肩のコンディショニングを見直そう
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。
各地で来年のセンバツ大会につながる秋季大会が開催されていますね。勝ち上がっているチームは一つでも多く勝てるようがんばってくださいね。残念ながら負けてしまったチームはこれから先のシーズンを見据えて、さまざまな課題に取り組んでほしいと思います。さて今回は肩のコンディショニングに関して基本的なことをおさらいしたいと思います。
力んでゴムチューブを引っ張らない
ゴムチューブでのトレーニングは代償運動が起こらない程度の強度で行う
投手はもちろんですが、野手についても肩のコンディショニングを整えることは、ケガ予防という面からみてもとても重要です。ケガ予防として真っ先に思いつくのがゴムチューブや軽いダンベルなどを使ったインナーマッスル(腱板:ローテーターカフ)のトレーニングではないでしょうか。インナーマッスルを鍛えると肩のケガを予防することが出来るといわれていますが、それには正しい動作・正しい負荷で行う必要があります。
よくゴムチューブを力強く引っ張る選手を見かけますが、力強く引っ張ってしまうとインナーマッスルを鍛えるというよりも、肩甲骨の動きとインナーマッスルの上をおおうアウターマッスル(大きな力を発揮する筋肉、たとえば肩の三角筋や広背筋など)の力によってゴムを引っ張ることになってしまい、本来の目的とは異なってしまいます。
弱い負荷で行うと何となく物足りなさを感じるかもしれませんが、インナーマッスルを鍛える目的でトレーニングを行う場合は、代償運動(本来鍛えるべき部位ではなく、より動きやすい他の部位が代わりに働いてしまうこと)を起こさないようにすることを心がけましょう(参考コラム:正しくインナーマッスルを鍛える)。
負荷は軽めに。ペットボトルも活用しよう
インナーマッスルは本来肩の関節を安定化させる役割があり、この機能がしっかり働いていると、投球動作を繰り返し行っても大きなケガにつながることは少ないと考えられます。ただし身体の外側をおおうアウターマッスルに比べると非常に小さな筋肉ですので、負荷はなるべく軽めにして繰り返しトレーニングを行い、筋力と筋持久力を高めるようにしましょう。
ゴムチューブで行う場合は、やや軽めの負荷を選び、ダンベルなどで行う場合は500g~重くても1㎏程度のものにしましょう。500mlのペットボトル飲料を使うとちょうど500g相当にあたりますので、ダンベル代わりに使うこともオススメです。
メディシンボールを使ってトレーニング
ゼロポジションの位置を理解しよう
軽い重さのメディシンボールなどを使って細かく壁当てを繰り返すことも、肩のインナーマッスルを刺激して肩関節の安定化を促します。投球動作でもっとも肩に負担の少ないポジションといわれているゼロポジション※を中心に、それよりも上やそれよりも下といったポジションでも繰り返し行うことが出来るようにトレーニングをします。
※ゼロポジションは一般的には上腕骨と肩甲骨の出っ張っている部分(肩甲棘:けんこうきょく)が一直線になる場所といわれていますが、両手を頭の後ろで組んで、そこから腕を動かさずに肘を伸ばすことでゼロポジションとなります。投球動作のときに「肘が下がっている」と指摘されるのは、このゼロポジションの位置から肘が下がっていることを指し、この状態で投球を繰り返すと肩や肘に大きな負担がかかりやすくケガの一因ともなります。
ゼロポジションでキープする
うつ伏せに寝転がった状態でもインナーマッスルは鍛えられる
ゼロポジションでの肩関節の安定化をはかるためには、その状態をキープするトレーニングも有効的です。うつ伏せに寝転がった状態でゼロポジションを作り、肩甲骨を引き寄せて腕を地面から上げてキープします。およそ20秒程度を1回として3回~5回程度を毎日行うようにしましょう。親指を上に上げた状態(サムズアップ)と親指を下にした状態(サムズダウン)と両方行うとより効果的。ウォームアップやクールダウンの時に取り入れるようにすると毎日行うことが出来るでしょう。
これなら特別な何かを準備しなくても肩のコンディショニングを整えるのに役立ちますので、ぜひチームで取り組んでみてくださいね。
●インナーマッスルを鍛えるときは代償運動を起こさないように気をつける
●負荷が大きすぎると肩甲骨の動きやアウターマッスルがより多く働いてしまう
●ダンベルは500g~1㎏程度のものを。ペットボトルの負荷を利用するのもよい。
●メディシンボールを使っての壁当てドリルは肩関節の安定化に有効
●ゼロポジションは肩に一番負担がかからない位置のこと
●うつ伏せでゼロポジションをキープすることも肩のトレーニングにつながる
(文=西村 典子)
次回コラム公開は9月30日を予定しております。
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