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冬のランニングプログラムの考え方

2017.12.15

冬のランニングプログラムの考え方 | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

オフシーズンになるとランニング量が増え、いわゆる「走りこみ」を行うことが多くなってくると思います。走りこみは選手にとってはつらい練習かもしれませんが、これも身体づくりのため、スタミナ強化のため、そして何より野球が上手くなるために必要な練習の一つと考えましょう。今回は冬の時期に行うランニングについて、プログラムの構築方法を中心に考えたいと思います。

体力を鍛えることでついてくる根性論

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ただ長い距離を走るのではなく、何のために走るのかを明確にする

 特に長距離のランニングはスタミナ強化をメインとして行われていることが多いのですが、その中には根性論のように「あきらめない心を鍛える」という目的もあると思います。こういった精神論は特に否定するものではありませんが、これがランニングの主たる目的ではなく、体力レベルを上げることともに精神的な面での粘り強さを養うことが付随してくるようにすることが大切です。ただただ走って根性を鍛えることを目的にしてしまうと、選手からすると「走らされている」という意識が強くなってしまい、つらい練習になりがちです。

 一方で何事も「楽しい」ことばかりを追い求めると、今度は運動強度や負荷の面で「今の体力でできる範囲」のレベルになりがちです。楽しく練習することは大切ですが、その練習内容が選手の体力レベルを向上させるものであること、適切な強度で行われていることを確認するようにしましょう。特にグループなどに分かれて行うリレー形式のランニングは競争が伴うため、盛り上がって楽しい面もあります。私もときどき取り入れるようにしていますが、リレー形式で行うランニングは、選手一人一人のランニング量が少なくなりがちであることや、勝負に熱くなりすぎてケガをしやすくなるといった側面もあることを覚えておきましょう。

なぜ冬の時期に長い距離を走るのか

 ランニングにもトレーニングと同じように行う時期にあわせて鍛える体力要素が変わってきます。トレーナーやトレーニングコーチはチームの年間スケジュールを把握して、一番大切な試合に身体のコンディションをベストな状態にできるようにトレーニングやランニングプログラムを作成します。オフシーズンはシーズン中には比較的、長い距離を走って全身持久力(=スタミナ)や筋持久力を強化することが多くなりますが、その理由としては「シーズン中には限られた練習時間の中でより多くの時間を野球の技術練習に費やしたい」「時間のかかる長距離走を取り入れる時間的な余裕がない」「暖かい時期よりも寒い時期の方がロング走に適している」ことなどが挙げられます。暑い夏の時期に長距離走を行うと脱水などから熱中症を起こしやすく、気候面や体力面を考慮すると冬の時期に行う方がより安全であると言えるでしょう。

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どの体力要素を鍛えるのかを明確にする

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疲労のたまった状態でも同じパフォーマンスができるように体力面を強化する

 ランニングを行う時にはどの体力要素を鍛えるのかを明確にする必要があります。「何のために走っているのか?」が明確でないと、やはり「よくわからないけど走らされている」ということになってしまいます。冬の時期に行われるランニングは主に全身持久力(スタミナ)の強化、筋持久力の強化が挙げられます。またこれに疲労に対する耐久性を強化する目的もあります。疲れた状態からいかに早く回復できるか、その回復速度を速めるためのランニングを行います。

《全身持久力の強化》

 心肺機能を向上させるために行います。心拍数を最大心拍数(簡易的な計算式にあてはめると、16歳であれば220-16=204)の70~85%程度まで徐々にあげていくようにしましょう。試合が終盤にさしかかったときでも走りきれる、投げきれるだけの体力を養います。ただし体力レベルには個人差がありますので、タイム設定をチーム全員一律にするのではなく個人レベルにあわせて柔軟に対応する必要があります。またこのようなトレーニングを行う場合には、あらかじめメディカルチェックや健康診断等で心肺機能に問題がないかどうかを確認しておく必要があります。

《筋持久力の強化》

 同じ動作が何度も同じようにできるためには、筋力とともに筋持久力が必要です。ランニングではペース走としてある一定の距離を同じペースで走るプログラムなどを行い、試合終盤になってもピッチングフォームやバッティングフォームが崩れることなく、同じ動作を繰り返すことができるだけの筋持久力を養います(フォームの再現性を強化する)。

《疲労に対する耐久性の強化》

 ランニングのセット間に休息を取る時間を計画的に決め、心拍数がある程度下がったところから再度ランニングを行うことで、疲労に対する耐久性を上げるようにプログラムを組みます。インターバルトレーニングとよばれるこの方法は、高負荷のトレーニング(心拍数が高い状態)と低負荷の状態(休息によって心拍数を元に戻す)を繰り返すことによって、心拍数が高い強度のトレーニングから元に戻る能力を高めることを目的としています。トレーニングと休息の比率は、行うトレーニング内容によっても変わりますが、「トレーニング:休息=2:1」から「トレーニング:休息=1:1」程度に設定します。疲労物質をできるだけ早く体内で分解・再利用・排出することで、疲労に強い身体をつくることを目的とします。

オフシーズンに行うランニングの考え方

●ランニングは根性論だけではなく、明確な体力面での目標を定める
●リレー形式のランニングはランニング量が少なく、ケガのリスクがあることを理解する
●長距離走は、気候面や体力面を考慮すると冬の時期に行う方が適している
●冬のランニングは全身持久力、筋持久力、疲労に対する耐久性を強化する
●ランニングの内容に変化をもたせ、飽きない、ケガをしないプログラムにする

(文=西村 典子

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2017年秋季大会特設ページ 〜選抜への道〜

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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