【春季四国大会展望】坊っちゃんスタジアムで開催される「春の四国頂上決戦」を制するのは?
躍進の 夏へ向かって 坊っちゃんで 球児戦う 春の風かな
今年の四国大会は愛媛県松山市で開催される。夏、躍進を誓おうと懸命に闘う球児、また今大会の見所を紹介していきたい。
坊っちゃんスタジアムに帰ってきた「春の四国頂上決戦」
藤原 睦来(今治西)
「球受ける 極意は 風の柳かな」
「草茂み ベースボールの 道白し」
試合前に正岡 子規の2句を明徳義塾・馬淵 史郎監督が詠み、その謎かけを岩上 昌由監督<現:岡山理科大付属(岡山)コーチ)率いる香川西が初優勝で応えた2011年5月5日から4年。再び愛媛県松山市の[stadium]坊っちゃんスタジアム[/stadium]に春の四国頂上決戦が帰ってきた。
各県2校ずつの計8校が参加し、2015年5月2日(土)~4日(月・祝)の3日間連続開催で行われる「第68回(平成27年度)春季四国地区高等学校野球大会」。今回の出場校は以下の通りである。
<愛媛県>
1位校 新田 (10年ぶり5度目の出場)
*春季愛媛県大会優勝(14年ぶり7度目)・四国大会順位決定戦勝利
2位校 今治西(3年連続15度目の出場)
春季四国大会過去4回優勝
*センバツ出場(2年連続14度目)・四国大会代表決定戦(vs松山東)勝利・四国大会順位決定戦敗戦
<高知県>
1位校 高知中央 (10年ぶり2度目の出場)
*春季高知県大会優勝(初優勝)
2位校 明徳義塾 (2年連続20度目の出場)
春季四国大会過去9回優勝(前回大会優勝)
9回優勝は高知(高知)に並びトップタイ
*春季高知県大会準優勝
<徳島県>
1位校 徳島商(6年ぶり25度目の出場)
春季四国大会過去7回優勝
*春季徳島県大会優勝(10年ぶり18度目の優勝)
2位校 徳島城北 (初出場)
*春季徳島県大会準優勝
<香川県>
1位校 英明 (初出場)
*センバツ出場(初出場)・四国大会順位決定戦勝利
2位校 丸亀城西(9年ぶり8度目)
春季四国大会第22回大会優勝<丸亀商時代>
*春季香川県大会優勝(9年ぶり6度目)・四国大会順位決定戦敗戦
抽選会は大会開幕前日の5月1日(金)。1位校と2位校の組み合わせで1回戦が組まれるが、ここでは簡単に各校の戦力を分析しつつ、大会のみどころを探っていく。
最大の注目は「好投手たちの競演」
田中 寛大(英明)
今大会は様々なタイプの好投手がそろった感が強い。まず「剛球系」。右腕の代表格はセンバツ後に約2年ぶりに投手に復帰した今治西・藤原 睦来(3年)。現状「立ち投げ」状態であっても130キロ中盤をマークする重いストレートは、豊かな海と山に囲まれた大三島で育まれた身体能力の賜物である。
一方、左腕の横綱格は春季高知県大会決勝戦で明徳義塾の壁を崩し、高知中央を初優勝に導いた沖縄県育ちの左腕・日隈 ジュリアス(3年)。昨秋は184センチ74キロの恵まれた身体を使いこなせない場面が目立ったが、今春は格段に制球力も上がり球速も最速142キロをマーク。一躍高卒ドラフト候補に浮上する勢いだ。
加えて右腕ではその高知県大会決勝戦で「最速145キロ」を叩き出し、昨秋四国大会前後から悩まされ続けてきた右ヒジ不調脱出への光明を示した明徳義塾の國光 瑛人(2年・178センチ71キロ)や、この冬、外部トレーナー・稲垣 宗員さんと取り組んだ「尻を安定させて、体重を安定させる」チームトレーニングの結果、最速138キロの剛球だけでなく変化球の安定感が増した笠井 康平(179センチ78キロ・右投右打・徳島市川内中出身)が注目株。
左腕では英明勢。完璧だった序盤から一転、中盤以降崩れたセンバツ・大曲工(秋田)戦(試合レポート)のリベンジに燃える田中 寛大(3年)はもちろん、四国大会順位決定戦で久々の公式戦先発マウンドも2回3失点と精彩を欠いた中西 幸汰(3年)も、1年秋四国大会で好投した[stadium]坊っちゃんスタジアム[/stadium]マウンドで復調のきっかけをつかみたいところだろう。
そして徳島商・丸亀城西のエースはいずれも「右サイド」。徳島商の育田 佑輝(3年)はテンポよくストレート・シンカーをはじめとする変化球を低めに集める軟投派タイプ。対して丸亀城西の山上 代貴(3年・171センチ60キロ)は英明との順位決定戦こそ、2回3分の2で6失点(自責点も6)と打ち込まれたが、それまでは右打者の内角攻めを全く苦にしない最速135キロのストレートやツーシームで6試合49回失点3自責点1と驚異的な安定感を残した。
新田で秋のエース左腕・河野 隼人(3年・左投左打・174センチ76キロ・松山ボーイズ出身)を凌ぐ好投を見せた田中 蓮(2年・176センチ65キロ・右投右打・松山市立小野中出身)も、内角低めの使い方が巧い右腕である。
打撃陣の奮起はなるか?
平野 善常(徳島商)
このように好投手たちがそろった反面、厳しい言い方をすれば打撃陣はやや物足りない。今治西では投手転向後も藤原が依然4番を張り、英明では田中が丸亀城西との順位決定戦で左翼手先発ながら「4番」に入ったことが、その深刻さを如実に表わしている。
高知中央であれば、春季県大会2本塁打含む18打数7安打の3番・上山 太我(3年・一塁手)、同大会5番・麻生 涼(3年・右翼手)の左打者両名。明徳義塾であれば、春から主将に就任した3番・佐田 涼介(3年・右翼手)、リードに課題はあるが春季大会打数安打と打撃はピカイチの4番・古川 卓人(3年)の右打者両名など、決してタレントがいないわけではない。
他にも徳島商には抜群の脚力を持つ平野 善常(3年)、スイングスピードとインパクトの強さは上級生と全く引けを取らない齋藤 広夢(2年・一塁手・右投左打・177センチ75キロ・徳島淞南<ヤングリーグ>出身)が控える。
新田も俊足堅守の1番・三上 幹太(2年・遊撃手・右投右打・165センチ65キロ・愛媛ボーイズ出身)から始まり、3番以下、眞田 康弘(2年・中堅手・右投左打・172センチ65キロ・松山ボーイズ出身)・泉 政斗(一塁手・2年・178センチ74キロ・松山中央ボーイズ出身)、河野、髙見 祐樹(右翼手・3年・左投左打・宇和島市立城南中出身)と続く左打線はいずれも強力。英明も四国大会順位決定戦では7イニング16安打10得点と打線が復調の兆しを示した。
ただ、真価が問われるのは正にこの舞台。打撃陣には好投手たち相手に結果以上に内容の伴ったスイングや守備での奮起を促したい。
正岡 子規・近藤 兵太郎両氏を驚かす熱戦に期待!
ちなみに今大会は他の地区大会同様に延長13回に入った場合、決勝戦を除き無死一・二塁からタイブレークを採用。愛媛県・香川県で採用された春季県大会では東予地区予選・丹原対弓削商船(延長12回1対1・延長13回7対2で丹原の勝利)のみに留まった同制度を採用する機会が訪れるかも注目点となる。
準決勝・決勝戦は愛媛CATVをキー局にケーブルテレビ四国4県同時生中継が組まれるなど、「春」とはいえ大会の露出度は極めて高い。当然、出場8校には4県代表計1勝4敗に終わった昨夏甲子園の苦い記憶を吹き飛ばすさきがけとなる質の高さも求められる。
彼らにはその期待に応えるべく、まずは貴重な機会を夏につなげる全力プレーを。その結果として[stadium]坊っちゃんスタジアム[/stadium]前で石碑となって見つめる「野球」の名付け親・正岡 子規。映画「KANO」のモデルであり、松山商・嘉義農林・新田監督として日本と台湾の野球をつないだ近藤 兵太郎両氏の目を驚かす熱戦を、私たちも期待しよう。
(文=寺下 友徳)