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【春季大会総括】春の成果と反省を胸に、いざ集大成の夏へ ~2015年春季・四国地区県大会・四国大会を振り返る~

2015.05.16

 英明の四国大会連覇により、センバツ・各県春季大会から続いた春の四国地区公式戦シーズンは一段落を迎えた。「高校野球100年」の記念すべき夏へ向け、四国4県では昨秋からどのような化学変化が見られたのか?今回は、四国4県における春の状況を振り返りつつ、夏に向かっての四国各県先行情報も掲載していきたい。

失敗を反省し、力に変えたものが勝ち抜いた2015年春

優勝旗を受け取る英明・冨田 勝貴主将

 管理計画を作成(Plan)し、その計画を組織的に実行(Do)し、その結果を内部で点検(Check)し、不都合な点を是正(Action)したうえでさらに、元の計画に反映させていく……。いわゆる「PDCAサイクル」である。教育の一環である高校野球に限らず、成功や失敗を次の成功につなげていくためには、絶対に必要な考え方である。

 2015年・春の四国高校野球は正にこの「PDCAサイクル」ができたチームが例外なく上位進出を果たした。まずセンバツでは昨秋四国大会初戦敗退を踏まえ、「PLAN」を綿密に立てた松山東初のセンバツ1勝今治西もこれまで弱さを指摘された打撃面を冬に強化した結果、6年ぶりのセンバツ1勝松山東を下して出場権を得た(試合レポート春季四国大会でもベスト4に進んだ。

 センバツ昨秋四国大会優勝チームの片鱗すら見せられなかった英明もそう。短期間で変化球対応や守備強化を果たし、春季四国大会では他を全く寄せ付けない戦いで初出場初優勝と同時に、史上9校目の四国大会連覇を達成している。

 春季四国大会準優勝新田も、昨秋県大会準決勝・3位決定戦で連敗を喫した原因となったメンタル面と、選手層の強化に成功し春は県大会優勝。同大会ベスト4高知中央昨秋新田と全く同じ経過をたどったが、は決勝戦で明徳義塾を破り初優勝。8月の新人戦に続き2つ目の県内タイトルを手にし、明徳義塾高知の2強に完全に肩を並べた。

 さらに言えば、春の徳島県大会優勝の徳島商昨秋川島に、同じく香川県大会優勝の丸亀城西昨秋坂出にいずれも初戦敗退したどん底から上がってきたチーム。昨秋徳島県大会2回戦敗退から初の四国大会出場をつかんだ徳島城北も含め、失敗を反省し力に変えたものたちが妥当な結果を残した春であった。

名門・甲子園常連校ら「春に辛酸を舐めたもの」の巻き返しは?

 その一方で、春季大会では昨秋四国大会出場校の不振も各県でみられた。

 香川県では昨秋県大会準優勝の観音寺中央・3位の志度がそろって初戦敗退。両校ともにエースが故障で登板できないアクシデントが生じたとはいえ、彼らは丸亀城西観音寺中央を初戦で破り、県大会準優勝を果たした高松南などが示した「常に謙虚な姿勢」を参考にすべきだろう。

 高知県はさらにこの現象が顕著に。高知商が準々決勝で高知中央にコールド負けで昨秋県3位決定戦のリベンジを果たされると、高知明徳義塾に準決勝で完敗。その明徳義塾四国大会では投手陣が崩壊し、英明に成す術なく敗れた(試合レポート)。近年、四国の高校野球を常にけん引している高知県勢であるが、高知中央を除けば秋から春への成長は鈍化していると言わざるをえない。

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2015年度 春季高校野球大会 特設ページ
【ひとまとめ】2015年の全国各地の高校野球を占う!
[page_break:四国各地で芽吹く「夏へ向けての日々進化」]

 愛媛県では昨秋3位の松山聖陵は準々決勝で昨夏甲子園経験者が多数残る愛媛小松に敗れ、その愛媛小松も準決勝では新田に力なく2対6で点差以上の完敗。西条新田に打ち負け、県大会初戦で姿を消すことに。昨秋南予ブロック大会初戦敗退から春県大会ベスト4まで駆け上がった野村や3試合連続で1点差を制し、県大会決勝戦に進出した宇和島東など、南予勢の健闘が光った一方で、いささか寂しい内容であった。

 徳島県では昨秋県大会優勝の徳島城南、準優勝の川島・同3位の鳴門が全てベスト8止まり。川島鳴門昨秋から課題となっていた打線強化。徳島城南は2番手投手の育成が果たせぬまま春を迎えてしまった印象が拭えない。

 加えて徳島県ではこの4月からは野球部監督が大異動している。主なものをあげても徳島城北の福井 健太監督は徳島科学技術へ。徳島科学技術中山 寿人監督は新野へ。 徳島城南の森 恭仁監督は鳴門渦潮に異動し、その徳島城南には徳島北島 一輝監督が就任。徳島北には脇町住吉 圭吾監督が異動となり、脇町には阿波馬場 潤一郎監督が。これら当該校はチームの再構築も大きなミッションとなりそうだ。

 ただ、春の失敗を夏に活かした例も過去、枚挙にいとまがない。「春に辛酸を舐めたものたち」の巻き返しにも、今後は期待したいところだ。

四国各地で芽吹く「夏へ向けての日々進化」

初戦敗退した明徳義塾。1年生の西浦 颯大選手を中心に新戦力の台頭が光った

 こうして今回は四国地区における「2015年・春」の公式戦を通じて見えたものを、あえて関係者コメントを引用せず振り返ってきたが、実は夏に向けての公式戦はまだ終わっていない。

 高知県では「平成27年度高知県高等学校体育大会・硬式野球の部」が5月23日(土)から25日(月)の日程(雨天順延・未消化分は25日(月)で打ち切り)で開催。この大会は現在、明徳義塾の13ポイントを筆頭に、高知中央11ポイント、高知11ポイント、高知商7ポイント、高知南6ポイント、土佐6ポイント、以下5ポイントの高知東岡豊宿毛工高知西、4ポイントの室戸、3ポイントの高知小津須崎土佐塾までが権利を有する夏のシード権(第4シードまで)を最終決定する場となる。

 さらにその後も高知県は6月7日(日)には「高野連特別招待試合」として大阪桐蔭(大阪)に明徳義塾高知商が挑戦。21日にも「高野連育成招待試合」として鳴門(徳島)と高知東、高知中村が対戦することが決定している。

 なお、昨年「高野連特別招待試合」で明徳義塾と共に済美(愛媛)と対戦した高知は、今年の同時期に高知OBの本多 利治監督が率いる春日部共栄(埼玉)に招待遠征し、藤桐祭(文化祭)の一行事として2試合を実施。クリーム色にえんじの「KYOEI」「KOCHI」対決は大きな話題となりそうだ。

 徳島県でも公式戦が残っている。6月5日(金)から8日(月)まで「平成27年度総体協賛ブロック大会」を西部・中部A・中部B・南部の4ブロックに分かれて開催。この大会は夏のシード権には関係しないものの、有望1年生の起用など、夏に向けて様々なテストケースを見るとことができる大会である。

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2015年度 春季高校野球大会 特設ページ
【ひとまとめ】2015年の全国各地の高校野球を占う!
[page_break:第97回全国高等学校野球選手権・四国4県大会概要]

 香川県では昨年センバツ準優勝履正社(大阪)を招いての高野連招待試合が予定されている。6月13日(土)には春季県大会3位の三本松と同大会準優勝の高松南、翌14日(日)には春季県大会優勝丸亀城西春季四国大会優勝英明がそれぞれ1試合を実施。特に英明履正社の対戦は、現在の四国地区高校野球の実力を図る上でも重要な一戦だ。

 そして愛媛県。例年通り高野連主催による大会・招待試合などの予定は組まれていないが、各校は様々な状況・相手を想定した練習試合で腕を磨く。

 実際、ここ数週間における四国各校の練習試合を見ると、1年生が加わり、競争が激化したことにより春の公式戦からまた変化しているチーム、成長している個人が多数みられる。驚きを感じる選手やチームも少なくない。その部分で、まだ成長する余地は十分残されていると言ってよい。

 最後にすでにほぼ固まりつつある「第97回全国高等学校野球選手権大会」四国4県大会のシード順位や日程を記しておく。泣いても笑っても高校野球の集大成を見せる場まではあと2ヶ月足らず。各校の選手たちには、望んでもその場に立てない選手たちや、想いを託す友人・家族・地域の方々、そして彼らのプレーから元気を頂く多くの皆さんのためにも、ぜひ悔いなき日々を過ごしてほしい。

第97回全国高等学校野球選手権・四国4県大会概要

<愛媛大会>
第1シード:今治西 第2シード:新田 第3シード:松山東 第4シード:松山聖陵
抽選会 6月21日(日)
開会式 7月11日(土)[stadium]坊っちゃんスタジアム[/stadium]
*大会は[stadium]坊っちゃんスタジアム[/stadium]、[stadium]西条市ひうち球場[/stadium]、[stadium]今治市営球場[/stadium]、[stadium]宇和島市営丸山球場[/stadium]の4か所で開催
決勝戦 7月25日(土)[stadium]坊っちゃんスタジアム[/stadium]

<香川大会>
第1シード:英明 第2シード:丸亀城西 第3シード:高松南 第4シード:三本松
抽選会 6月30日(火)
開会式 7月11日(土)[stadium]レクザムスタジアム[/stadium]
*大会は[stadium]レクザムスタジアム[/stadium]1か所で開催
決勝戦 7月26日(日)[stadium]レクザムスタジアム[/stadium]

<徳島大会>
第1シード:徳島城南 第2シード:川島 第3シード:鳴門 第4シード:徳島商
抽選会 6月29日(月)
開会式 7月11日(土)[stadium]オロナミンC球場[/stadium]
*大会は[stadium]オロナミンC球場[/stadium]1か所で開催
決勝戦 7月26日(日)[stadium]オロナミンC球場[/stadium]

<高知大会>
明徳義塾高知中央の第3シード以内、高知の第4シード以内は確定。最終決定は県総体後
抽選会 7月4日(土)
開会式 7月18日(日)[stadium]高知県立春野運動公園野球場[/stadium]
*大会は[stadium]高知県立春野運動公園野球場[/stadium]、[stadium]高知市立野球場[/stadium]の2か所で開催
決勝戦 7月27日(月)[stadium]高知県立春野運動公園野球場[/stadium]

(文=寺下 友徳

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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