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日焼けによる疲労とその対応

2017.08.15

日焼けによる疲労とその対応 | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 屋外でプレーをすることの多い野球はどうしても日焼けをしてしまうもの。特に夏休みになると練習や試合などで部活動の時間がいつもより長くなり、その分屋外で日光を受ける機会も多くなります。日焼けによって身体がほてったり、疲れたと感じることも多かったりすると思いますが、今回はこうした日焼けと疲労の関係、そして自分でできる対応などについてお話をしたいと思います。

日焼けをすると疲れる理由

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夏は暑さとともに紫外線への対策もしっかりとろう

(1)皮膚が「やけど」をすることによるダメージ
 屋外で紫外線を浴びると皮膚が赤くなったり、黒くなったりするいわゆる「日焼け」状態となりますが、これは皮膚が軽い火傷状態になっていると考えられます。また長時間日光に当たり続けるとさらに炎症症状が進んで皮膚が赤く火照った状態となり、ひどいときには水ぶくれなどが出来ることもあります。このような炎症症状が身体のあちらこちらに見られると、その状態から回復するまでに時間を要することになります。

(2)灼熱の環境下による水分不足
 日焼けになるような環境下は気温も高いことが多く、運動をしていない状態でも身体は体温調節のために汗をかきます。適切な水分・ミネラル分を補給することが大切ですが、体内の水分が不足してしまうと血液中の水分が奪われるため、血液循環が滞ってしまうようになります。血液は全身の細胞に酸素と栄養分を届け、運動などで発生した疲労物質を回収する働きがあるのですが、この働きが低下すると動かしている筋肉に酸素が十分に行き届かなくなって思ったように動けなくなり、疲労物質もなかなか代謝・分解されないため疲労感を感じてしまうようになります。

(3)紫外線によって活性酸素が増え、正常な細胞を傷つける
 太陽光には目に見える光(可視光線)と目に見えない光があり、その中で最も波長の短い光が紫外線です。1日のうちでは正午ごろ、日本の季節では6月から8月に最も紫外線が強くなり、曇りや雨といった天候よりも快晴時により強くなります。この時期に日光に当たると紫外線を浴びることになりますが、紫外線が強ければ強いほど皮膚のダメージも大きくなるため、身体には防御反応としてメラニン色素(皮膚を黒くする働きをもつ)を生成し、紫外線から皮膚を守るようなしくみが働いています。ただこのとき、メラニン色素の生成と同時に大量の活性酸素を発生させることもわかっています。

 活性酸素は身体の免疫作用を担う必要不可欠なものではありますが、過剰に増えると正常な細胞を傷つけ、疲労物質を生み出すといわれています。日光を浴び続けると疲労を感じるのはこうした身体のメカニズムによるものと考えられます。

[page_break:日焼けによる疲労を防ぐために]

日焼けによる疲労を防ぐために

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日焼け止めは一度塗るだけではなく、こまめに塗り直すことが効果的

 日焼けを予防するためには物理的に紫外線に当たらないことが一番なのですが、野球は屋外でのスポーツですので、日光の紫外線による日焼けはある程度考えておかねばなりません。ただ体内の水分不足はある程度予防することが可能ですので、こまめな水分補給・ミネラル分補給を行うようにしましょう。特に練習時間が長くなったり、日中の暑い時間帯にプレーをする場合は、熱中症対策や筋肉のけいれんを予防する上でも重要です。

 日焼け予防対策としては皮膚が露出しているところに市販の日焼け止めのクリームや乳液などを使うことが一般的ですが、日焼け止めを塗ったからその日一日効果が持続するものではなく、数時間おきに塗り直す必要があります。特に朝、塗ってそのまま一日過ごしていると、お昼頃の一番紫外線の強い時間帯に効果が薄れているといったことも考えられます。日焼け止めを使う場合はこまめに塗り直すようにしましょう。

 また長袖のアンダーシャツを着て直接日光に当たらないようにすることも一つの方法です。暑い時期なので長袖アンダーシャツは敬遠されがちですが、日焼けによる疲労を考えると通気性のよい長袖アンダーシャツを着て、こまめに着替えるようにすると熱さが体内にこもることもなく過ごせると思います。さらに紫外線は目からも入ってくるため、目からの紫外線をカットするためにサングラスを着用することも効果があります。

日焼けをしたときの対応

 過度の日焼けは皮膚のダメージのみならず、体調不良にもつながってきますので注意が必要です。肌が赤くヒリヒリと炎症を起こした状態が続くと、身体全体の体温上昇につながりますし(熱中症予備群)、痛みやかゆみがひどくなってくると集中力の欠如にもつながります。

 日焼けの対策としては赤くなった部分が多く、ヒリヒリとした痛みを伴ったり、ほてった感じが残ったりするようであれば、軽度の火傷と考えて氷で冷やすようにしましょう。その後、皮膚を保護する保湿クリームなどで皮膚への水分補給と保湿を行うようにします。数日経つと皮膚の炎症が落ち着いてきますが、皮がむけ始めてしまったらなるべく自然にむけるまでさわらないようにしましょう(はがしてしまうと皮膚の色ムラにつながる)。

 身体全体が熱く感じられるようであれば、クールダウンを兼ねて水風呂などで皮膚を表面から冷やして体温を下げることもよいでしょう。水ぶくれなどがひどい場合は医療機関で適切な処置を受けることが大切です。

 夏の練習では熱中症などへの対策と同時に日焼けによる疲労にも配慮が必要です。紫外線の影響を少なくするためにも、帽子を必ず着用し、練習の合間には日陰で水分補給を行う等、体力の消耗を抑えるような休憩の取り方などにも配慮するようにしてみてくださいね。

【日焼けによる疲労とその対応】
●日焼けをすると皮膚は軽い火傷状態になっている
●熱い環境下で水分補給がうまくいかないと身体の疲労感を感じやすくなる
●紫外線によって体内に活性酸素が過剰に増えてしまう
●日焼け止めはこまめに塗り直して、その効果を持続させるようにする
●皮膚がヒリヒリと痛みを伴うほどの日焼けは氷などで冷やすようにする
●水ぶくれなどができてしまった場合は医療機関を受診しよう

(文=西村 典子

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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