Column

【春季関東大会総括】夏も躍進が期待できるレベルの高さを示した出場校たち

2015.05.21

 関東のトップレベルのチームが集結したといえる第67回春季関東地区高等学校野球大会。出場校それぞれ強みがあり、改めて関東はレベルが高いことを印象付けた大会となった。関東大会で勝ち進んだチームというのは隙がないチームが多い。優勝した浦和学院から順に上位進出チームを総括していきたい。

隙の無さを見せた浦和学院、急成長を見せた川越東


左から荒木 裕也選手、山崎 滉太選手、臺 浩卓選手、津田 翔希選手(浦和学院)

 優勝した浦和学院。緩急自在で、相手打者の狙いを外す投球に長けていた江口 奨理、2番手ながら決勝戦で2失点完投勝利を挙げた小倉 匡祐、打線では準決勝決勝で2番臺 浩卓決勝戦で当たりを見せた津田 翔希など多くの選手が活躍を見せた大会となった。浦和学院が魅せたのは、好投手に対しての対策。バットを短く持ったり、ファールで粘ったり、狙い球を逃さずフルスイングするなど、投手からすれば嫌な攻撃をするなと思わせる攻撃をスタメン全員が徹底できている。そこが怖いところだ。

 決勝戦終了後、森 士監督はすぐにミーティングを行い、閉会式が始まるまでクールダウンとなるランニング、体操を行っていた。試合だけではなく、準備から徹底している姿を見せた浦和学院。2年ぶりの夏の大会出場へ向けて、さらに力強いチームに仕上げていきそうだ。

 また準優勝川越東も、多くの選手を試しながらも決勝進出を果たしたことは夏へ向けての良い収穫となった。エース・高橋 佑樹だけではなく、右サイドの磯川 雄太が4試合中、3試合に登板し、好投。浅見 侑哉篠原 泰斗といった控え投手も好投を見せた。

 また相模原の好投手・宮崎 晃亮を打ち崩してコールド勝ちを見せるなど、打線も好調。秋では1番を打つ福岡 高輝が目立っていたが、一冬越えて多くの選手が成長を見せている。

打席の待ち方がゆったりとしていて、速球にも変化球にも対応ができる形作りができているのだ。また体格もだいぶたくましくなり、一冬越えて、体力的にも、技術的にもレベルアップ。川越東は元から個人のポテンシャルが高いチームではなかったが、一冬越えてこれほどまで打てる打線に変貌した取り組みは素晴らしい。

このページのトップへ

2015年度 春季高校野球大会 特設ページ
【ひとまとめ】2015年の全国各地の高校野球を占う!
[page_break:ベスト8まで残った学校も、レベルの高さを示した]

ベスト8まで残った学校も、レベルの高さを示した

小笠原 慎之介(東海大相模)

 ベスト4東海大相模吉田 凌小笠原 慎之介の2枚看板は、高いレベルで活躍するためにはまだ課題がある。だが夏へ向けて調子をピークに持っていくことができれば、攻略困難な2人であることは間違いない。ぜひ最後の夏で3年間の集大成を見せてほしい。だが打線は、駆け引きが優れ、実戦的な投球ができる左腕の対応に課題を残した。このタイプはどの高校も打ち崩すのは難しいが、かなり厳しいマークを受ける東海大相模にとって乗り越えなければならない課題だろう。

 また同じくベスト4健大高崎は、エース川井 智也以外の投手を起用するなど、夏へ向けて、戦力アップをしたい意思が感じられた。自慢の機動力については、発揮する場面が少ないのが気になったが、それでも各選手の打撃、守備ともに高いレベルに到達しており、やはり関東トップレベルのチームだという印象だった。2年連続の夏の甲子園出場へ向けて、今後攻守で仕上げていくだろう。

 またベスト8入りしたチームでは東海大甲府を破った(試合レポート佼成学園の躍進が目立った。エース・小玉 和樹の強弱をつけた投球は見事で、強力な東海大甲府打線を失策が絡みながらも4失点にとどめた。また自己最速の144キロを計測、春季東京都大会からさらにレベルアップしている。

 攻撃を見ると機動力を織り交ぜ、攻撃のバリエーションが増えており、最速143キロ右腕・菊地 大輝東海大甲府)を打ち崩した打撃は見事だった。課題としては失策絡みで失点をしていること。また梅田 大樹など2番手投手の底上げが課題になるだろう。

 そして日大三を破った(試合レポート作新学院は、上位下位の打線に切れ目がなく、非常に強力。2試合連続本塁打を放った小林 虎太郎(2年)など、毎年打てる打者が出てくるのがこのチームの強み。その破壊力は優勝した浦和学院にひけをとらないものがあった。また試合の流れを読んだ絶妙な継投、堅実な守備と、さすが名門校と思わせるチームであった。5年連続の夏の甲子園出場へ向けて順調に仕上がっているようだ。

 前橋育英は最速139キロ右腕・久保田 倫太郎、プロ注目の本格派右腕・松本 綾太の二枚看板に加え、打っては長打力があり、さらにムード-メーカーである井古田 拓巳、粘り打ちができる石田 玄太、俊足強肩の石川 和真と個性的な一面が揃った。夏で健大高崎との再戦が実現すれば、かなり熱い戦いになることが予想されそうだ。

 常総学院を破った(試合レポート國學院栃木も、ここ一番での集中打は脅威。投げては技巧派左腕・大垣 塁、140キロに迫る速球を投げ込む右サイド・渡邊 峻平と好選手が揃う。夏へ向けて攻守にレベルアップを果たしたい。

このページのトップへ

2015年度 春季高校野球大会 特設ページ
【ひとまとめ】2015年の全国各地の高校野球を占う!
[page_break:初戦敗退の東海大甲府も、実力は関東地区トップクラス]

初戦敗退の東海大甲府も、実力は関東地区トップクラス

菊地 大輝(東海大甲府)

 初戦で敗れたが、東海大甲府の総合力は、今大会の出場チームの中ではトップクラス。投手でいえば、エースの菊地 大輝は、常時140キロ~143キロを計測したスピードに加え、130キロ前半を計測する高速スライダー、120キロ後半のフォークをコントロール良く集める投球がずば抜けていた。ただ被安打が多く、打ち難さを追求することが夏へ向けての課題になるだろう。

 打線では、ミートセンスがあり、しぶとく俊足の1番角山 颯、巧打堅守の五十嵐 誉、軽快なフットワークを見せる二塁手・福武 修など打撃、守備ともに高いレベルに到達している。レギュラー選手全体の底上げを果たせば、2年連続夏の甲子園出場を狙えるチームだ。

 また前橋育英にサヨナラ負けしたとはいえ、投手、野手ともに技量が高い選手が揃った明秀学園日立(試合レポート)、また最速140キロ右腕・茶谷 健太、130キロ中盤の速球、キレのある変化球をコントロール良く投げ分けて抑える中尾 祐稀の2投手の好投が光った帝京三試合レポート)。

 そして圧倒的な長打力で東京を制した日大三は、投手の制球力、間合いの取り方など勝てる投手になるためのスキル、カバーリング、捕球など守備面で課題を残した。自慢の長打力で圧倒できる試合は、上に進むにつれて少なくなる。そういう時こそ守備が重要になる。全国制覇を目指すにはこの壁を乗り越えることが大事になるだろう。

 年々、レベルが高まっている関東地区。まとめると、関東大会には甲子園でも上位を狙えることを予感させるチームが多く登場していた。ぜひ夏では多くの関東勢が甲子園で結果を残すことに期待したい。

(文=河嶋 宗一

コラムに登場した高校の野球部訪問はこちらから!
明秀学園日立高等学校【前編】(2015年04月15日公開)
明秀学園日立高等学校【後編】(2015年04月16日公開)
前橋育英高等学校【前編】(2014年12月25日公開)
前橋育英高等学校【後編】(2014年12月26日公開)
高崎健康福祉大学高崎高等学校【前編】(2014年09月27日公開)
高崎健康福祉大学高崎高等学校【後編】(2014年12月14日公開)
高崎健康福祉大学高崎高等学校(2013年04月12日公開)
作新学院高等学校(2013年01月24日公開)
日本大学第三高等学校(2011年01月02日公開)

このページのトップへ

2015年度 春季高校野球大会 特設ページ
【ひとまとめ】2015年の全国各地の高校野球を占う!

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.17

仙台育英に”強気の”完投勝利したサウスポーに強力ライバル現る! 「心の緩みがあった」秋の悔しさでチーム内競争激化!【野球部訪問・東陵編②】

2024.04.17

昨秋は仙台育英に勝利も県4強止まり「サイン以上のことをやる野球」を極め甲子園目指す【野球部訪問・東陵編①】

2024.04.17

「慶應のやり方がいいとかじゃなく、野球界の今までの常識を疑ってかかってほしい」——元慶應高監督・上田誠さん【新連載『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.1】

2024.04.17

根尾 昂、一軍昇格へ準備着々! 盤石・中日投手陣に割って入れるか?

2024.04.17

【茨城】土浦日大と明秀日立が同ブロックに!選抜出場の常総学院は勝田工と対戦!<春季県大会組み合わせ>

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!

2024.04.15

四国IL・愛媛の羽野紀希が157キロを記録! 昨年は指名漏れを味わった右腕が急成長!

2024.04.12

【九州】エナジックは明豊と、春日は佐賀北と対戦<春季地区大会組み合わせ>

2024.04.12

【東京】ベスト8をかけ激突!関東一、帝京、早稲田実業などが登場<春季都大会>

2024.04.09

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード