Column

肩のコンディショニングを見直そう

2016.09.15

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。

 各地で来年のセンバツ大会につながる秋季大会が開催されていますね。勝ち上がっているチームは一つでも多く勝てるようがんばってくださいね。残念ながら負けてしまったチームはこれから先のシーズンを見据えて、さまざまな課題に取り組んでほしいと思います。さて今回は肩のコンディショニングに関して基本的なことをおさらいしたいと思います。

力んでゴムチューブを引っ張らない

ゴムチューブでのトレーニングは代償運動が起こらない程度の強度で行う

 投手はもちろんですが、野手についても肩のコンディショニングを整えることは、ケガ予防という面からみてもとても重要です。ケガ予防として真っ先に思いつくのがゴムチューブや軽いダンベルなどを使ったインナーマッスル(腱板:ローテーターカフ)のトレーニングではないでしょうか。インナーマッスルを鍛えると肩のケガを予防することが出来るといわれていますが、それには正しい動作・正しい負荷で行う必要があります。

 よくゴムチューブを力強く引っ張る選手を見かけますが、力強く引っ張ってしまうとインナーマッスルを鍛えるというよりも、肩甲骨の動きとインナーマッスルの上をおおうアウターマッスル(大きな力を発揮する筋肉、たとえば肩の三角筋や広背筋など)の力によってゴムを引っ張ることになってしまい、本来の目的とは異なってしまいます。

 弱い負荷で行うと何となく物足りなさを感じるかもしれませんが、インナーマッスルを鍛える目的でトレーニングを行う場合は、代償運動(本来鍛えるべき部位ではなく、より動きやすい他の部位が代わりに働いてしまうこと)を起こさないようにすることを心がけましょう(参考コラム:正しくインナーマッスルを鍛える)。

負荷は軽めに。ペットボトルも活用しよう

 インナーマッスルは本来肩の関節を安定化させる役割があり、この機能がしっかり働いていると、投球動作を繰り返し行っても大きなケガにつながることは少ないと考えられます。ただし身体の外側をおおうアウターマッスルに比べると非常に小さな筋肉ですので、負荷はなるべく軽めにして繰り返しトレーニングを行い、筋力と筋持久力を高めるようにしましょう。

 ゴムチューブで行う場合は、やや軽めの負荷を選び、ダンベルなどで行う場合は500g~重くても1㎏程度のものにしましょう。500mlのペットボトル飲料を使うとちょうど500g相当にあたりますので、ダンベル代わりに使うこともオススメです。

このページのトップへ

[page_break:メディシンボールを使ってトレーニング / ゼロポジションでキープする]

メディシンボールを使ってトレーニング

ゼロポジションの位置を理解しよう

 軽い重さのメディシンボールなどを使って細かく壁当てを繰り返すことも、肩のインナーマッスルを刺激して肩関節の安定化を促します。投球動作でもっとも肩に負担の少ないポジションといわれているゼロポジション※を中心に、それよりも上やそれよりも下といったポジションでも繰り返し行うことが出来るようにトレーニングをします。

※ゼロポジションは一般的には上腕骨と肩甲骨の出っ張っている部分(肩甲棘:けんこうきょく)が一直線になる場所といわれていますが、両手を頭の後ろで組んで、そこから腕を動かさずに肘を伸ばすことでゼロポジションとなります。投球動作のときに「肘が下がっている」と指摘されるのは、このゼロポジションの位置から肘が下がっていることを指し、この状態で投球を繰り返すと肩や肘に大きな負担がかかりやすくケガの一因ともなります。

ゼロポジションでキープする

うつ伏せに寝転がった状態でもインナーマッスルは鍛えられる

 ゼロポジションでの肩関節の安定化をはかるためには、その状態をキープするトレーニングも有効的です。うつ伏せに寝転がった状態でゼロポジションを作り、肩甲骨を引き寄せて腕を地面から上げてキープします。およそ20秒程度を1回として3回~5回程度を毎日行うようにしましょう。親指を上に上げた状態(サムズアップ)と親指を下にした状態(サムズダウン)と両方行うとより効果的。ウォームアップクールダウンの時に取り入れるようにすると毎日行うことが出来るでしょう。

 これなら特別な何かを準備しなくても肩のコンディショニングを整えるのに役立ちますので、ぜひチームで取り組んでみてくださいね。

インナーマッスルを鍛えるときは代償運動を起こさないように気をつける
●負荷が大きすぎると肩甲骨の動きやアウターマッスルがより多く働いてしまう
●ダンベルは500g~1㎏程度のものを。ペットボトルの負荷を利用するのもよい。
●メディシンボールを使っての壁当てドリルは肩関節の安定化に有効
●ゼロポジションは肩に一番負担がかからない位置のこと
●うつ伏せでゼロポジションをキープすることも肩のトレーニングにつながる

(文=西村 典子

次回コラム公開は9月30日を予定しております。


注目記事
2016年秋季大会 特設ページ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.03.28

大阪桐蔭、大会NO.1右腕に封じ込まれ、準々決勝敗退!2失策が失点に響く

2024.03.28

中央学院が春夏通じて初4強入り、青森山田の木製バットコンビ猛打賞も届かず

2024.03.28

【センバツ準々決勝】4強決定!星稜が春初、健大高崎は12年ぶり、中央学院は春夏通じて初、報徳学園は2年連続

2024.03.28

星稜・戸田が2安打無四球完封で初4強、阿南光・吉岡はリリーフ好投も無念

2024.03.28

健大高崎が「機動破壊」以来、12年ぶり4強、山梨学院は連覇の夢ならず

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード

2024.03.24

【神奈川】桐光学園、慶應義塾、横浜、東海大相模らが初戦白星<春季県大会地区予選の結果>

2024.03.23

【東京】日本学園、堀越などが都大会に進出<春季都大会1次予選>

2024.03.27

報徳学園が投打で常総学院に圧倒し、出場3大会連続の8強入り

2024.03.25

異例の「社会人野球→大学野球」を選んだ富士大の強打者・高山遼太郎 教員志望も「野球をやっているうちはプロを狙う!」父は広島スカウト

2024.03.08

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.03.17

【東京】帝京はコールド発進 東亜学園も44得点の快勝<春季都大会1次予選>

2024.03.11

立教大が卒業生の進路を発表!智弁和歌山出身のエースは三菱重工Eastへ、明石商出身のスラッガーは証券マンに!

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード

2024.03.01

今年も強力な新人が続々入社!【社会人野球部新人一覧】