Column

肉離れの予防と対応

2011.09.30

第29回 肉離れの予防と対応等について2011年09月30日

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

練習や試合においてどうしてもつきまとってしまうのがケガ。ケガには突発的に起こる「スポーツ外傷」と繰り返し動作や慢性的な疲労によって起こる「スポーツ障害」があります(参考:27回コラム「これは冷やす?温める?」)。スポーツ外傷は未然に防ぐことがむずかしい面もあるのですが、スポーツ障害は疲労のケアや正しいフォームによる繰り返し動作によっては未然に防ぐことが可能です。今回は未然に防ぐことが出来る代表的なケガ「肉離れ」(正式には筋挫傷)、特に太もも裏側(ハムストリングス)の肉離れについて解説します。

そもそも肉離れとは突然の動作などによって、特に筋肉が本来持っている柔軟性以上のものが伸ばされ、筋肉の一部にダメージを及ぼす状態を指します。太ももの裏側(ハムストリングス)に最も多く発生し、太ももの前側、ふくらはぎ、上腕部など筋肉のある部位には必ず肉離れのリスクがあります。特に太ももの肉離れの場合、走っているときにブチっと音がした、急に力が入らなくなった等、かなりわかりやすい状態でアクシデントが起こります。肉離れになる前には太ももの張りや違和感を感じたり、筋肉の硬さを感じることも多く、こういった体の変化を見逃さずに対応するだけでも肉離れを防ぐことが出来ます

肉離れになったときはRICE処置を行い、患部を安静に保って病院を受診するようにします。このとき太ももの裏側を伸ばしてこれ以上筋肉にダメージを与えないように、軽く膝を曲げた状態を保って固定・冷やすと良いでしょう。損傷程度がひどい場合には、患部に内出血が見られたり、熱感を伴って腫れることが予想されます。内出血などによるダメージを出来るだけ減らすためにも、患部を氷などで冷やすことは必ず行うようにしましょう。そして一番大切なことは受傷直後は患部をストレッチしないこと。ストレッチは大事だからと痛いながらもムリに伸ばそうとする傾向が見られますが、肉離れとはそもそも筋線維を伸ばしすぎて痛めているもの。これをさらに伸ばすと筋線維は修復出来なくなります。ストレッチはケガから回復してきた段階で、痛みのない状態になってから始めるようにしましょう。


ヒップリスト

肉離れの原因として考えられているのは、過度に筋肉を伸ばしすぎることによるものですが、太ももの前側と後側の筋力差が大きいこともその一因とされています。通常、太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)は、後側(ハムストリングス)に比べて筋力が大きいのですがあまりにも前側の筋力が強いと、ハムストリングスは常に過度な伸展を強いられてしまいます。そこへ一気に太ももの裏側を伸ばすような激しい動作が起こると、その外力に耐えられなくなった筋肉はブチッと筋線維が切れてしまうのです。また筋力の低下だけではなく、疲労によって筋肉や関節の柔軟性が低くなっていることも筋肉への負担を増やす原因です。日頃からハムストリングスのトレーニングや柔軟性の確保などを入念に行っておく必要があります。

肉離れを起こした後、競技復帰までに行うことと言えば、まずはケガで低下した筋力を回復させることです。もともと筋力が低いために肉離れを起こした可能性がありますので、痛みがなくなった時点からストレッチを行い柔軟性を回復させるとともにトレーニングを行っていくようにしましょう。ヒップリフトをまずは両足で行い30秒程度キープします。これが出来るようになれば片足ずつ行っていきましょう(図)。ケガをした側とケガをしていない側では筋力差があると思いますので、同じように出来るまで地道に筋力強化に努めましょう。またレッグカールやスクワットなどハムストリングスを鍛えるような動作を痛みのない範囲で行うようにします。肉離れはよく再発しやすいと言われていますが、筋力が低下した状態のまま競技復帰することで起こると考えられますので、左右の筋力バランスがしっかり整った状態を目指してください。

突発的なアクシデントは防ぎようがないこともありますが、肉離れは日頃のケアやトレーニング、ウォームアップやクールダウンなどで十分予防することが出来ると考えています。チームや皆さん自身が肉離れに対する正しい知識を持ち、普段から入念に身体の準備を行うようにしてくださいね。

【肉離れを防ぐために】
●太もも裏側の筋力や柔軟性を高めておく
●動き出す前には入念にウォームアップを行う(アップ不足も原因の一つ)
●肉離れを起こしたらRICE処置、直後にストレッチするのはやめよう
●再発予防のためにもトレーニングとストレッチは入念に
●左右の筋力バランスが整ってから競技復帰しよう

(文=西村 典子

次回、第30回公開は10月15日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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