【春季大会総括】新興勢力が台頭した神奈川春季県大会!
東海大相模の優勝で幕が閉じた今年の神奈川春季大会。もう各校、夏へ向けて動き出している。今年は公立校勢の台頭が光った大会を総括。主に活躍が光ったチームを中心にピックアップしていく。
勝利と育成を両立しながら優勝を決めた東海大相模
小笠原慎之介(東海大相模)
優勝した東海大相模。プロ注目の吉田凌、小笠原慎之介の2枚エースに加え、野手では、しつこく、隙がないプレーを見せる杉崎成輝、抜群の身体能力を生かし、走攻守で高いパフォーマンスを見せる豊田寛など、これほど多くの選手を揃える。
周囲の期待はかなり高いものがあったが、秋はベスト4で敗れ、選抜を逃すなど、かなり悔しい思いはあった。夏の甲子園を目標に切り替えた東海大相模ナインは、育成と勝利をテーマに、吉田、小笠原以外の投手を起用。決勝戦で2年生右腕・北村朋也、準々決勝まで2年生左腕・山田 啓太を起用し、育成を行ってきた。また小笠原は慶應義塾戦で最速145キロを計測するなど、8.1回無失点の好投を見せると、吉田はカーブ、縦スライダーを駆使し、桐光学園打線に14奪三振を記録するなど、県内トップクラスの強豪相手に結果を残している。打線では、秋、本来のパフォーマンスが発揮できなかった豊田が場外ホームランを放つなど、レギュラー陣に着実な成長が見せてきた。
関東大会ではどんなテーマで試合に臨んでいくのか。また選手たちはより成長を見せていくのか、楽しみにしていきたい。
相模原は、私学に負けない打ち勝つチームをテーマにブロック予選はすべてコールドで勝ち上がると、決勝戦まで5得点以上を奪った攻撃力を見せて勝ち上がってきた。また私学の強豪にも勝てる要因としてエース・宮崎 晃亮の成長が大きい。140キロ前後まで速くなったのはもちろん、内外角のコントロールが優れ、不調時でも試合を作れるようになった。立ち居振る舞いから、精神的に大きく成長し、宮崎がマウンドに登れば安心と思わせるほどの存在感があった。
気になったのは守備力である。ミスで失点する場面が見られた。ミスによる失点は試合に響きやすいと多くの指導者は語る。ミスを気にせずガンガン振りに行く相模原打線は確かに心地よい。だがその打線も、緊迫した場面になるほど発揮がしにくい。その課題を乗り越えることができるか。
ベスト4の桐光学園は、バットコントロールが良く、さらに一発を兼ね備えたトップバッター・大工原 壱成、初球から積極的に振りに行き、バットコントロールの良さが光る恩地偉仁、長打力のある中川颯の3人の潜在能力はかなりのものがある。また新戦力として逢坂 倫充が台頭。夏ではさらに存在感を示していきそうだ。
神奈川橘は、打線を強化してきたように、肥後洋輝、福田耕平とした打線の破壊力はとても公立校とは思えない。エースの寒水 晃大のコーナーワークがたけた投球も見事。やはり課題は守備。守備力を高めて、安定した戦いができるようになってほしい。
やはり怖いのはノーシードの横浜
打線を引っ張る三河聖央(横浜)
ベスト8以下では、安定した投手陣が崩れ、敗退した平塚学園だが、伝統の守備力、機動力は安定。強打のチームを抑える投球術が問われてくる。日大藤沢も、打線の力は「あるが、強打のチームに対抗できる守備力が不可欠になりそうだ。
優勝した東海大相模に4対0と接戦を演じた慶應義塾は、エース津留崎大成が19奪三振を挙げるなど、1年生から注目されていた大器がようやく本領発揮しつつある。
ベスト16以下を挙げると、最速146キロの速球を武器にする大型右腕・望月惇志(横浜創学館)はまだ強豪校を抑えられるほどの引き出しが少ない。夏へ向けてプラスアルファが出てくれば面白いだろう。
横浜隼人は、4番大堀純一を中心に体格が優れ、長打力ある選手もそろっている。ポテンシャルは高いが、まだそれを生かし切れていない選手が多く、守備でもミスが目立ち、多くの課題が目立った大会となった。夏の神奈川は打線でカバーできるほど甘くない。まず一つ一つのプレーを確実にこなし、試合運びができるチームへ成長することができるか注目をしていきたい。桐蔭学園は本格派右腕・田村海人が台頭。140キロ台を超える速球を武器に横浜打線を抑えた投球は見事であった。
ノーシードでスタートする学校でやはり警戒しなければならないのは、横浜である。上位に進出した学校と比較しても、投打の総合力では、今年の神奈川でもトップクラス。投手陣では、最速139キロ右腕・北山比呂、長身からキレのある速球を投げ込む春日井静斗、桐蔭学園戦で好投した石川達也、ケガから復帰を期待したい藤平尚真など能力が高い投手陣が揃い、充実度という点では、近年でも一番かもしれない。打線も、俊足であり、好打のセンター・相川天河、勝負強い3番打者・公家響、シャープな打撃から鋭い打球を放つ三河聖央など守備力が高い選手が揃っている。
序盤から好カードが多かったが、思わぬ大差になることが多かった。ただ夏になると、力関係というのは大きく変わってくるものなので、どんな展開になるのか楽しみなものがある。今回は相模原・神奈川橘と公立勢2校の躍進が多くの公立校の目標となる戦いぶりとして大きく足跡を残した。それは今後の神奈川の発展を考えると、有意義な春季大会であったことは間違いない。
(文・河嶋 宗一)