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【第97回高知大会展望】明徳義塾の6連覇か?それとも戦国時代の幕開けか?

2015.07.18

 7月4日(日)、高知県高知市の「高知工業高校」で組み合わせ抽選会が行われた「第97回全国高等学校野球選手権高知大会」。昨秋県大会王者・四国大会ベスト4の第1シード明徳義塾の6連覇が最大の焦点となるが、今季は新人戦・春季県大会は第3シードの高知中央が制し、県総合体育大会は第2シードの高知が優勝。第4シードの高知商、ノーシード勢も力を備え、戦国時代の予感も漂う。

 昨年より1校減の33校31チーム(中村高校西土佐分校・窪川・高知高岡は3校で連合チーム結成)が参加。台風11号の影響により1日遅れの7月19日(日)に開幕する大会の展望と「高校野球ドットコム」ならではの他にはない直前情報を、シード校のブロック別に追っていきたい。

第1シード・明徳義塾ブロック

「なんとか形になってきた」
名将・馬淵 史郎監督の表情がようやく明るくなってきた。

 昨秋四国大会準決勝では堅守・明徳義塾らしからぬミスから今治西(愛媛)に4点差を覆されセンバツを逸する痛恨の敗戦。さらに春の県大会決勝でも期待の最速145キロ右腕・國光 瑛人(2年・179センチ73キロ・右投右打・龍野ボーイズ<兵庫県>出身)が高知中央に決勝打を浴び敗戦。加えてその試合で右ひじを疲労骨折した國光は、一度は復帰するも同箇所を再度疲労骨折。今大会では登録を外れた。

飛田 登志貴 (明徳義塾)

 ただ、5月の県体育大会では最速138キロ3年生右腕カルテット・飛田 登志貴(三塁手と外野手兼任・右投左打・185センチ80キロ・大津北リトルシニア<滋賀県>出身)、七俵 龍也(左翼手兼任・178センチ70キロ・飯塚ボーイズ<福岡県>出身)、佐田 涼介(右翼手兼任・181センチ74キロ・右投右打・明徳義塾中出身)、真田 一斗(中堅手兼任・右投左打・173センチ68キロ・茨木ボーイズ<大阪府>出身)がいずれも実力を発揮。特に飛田は腕をサイド気味にしたことで制球力とボールの勢いが増し、以後もエース格として絶対的安定感が出てきている。

 さらに佐藤 洋部長が「隠し球」と公言するこれまで公式戦出場なしの三塁手・神藤 廉大(3年・172センチ72キロ・右投右打・箕面ボーイズ<大阪府>出身)など、打線にも新戦力が台頭。夏に向けての勢いは増してきた。

 初戦では安芸土佐塾の勝者と対戦。土佐塾は、硬式野球部創部3年目。県体育大会では高知中央土佐を連覇する新星。1985年センバツで初出場初優勝の伊野商で指揮を執ったベテラン・山中 直人監督が課した内野手転向などの試練を経て、横田 優輝(3年・右投左打・175センチ70キロ・香南市立野市中出身)が再びエースナンバーを背負う岡豊などの好チームも控えるが、艱難辛苦(かんなんしんく)の末に獲得した4連勝で到達できる第1シードの利も活かし、明徳義塾は6連覇へ一歩ずつ踏み出す覚悟だ。

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[page_break:第4シード・高知商業ゾーン / 第3シード・高知中央ゾーン]

第4シード・高知商業ゾーン

橋本 隆(高知商)

 県体育大会準々決勝では高知南との死闘を制し、なんとかシード権を確保した高知商。だが、軸の戦力は例年以上に充実している。
投手陣では左腕3枚。エースナンバーを背負い先発の大役を担うのが清岡 龍哉(3年・177センチ68キロ・馬路村立馬路中出身)で、高橋 大(2年・170センチ67キロ・高知市立愛宕中出身)は中継ぎが主体。松下 海太(3年・172センチ67キロ・四万十町立十川中出身)は抑え・ロングリリーフで待機する。

 打撃陣は右大砲三門。3番・橋本 隆(3年・中堅手・178センチ74キロ・高知市立城東中出身)、4番・生島 隆成(2年・三塁手・183センチ78キロ・吹田リトルシニア<大阪府>出身)、5番・中村 陽呂(3年・左翼手・180センチ94キロ・香芝ボーイズ<奈良県>出身)と続くクリーンナップは、いずれもスタンドへ叩き込める力を備える。

 ただ、このブロックには2007年には室戸センバツベスト8、地元に戻り3年目を迎えた横川 恒雄監督の下で着々と環境を整える昨夏8強の梼原や、投打に能力の高い日林 仁成(3年・172センチ65キロ・右投右打・須崎市立久礼中出身)などがいる須崎工や、左打席からの一塁駆け抜けタイム3秒62という驚異的タイムを叩き出す又川 和斗(3年・中堅手・右投両打・167センチ63キロ・須崎市立須崎中出身)がリードオフマンの高知小津がいる。

 そして高知商へのリベンジに燃える春季県大会ベスト4の高知南もここ。県体育大会で8回表2対8から同点。さらに9回表に3点差を付けながら力尽きた時の涙は、エース・桑原 昂大(3年・177センチ65キロ・右投左打・高知県立高知南中出身)、長打力のある1番・中野 慎太郎(2年・左翼手・180センチ72キロ・右投右打・高知県立高知南中出身)をはじめ誰もが忘れていないはず。まずは1回戦屈指の好カードとなった高知小津戦を戦い抜き、夏23年ぶり2度目の4強、そしてその上を目指したい。

第3シード・高知中央ゾーン

 県タイトル二冠・春季四国大会でもベスト4高知中央の戦力充実度は「今季高知県No.1」といっても過言ではない。

投手陣は3枚。左腕ではエースナンバーを背負う技巧派・金城 知之(173センチ63キロ・八重瀬町立東風平中<沖縄県>出身)に、最速145キロ左腕・現在四国の高校球児でNPBドラフト指名への最短距離にいる日隈 ジュリアス(3年・184センチ74キロ・大矢ベースボール・クラブ<ヤングリーグ・沖縄県>出身)。加えて右の楠瀬 駿克(3年・167センチ70キロ・右投右打・南国マリナーズ<ヤングリーグ>出身)も春季四国大会準決勝新田(愛媛)戦では敗戦ながら、最速138キロをマークし2失点完投と好投した。

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[page_break:第2シード・高知ブロック]

 打線も気合のムードメーカー3番・上山 太我(3年・一塁手・175センチ87キロ・右投左打・北大阪ドラゴンズ<ヤングリーグ・大阪府>出身)、50メートル走6秒2の俊足も併せ持つ5番の麻生 涼(3年・右翼手・180センチ80キロ・右投左打・倉敷南ボーイズ<岡山県>出身)をはじめ、個々のストロングポイントは強烈。新田戦に続き、県体育大会・土佐塾戦での敗戦要因にもなった動くボールへの修練度さえ克服できれば、高知県11校目の甲子園出場校に名を連ねる可能性は十二分にある。

 主将1番・遊撃手の松下 向陽(3年・遊撃手・右投左打・169センチ59キロ・土佐中出身)を中心に守備から建て直しを図る土佐や、ポテンシャル高き選手がそろう室戸なども高知中央の好敵手であるが、このブロックは高知中央も含め「内なる敵」にいかに勝てるかがベスト4に昇れるポイントになりそうだ。

第2シード・高知ブロック

鶴井 拓人(高知)

 5月以降の上昇度は31チーム中1・2を争う高知。投手陣は大黒柱・鶴井 拓人(3年・左投左打・175センチ75キロ・門真クレイジーボーイズ<軟式・大阪府>出身)に加え、内原 佑真(3年・右投左打・169センチ73キロ・大月町立大月中出身)以下も好調を維持。5月の県体育大会後、さらに適材適所コンバートを施し、6月末の個人ノックで鍛え上げた守備も安定感がある。

 長打力こそないが、岡田 悠吾(二塁手・右投右打・164センチ65キロ・高知中出身)を主軸におく打線もつながりが出てきた。「いいと思います」。島田 達二監督の口癖にも自信が見え隠れする。

 ただ、ここは4ブロック中、最激戦ブロック。打線には定評のある高知中村、県体育大会では明徳義塾から鮮やかな先制3ランを放った3番・曽我 剛史(右翼手・3年・右投左打・168センチ62キロ・高知市立城北中出身)と、2年生好左腕・前田 日明(178センチ61キロ・高知市立大津中出身)がいる高知東など。いずれも曲者として知られる高知工高知農が対戦する1回戦も熱戦が期待できる。

 わずか10日間で4試合ないし5試合を駆け抜ける高知大会。参加校は少なくても日程上の厳しさは決して他の都道府県予選と劣るものではない。そして全国大会で高知県勢が好成績を過去に残してきた要因も、ここで甲子園での疑似体験ができるから。
「甲子園での試合後校歌斉唱目指して」。混戦が予想されるからこそ、志は高く持って。「高知県代表」の責任はそこにある。

(文=寺下 友徳

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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