脱水症状を防げ!水分補給に最適な飲み物とは?
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
暑い時期が近づいてきました。気温が高くなったり、蒸し暑く感じたりすると発汗量も増えてくるため、練習中の水分補給は欠かせません。今回は水分補給の中でも、よく聞かれる質問である「何を飲めばいいのか」ということについて、考えてみましょう。
ジャグの中身は何がいいのか?温度は?
カフェインを含まない麦茶はミネラル分も豊富で水分補給に適している
練習中は水分補給をこまめに行うことが不可欠ですが、チームでウォータージャグなどを準備しているところも多いと思います。ところでウォータージャグには何を準備するのが最適なのでしょうか。よく尋ねられる質問の一つに「ウォータージャグに何を準備すればいいのか、今準備しているものでいいのかどうかわからない」というものがあります。スポーツ活動中の水分補給は、運動で失われる水分とミネラル分を補給することを目的とするものであり、日本スポーツ協会では運動に際して0.1〜0.2%の食塩と糖質を含んだものを飲むよう勧めています。代表的なものについて考えてみましょう。
《スポーツドリンク》
スポーツを想定した飲み物で、アスリートに必要なミネラル分、糖分を含みます。手軽にとることのできる代表的な飲み物ですが、一方で飲みやすさを考慮して糖質を多く含んでいるものがあるため、過剰に飲むと「ペットボトル症候群」などの急性糖尿病を発症することがあります。ラベルには糖質(炭水化物)、食塩相当量(ナトリウム)といった数字が記載されていますので、その内容を確認し、場合によっては少し水で薄めるようにすることも検討しましょう。粉末タイプのスポーツドリンクは濃度を調整しやすいため使いやすいと思います。
《お茶》
茶葉には多くのミネラル分が含まれるため、これを使って準備したお茶にもミネラル分は含まれます。無糖のものであれば糖質を過剰にとる心配はありませんが、運動中のエネルギー源補給として、補食などを準備することが必要となってきます。またお茶の種類によってはスポーツでの水分補給に不向きなものもあります。カフェインが多く含まれている緑茶などは大量に飲んでしまうと、カフェインの利尿作用によってせっかくとった水分が尿として排泄されてしまうことにもなります。スポーツに向いているお茶といえばカフェインを含まない麦茶がよいでしょう。
また気をつけたいのが飲み物の温度です。汗をかいて身体が温まっているとどうしても冷たいものをとりたくなりますが、急激に胃腸を冷やしてしまうと胃腸の機能を低下させ、消化不良を起こしてしまったり、腹痛を起こしてしまったりといったことも考えられます。できれば常温か、もしくは糖分を含むものについては8〜13℃程度に冷やしたもの(少し冷たいかなと感じる程度)を準備することが望ましいと言えます。
水を飲んで脱水になることがある!?
汗をかくと水分とともにミネラル分が失われるので、それを補うようにしよう
運動中に水だけを大量に摂取すると、コンディションを悪化させることがわかっています。汗には水分以外にも塩分などのミネラル分を含んでいるのですが、この状態で水分だけを体内に補給すると、血液などをはじめとする体液の濃度が低下してしまいます(いわゆる薄くなった状態)。こうした体液の濃度を察知した脳は「水分が多いから体液が薄くなっている」と理解し、身体から余分な水分を汗や尿などから排出します。こうして身体からは水分が排出されるのに、喉の渇きを覚えることがないため、気づかないうちに脱水が進行してしまうことになります。これを自発的脱水と言います。水分とともにミネラル分を補給することで自発的脱水を予防することが出来ます。
【お腹チャポチャポを避けるために】
水分・ミネラル分補給の重要性は理解してもらえたと思いますが、薄くなったスポーツドリンクをたくさん飲んでしまうとお腹がチャポチャポになってしまって動けない…といったことも考えられます。適切な水分補給としては一口〜200ml程度をめどにこまめにとることや、塩分などのミネラル分を補食などで補うことなども一つの方法です。スポーツシーンにあわせた飴やエネルギー補給を考えた補食などとあわせてとるようにすると過剰に水分をとって動きづらくなるといったことも避けられると思います。また練習前後で体重測定を行い、体重減少分の水分補給を練習後に行うようにすると適切な水分量の目安がわかるようになるでしょう。
水分補給の飲み物についてもさまざまありますが、手軽に準備できるものを上手に取り入れてみてくださいね。
【水分補給に最適な飲み物とは?】
●0.1〜0.2%の食塩と糖質を含んだものが理想的
●スポーツドリンクは糖質が多く含まれるので過剰に飲みすぎない
●お茶にはミネラル分が含まれ、カフェインを含まない麦茶は水分補給に適している
●あまりに冷たすぎるものは胃腸に負担をかけやすい。少し冷たいかなと感じる8〜13℃を目安にしよう
●水分のみを補給し続けると、体液が薄まって自発的脱水を起こすことがあるので注意しよう
●お腹がチャポチャポにならないよう、補食なども上手に活用しよう
次回コラム公開は6月15日を予定しております。
(文=西村 典子)