救急時の対応を再確認しよう
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
いよいよ球春到来、野球のシーズンがやってきました。これからはボールを使った実践練習が増え、さらに春休みに入ると遠征や合宿などに出かけるチームもあることでしょう。今までとは違った過ごし方をすることも多くなります。さて今回はこうした時期に改めて確認しておきたい救急時の対応についてお話をしたいと思います。
練習前までに準備・確認しておくもの
初めて行く場所は特にAEDの設置場所を確認しておくこと
練習前の準備というと、マネージャーさんが水分補給用のジャグや補食を用意することなどをまず思い浮かべると思いますが、その前にチームとして確認しておきたいことがいくつかあります。
●AEDの場所は把握していますか?
ボールを使った練習で想定しておきたいのは、ボールが胸部にあたった際に起こる「心臓震盪(しんぞうしんとう)」です。起こる確率は非常に小さいですが、万が一心臓震盪を起こした場合には生命に関わるアクシデントであり、迅速な対応が求められます。グランドから一番近いAEDの場所はどこにあるのか、休日で学校などが閉まっているときはどこに行けばいいのか、合宿や遠征先など行ったことのないグランドに行く場合は特に練習前に必ずAEDの場所を確認しておきましょう。
●救急時の初期対応について
突然ケガが起こったときの対応をあらかじめ確認しておきましょう。軽度のアクシデントであれば適切な応急処置を行いますが、例えば頭部や顔面などにボールが当たった場合はどのように対応すればいいのか、意識や出血の有無によってもかわってきます。近隣病院や緊急時の連絡先(保護者の携帯番号など)をわかりやすくリストにしておくと良いでしょう。ただしこうしたリストは個人情報を含むため、指導者の方とともに取扱い方を確認するようにしましょう。
●救急箱の中身をチェック
不足している物品がないかを確認し、必要なものはそのつど練習前に補充しておくようにしましょう。滅菌ガーゼやバンドエイド、テーピングといった日常使うものとともに、緊急時の三角巾や眼帯などもあると心強いです。また普段使いとしてあると便利なものは爪切り(爪のケア、やすりつきだとなお良い)と鏡(目にゴミが入ったときに役立つ)、扇子やうちわ(熱中症っぽい症状の時に仰いで風を送ることが出来る)などです。また筆記用具も必ず近くにおいておくようにしましょう。
練習中に起こったアクシデントへの対応
クロスプレーなどは突発的なケガが起こりやすい。アクシデント時の対応を再確認しておこう。
実践練習が多くなるにつれて、スポーツによるケガも起きやすくなります。特に打撲や衝突、転倒など突発的に起こるスポーツ外傷は予防することがむずかしいため、ケガが起こった後の初期対応がとても重要です。トレーナーがいる現場ではすぐに適切な対応を受けることが出来ますが、常勤のトレーナーがいるスポーツ現場はまだまだ少ないため、選手本人や周囲にいる人たちがケガへの対応を理解しておく必要があります。
●ケガをしたときのセルフチェック(選手自身で)
1)ケガをしたときの状態(どういう格好で、どういう状況で、落ちた、転倒した、捻った、打撲したなど)
2)動けるか、動くか、変形しているか、歩けるか、しびれがあるかなど
3)痛みは我慢できる程度か、できないほど強いか、など
4)腫れがあるか
以上の4点について自分でチェックします。しばらく経過を観察しても痛みがどんどん強くなる場合、出血が続く場合、変形が見られる場合などはすぐに病院に行く手配をしましょう。
●RICE処置は理解していますか
局所の打撲、捻挫、骨折などのスポーツ外傷はまずRICE処置を基本とし対応します。患部を冷やすことはケガをした部位の出血をおさえ、その後の経過を左右する大事な応急処置です。
安静 (R)局所の安静を保つため患部を固定し、これ以上ケガの範囲が広がらないようにする。
冷却 (I)患部を冷やすことで内出血や腫れ、痛みの感覚などをおさえる。
圧迫 (C)これ以上患部が腫れないように、弾性包帯やバンテージなどで軽く圧迫する(血流を止めないこと)。
挙上 (E)これ以上患部が腫れないように、患部を心臓より高い位置に上げておく。
●病院への連絡・搬送時に確認しておきたい項目
病院を受診する場合、あらかじめ的確な情報を伝えておくとその後の対応がスムーズになります。本人が連絡できない場合は周囲の人が正しい情報を伝えるようにしましょう。
・搬送される人数(接触プレーなどでは複数名というケースもある)
・搬送される人の氏名、性別、年齢
・ケガが発生した場所(○○高校のグランド等)
・ケガが発生した状況(例:野球部の練習中に、急に意識を失って倒れた等)
・現在の状態(例:自力で歩けない、大量に汗をかいている、などを簡潔に)
・連絡した人の氏名と連絡先、本人との関係
頻繁に起こることの少ないスポーツ現場でのアクシデントですが、あらかじめ確認しておかないといざという時にかなりあわててしまいます。本格的な野球シーズンを前にチームで必ず確認しておいてくださいね。
(文=西村 典子)