足が速くなりたい!という選手へ
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。2018年も選手の皆さんはもちろん、マネージャー、指導者、保護者などチームを支える多くの方々に役立つコラムをお届けできればと思いますので、本年もお付き合いのほどどうぞよろしくお願いいたします。さて今回はさまざまな現場で本当によく質問される「足を速くしたいのですが…」という話について、考えてみたいと思います。
腸腰筋のトレーニングを行おう
腸腰筋のトレーニングは正しい姿勢を保持し、走力アップにも貢献する
【野球選手としての足の速さ】
まずは自分の身体を自分でコントロール出来るだけの筋力をつけることです。筋肉をつけすぎると身体が重くなるのではと心配する選手がいるかもしれませんが、身体が重くなってもその重さをしっかりと支えられるだけの筋力がついていればパフォーマンスはむしろ力強さを増してくるようになります。一歩目のスタートダッシュが力強いとそれだけ体重移動させる能力が大きくなり、素早い動きにつながります。こうした足の速さは筋力だけではなく刺激に対する反応の早さなども関係します。
走力を高めるためには「歩幅を今よりも大きくする」ことと、「足の回転を速くする」ことを意識してみましょう。歩幅を大きくするためには股関節周辺部の柔軟性を高める必要がありますし、一歩で体重移動させられる筋力を上げることも必要です。また足の回転を速くするためには足が地面についている接地時間を短くし、大回りしないようになるべくムダのない回転を行う必要があります。足が接地したときに地面を蹴ってしまうと足の回転は大回りしやすくなるので、足を蹴らないように、地面に足裏がついたらすぐに腿をあげて次の動作に進むことが、より効率よく足を回転させることにつながります。腸腰筋など太もも前側の筋肉をトレーニングすることがパフォーマンスアップに効果的であるといわれるのは、こうした理由もあると考えられます。
ランニングフォームから見えてくるもの
足が速くなるための課題は人それぞれ。野球のパフォーマンスにつなげられるようにしよう。
【ランニングフォームから見えてくるもの】
ランニングフォームを見直すだけでも足が速くなることがあります。特にランナーで盗塁を試みるとき、スタート一歩目と同時に身体が一気に上へと浮いてしまうと空気抵抗を受けやすくなりスピードアップを妨げますが、スタートした後もなるべく低い状態を保つことが出来るとそれだけ空気抵抗による減速を防ぐことが出来ます(最終的には身体は起き上がってしまいますが、なるべく低い状態を長く保ちたいということ)。こうしたフォームを維持するためには低い姿勢を保持し続けられるだけの筋持久力や、体幹を安定させるための筋力が必要となります。目線が低い位置にあり、一定であると比較的低い状態を保ちやすくなります。また力んだフォームで走ることはアクセルを踏みながらブレーキをかけている状態であるともいえます。軽く息を吐いて不要な力は抜き、ブレーキをかけないようなランニングフォームに改善することも大切です。
【ベースランニングの練習】
野球選手に特徴的な足の速さとしてはベースランニングが挙げられます。常にベース周りを最短距離で時計と反対回りに走る能力です。これは自分の歩幅とベース周りを確認しながら最短距離になるように走ることが大切です。その際に身体を内側に傾けたり、ベースに合わせるために歩幅を調節したりといった技術的な要素を高めることが必要となってきます。上手な選手のベースランニングを見て特徴を研究してみたり、選手同士で動画を撮影して自分のベースランニングを確認したりしながら、より効率よく走ることが出来るように練習しましょう。またボールの行方を常に目で追い、少しでも守備にミスが見られたら一気に次の塁を狙うといった判断力も同時に養う必要があります。こうした能力は実践形式の練習をより多く積み重ねることはもちろんですが、普段からボールの行方を確認し、「このケースならどこまで走ることが出来るか」といったシミュレーションを繰り返すことでも養うことが出来ます(走塁の準備)。
足が速くなるための万人向け、万能エクササイズというのは挙げることがむずかしいものですが、「足を速くする」ための要素を分解し、一つずつ確認していくことで自然と速くなることが期待できます。今まで試してみたことがなかったものについては、ぜひ一度チャレンジしてみてくださいね。
(文=西村 典子)