って取り組もう」「PDCAサイクル」「戦略の意味を考える」と各項目に触れ、「何気なく練習するのではなく、振り返りながら練習をしていくことが大切。何故、そういう行動をとるのか、意味を考えて練習していくと効果が上がっていくと思います」と話した。

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BASEBALL QUEST〜野球とコトバの冒険の旅〜

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NHK仙台放送局アナウンサー 豊原謙二郎氏

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 午前中のラストは講座「BASEBALL QUEST〜野球とコトバの冒険の旅〜」と題し、NHK仙台放送局アナウンサーの豊原謙二郎氏が壇上へ。講座は神奈川県立湘南高校時代にラグビー部で主将を務めていた経験と、アナウンサーの立場から、ロールプレイングゲーム「ドラゴンクエスト」のようにアイテムを得て行く仕掛けで進められた。

① STAGE”P”・・・P=Presentation(表現、発表)
 「言葉の持っている力とは何かと考えると、僕は、みんなが理解できる形にすることだと思います。言葉にすることでぼんやりしたものがはっきりする」と豊原氏。例えば、1対0で1点リードの9回裏の守りで、相手チームがノーアウトランナー二塁とした場面。監督から「慌てるな、落ち着いていけ」と言われた場合と「送りバントがあるぞ。一塁で確実にアウトを1つとろう。同点はOKだ」と言われた場合、「どちらが迷いなくプレーできますか。言葉が具体的であればあるほど、人は理解しやすい」と説明した。
 「喋るためには自分たちが何者なのか具体的に言葉にしていかないといけない」と、FIRST QUESTでは、「自分たちのSTRONGPOINT=「強み」、WEAKPOINT=「弱み」をあげよ」の題に対し、それぞれがプリントに書き込んだ。SECOND QUESTではさらに細かく「強み」を分析。2人一組になり、互いに質問をして掘り下げていく作業を行った。それを受けてTHIRD QUEST「自分のチームについてプレゼンせよ」では、古川黎明佐藤翔大主将、石巻好文館木村龍生主将、佐沼及川凛堂主将が発表した。

② STAGE”M”・・・M=Motivate(やる気を起こさせる)
 豊原氏は、リーダー研修会の翌日から夏の大会の開会式までの日数を計算。210日と算出され、そこから定期テスト期間や年間降水日数などグラウンドで練習できない日を引いて約140日。さらに練習試合を含めると、「晴れの日にグラウンドで練習できる日数は100日くらい」。この日数を目の当たりにし、FOURTH QUESTでは「自分たちが最優先に取り組むべきことをコトバにしてみよ」の題に参加者たちはペンを走らせた。

 豊原氏はここまでのクエストで、「”can”自分たちにできること、”will”自分たちがどうありたいか、”must”自分たちがやるべきことの3つのアイテムをコトバとして手に入れた」とまとめ、FINAL QUEST「このクエストで得られる最大の宝」として「自分たちを象徴するチームのキャッチフレーズを考えよう」と題を出した。例として、「ジャイアンツ愛」(2002年 読売巨人軍・原辰徳監督)「東北の希望の星になる」(2011年以降 ベガルタ仙台・手倉森誠監督)「ULTIMATE CRUSH」(2002年 早稲田大学ラグビー部・清宮克幸監督)などを挙げ、これらを参考にしながら主将たちは自チームのキャッチフレーズを考えた。5校が発表し、「キャッチフレーズの意味をみんなで共有して、みんなが一つの方向に行ってくれればいいなと思います。考えて行く作業は大事なこと。もし、壁に打ち当たったら具体的に落とし込むことが解決する一つの方法です」とまとめた。

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午後の分科会でも白熱した議論

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分科会の様子

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 午後は8つのグループで分科会が行われた。グループごとに昼食を取りながら交流を深めた後、①各校から「絆プロジェクト」についての報告(昨年の取り組み、来年3月にやってみたい活動、チームで決めたキャッチフレーズの紹介)②各校から出したキャッチフレーズの中から分科会の代表作を選定③分科会独自のテーマで話し合いなどプログラムをこなした。

分科会のテーマは以下の通り。
分科会A〜C・・・チームの運営、モチベーションの向上、リーダーシップ
分科会D〜F・・・守備の強化、バッティングの強化、機動力の向上、技術練習の工夫
分科会G・・・冬期の練習メニュー、オフ・シーズン中に留意すべきこと
分科会H・・・チームの強化(ミーティングを含む)、目標作り、年間スケジュール、役割意識の定着

 一人一人の悩みに意見やアドバイスを送るグループ、持っている知識を披露するグループ、チームの取り組みを発表するグループなど様々で、どの教室でも熱のこもった討論がなされていた。「主将」という限られた役割故、共感する部分が多く、賑やかに盛り上がっているグループもあれば、深刻に悩むグループもあった。

研修を終えて

 一日の研修を終え、「野球をやっている仲間と話し合えてよかったです。上林さんの話しでは、自分が考えていた点と一致した部分もあり、いい話しをしてもらえてよかったです。豊原さんの話しでは具体的に考えることがどれだけ重要かが分かりました」と東陵山﨑誠悟主将。仙台工(軟式)・内海克基主将は「午前中は普段、聞くことのできない話しを聞くことができ、この冬のチーム作りの参考になりました。分科会では他の高校の意見を聞くことができ、自分だけが悩んでいるわけじゃないと分かってよかったです」と感想を話した。

 体験発表や講演では、自ら手を挙げて質問するなど積極的な姿勢が見られ、分科会でも白熱した議論が繰り広げられた今年のリーダー研修会。各チームの抱える問題・課題を乗り越え、さらなる成長を遂げ、夏の「本番」を迎えられることを願っている。

(文・高橋昌江

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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