Column

2015年の高校野球を占う【愛媛編】 『安樂時代』後、先端を走るのはどの学校か?

2015.02.25

センバツ出場の今治西、松山東に加え、昨夏選手権代表・小松などが横一線
「安樂時代」後、先端を走るのはどの学校か?

 2年余り、済美を除く58校すべてが、最速157キロ右腕・安樂 智大済美・現:東北楽天)2013年インタビュー 関連コラムを打ち砕くことを目標にしてきた「安樂時代」が終わり、新時代を迎えた2014年秋以降の愛媛県高校野球。昨秋県大会優勝の今治西四国大会準優勝を認められ2年連続14度目、さらに夏秋連続県大会準優勝の松山東が21世紀枠で実に82年ぶり2度目となるセンバツ出場を決めたことにより、新たな風が県内に吹き込もうとしている。

 しかし、昨夏愛媛代表の愛媛小松をはじめ、他の各校も決して両校の独走を許すことはないはず。では、2015年・愛媛県高校野球の勢力図はいかなるものとなるのだろうか?

試合ごとに力を上げた今治西、松山東の「センバツ組」

杉内 洸貴(今治西)

 昨年、秋を迎えた時点でこの両校がセンバツの晴れ舞台に立つことを誰が予想できただろうか。昨秋今治西松山東が試合ごとに示した成長は間違いなく特筆に値するものである。

 今治西はエースに予定していた秋川 優史(2年)の右肩・右ヒジ負傷により、遊撃手から急遽エースナンバーを背負った杉内 洸貴(2年)が公式戦8試合・70回3分の1で与四死球13・防御率1.57と奮闘。打線も県大会準決勝・決勝、四国大会準決勝と3度の決勝打を放った4番中堅手の藤原 睦来(2年・主将)はじめ、各人が役割を理解した動きが光った。
 

 一方の松山東は旧チームからのエース・亀岡 優樹(2年)の宝刀ツーシームを軸にした安定感に加え、亀岡とバッテリーを組む4番・米田 圭佑(2年)の強烈なキャプテンシーに呼応した「チーム力」が長らく閉ざされた甲子園への扉を開いた。

 両校はセンバツ後、4月11日(土)に[stadium]西条ひうち球場[/stadium]で開催される「春季四国大会出場校決定戦」で激突。両校とも夏の愛媛大会シード権獲得がほぼ確実視される中、この試合では全国強豪との対戦で得たものをいかに表現できるかに注目が集まりそうだ。

今回のコラムに登場した学校の野球部訪問・野球部紹介は以下から!
済美高等学校 / 県立松山北高等学校(2010年07月07日公開)
済美高等学校(2011年07月11日公開)
県立松山東高等学校【前編】(2014年12月01日公開)
県立松山東高等学校【後編】(2014年12月02日公開)
21世紀枠 各地区候補 紹介!松山東(2014年12月23日公開)
県立今治西高等学校(2014年03月24日公開)

2015年度 春季高校野球大会 特設ページ
【ひとまとめ】2015年の全国各地の高校野球を占う!

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[page_break:秋のリベンジに燃える小松、昨秋四国大会出場の松山聖陵 / 逸材が揃う東予地区]

秋のリベンジに燃える小松、昨秋四国大会出場の松山聖陵

大上 拓真(小松)

 昨夏に初の甲子園出場を果たし、昨秋も優勝を本命視されていた愛媛小松は準々決勝で松山東夏決勝の返り討ちを食らい敗戦。「油断があった」選手たちの悔恨は松山東センバツ出場でさらに鮮明なものとなっている。

 夏の甲子園山形中央石川 直也(現:北海道日本ハム)から3打数3安打2打点。秋も各校から徹底マークを受けた4番・捕手の大上 拓真(2年)や最速136キロ右腕の早柏 佑至(2年)など、タレントでは県内トップクラス。2年連続夏の甲子園出場は十分射程内にある。

 昨秋県3位で四国大会に出場し、観音寺中央(香川)から1勝、明徳義塾(高知)とも接戦を演じた松山聖陵もタレントでは負けてはいない。
1番・右翼手の照屋 雄大(2年・主将)。この数か月で球速を10キロ近く上げ、最速136キロまで伸ばした努力家右腕エース・日野 凌太(2年)。

 ナイジェリア人の父と火の国熊本の母の血を受け継ぐ、アドゥワ 誠(1年)は192センチの長身から角度ある速球を投げ込む。今は「心の部分から鍛え直す」から取り組んでいる。ちなみに兄は九州国際大附のアドゥワ 大選手である。荷川取 秀明監督の指導によりどこまで選手たちが昇華できるかが、悲願の甲子園初出場への鍵となる。

逸材が揃う東予地区

 例年以上に実力差が接近している2015年。先に触れた4校以外にも愛媛県内各地で様々な学校が逆襲への準備を整えている。

 東予地区からあげていくと、高校通算20本塁打・185センチの大型遊撃手・堀 優斗(2年)を擁する西条が筆頭格となる。堀の他にも実力派をそろえながら秋はまさかの東予地区予選初戦敗退に終わった彼ら。10月中旬の「西条祭り」中の休校期間を利用して行われた短期合宿において、選手主導による「ドラフト会議」を経ての4チーム紅白対抗戦を通じ、主観と客観の両面から自らを見つめ直した成果が、春季県大会では求められる。

 また、川之江では168センチの小兵ながら力のあるストレートを投ずる1年生の糸川 亮太新居浜南では180センチ79キロの堂々たる体格から重いボールでねじ伏せる新居浜南中村 祐太(2年・主将)、東予地区1年生大会で1試合3本塁打を放ったパワーを誇る山岡 昂平伯方1年)など、好右腕たちにも注目。昨秋県大会1回戦今治西と延長13回の激闘を展開した今治北昨秋県大会ベスト8の新居浜高専や、秋は西条を破った丹原や愛媛三島、新居浜東なども夏までにさらなる成長が期待できる。

今回のコラムに登場した学校の野球部訪問は以下から!
県立松山商業高等学校(2011年01月14日公開)
県立松山商業高等学校(2012年01月12日公開)
県立東温高等学校(2011年08月30日公開)

2015年度 春季高校野球大会 特設ページ
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[page_break:逆襲へ準備整える各校、激戦必至の春季大会]

逆襲へ準備整える各校、激戦必至の春季大会

河野 隼人(新田)

 中予地区強豪の筆頭は昨秋2度あった四国大会出場のチャンスを逸した新田。左腕エース・4番・主将の河野 隼人(2年)を一塁手の泉 政斗(1年)、中堅手の眞田 康弘(1年)が前後で固めるスイング力あふれる左打者を軸に、意外にもまだない夏の甲子園出場を果たしたい。

 さらに中予地区では1年生左腕・渡邉 潤や、1年夏からレギュラーの巧左打者・平田 伊吹(2年・主将・中堅手)など、名将・澤田 勝彦監督の下で着実に「個」を伸ばしている愛媛北条や、選手層の厚さで昨秋県大会1回戦では松山東を苦しめた松山北昨夏3回戦安樂 智大を打ち砕いた青野 凌太(二塁手・2年)も健在な東温。名門・松山商も優勝戦線に絡める力を持っている。

 南予地区では束になって戦う力に優れ、昨年11月23日に行われた「2014愛媛県野球フェスティバル・大学高校野球交流戦」では、愛媛県大学野球選抜チームを瀬戸際まで追い込んだ大洲が頭1つ抜きんでる。

 まずはチーム整備が待たれる帝京第五や、松本 一輝宮内 拓人(共に2年)の180センチバッテリーで勝負する八幡浜。柔らかい前さばきで高校通算本塁打を20にまで伸ばしている大器・田中 力(2年・主将)をはじめ、大型選手が数多い野村伊勢田 健太清水 陽介の2年生右腕2枚が自慢の宇和島東。さらに身体能力的には県内トップクラスの小田原 将之が三塁手を守る南宇和がここに続く。

 ちなみに春季県大会は2月21日(土)に抽選会。東予・南予地区は3月21日(土)から3日間、中予地区は3月23日(月)からの3日間予選で県大会出場16校を選出し、3月29日(日)からの4日間<3月31日(火)は休養日>で、優勝を争う。

 そして優勝校は5月2日(土)から3連戦で[stadium]坊っちゃんスタジアム[/stadium]において開催される春季四国大会に出場。冒頭に触れた「四国大会代表校決定戦」今治西vs松山東の勝者と4月12日(日)・[stadium]宇和島市営丸山球場[/stadium]において、四国大会出場順位決定戦を戦うことになる。

 ここに1年間対外試合禁止期間中の「済美」の名がないのは本当に残念であるが、まずは激戦必至の同大会で56校が冬の鍛錬をどのような形でグラウンドに出せるか。ここにセンバツ帰りの今治西松山東がいかに刺激を与えられるか。安樂時代後の先端を走る者たちの姿をしっかりと見ていきたい。

(文・寺下 友徳

今回のコラムに登場した学校の野球部訪問は以下から!
松山聖陵高等学校(2014年07月04日公開)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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