2015年の高校野球を占う【神奈川編】 平塚学園、東海大相模などディフェンス重視のチームが第一勢力
2年ぶりの選抜出場が叶わなかった神奈川県。それでも、一冬超えて、力を伸ばしてきたチームは多い。今回は、夏の神奈川で、上位進出の可能性が高い有力校を紹介。今年はディフェンス重視のチームが第一勢力となりそうだ。
絶対校がなく、今年も混戦に
高田 孝一(平塚学園)
今年は絶対的な力量を持ったチームは、昨秋の時点ではなかった。ただ高校生は一冬で大きく変わっていくので、勢力図が大きく変動する可能性がある。まずは昨秋の振り返りから行いたい。(2014年秋季神奈川県大会データ)
優勝した平塚学園(試合レポート)は、エース高田 孝一が昨年、1年生ながら決勝に導く好投。135キロ前後と突出したスピードはないが、両サイドへ投げ分ける制球力の高さ、変化球のキレの良さが光り、一冬超えてどこまでレベルアップを遂げることができるかが注目だ。また内外野ともに守備力が高く、状況判断に長けた走塁も魅力。控え投手の底上げを果たし、夏まで優勝候補に挙がる存在になるようさらに総合力を高めていきたい。
桐光学園は、突出した技量を持った選手は少ないが、試合運びが上手い。関東大会優勝(2014年秋季関東大会データ)の浦和学院相手に0対1の接戦(試合レポート)を演じた。この試合は、桐光学園の強みが最大限に生きた展開となったが、全国出場するには個々のレベルアップがさらに求められる。
その中でも、期待したいのが4番を打つ中川颯。中川はアンダースローで、投球が上手い。さらに、左打者としても、角度ある打球を飛ばすことができる。また技巧派左腕・恩地 偉仁がいるが、中川、恩地以外の投手が台頭すると戦力に厚みが増していきそうだ。投手陣を束ねる強肩捕手・大坪 亮介の成長に期待したい。
ベスト4に終わった東海大相模。選抜出場校と比べても、戦力に厚みがある。ドラフト候補に挙がる吉田 凌、小笠原 慎之介の両投手がいて、走攻守全て揃ったショートストップ・杉崎 成輝、大型外野手・豊田 寛とタレント揃いだ。相手の隙を逃さない積極的な走塁、堅い守備と総合力は今年の神奈川でもナンバーワンだろう。あとは準決勝の平塚学園戦(試合レポート)では、あと1本が出ずに敗れただけに、競った試合をモノにできる勝負強さが欲しい。
4強入りした県相模原は、エース宮崎 晃亮が投打でチームを引っ張る。今年も私学に対抗するチームに成長しそうだ。
今回のコラムに登場した学校の野球部訪問は以下から!
向上高等学校(2012年01月28日公開)
向上高等学校(2014年05月20日公開)
横浜市立南高等学校(2014年06月23日公開)
上位4校を脅かす存在になりそうな慶應義塾、横浜隼人
高橋 伶介(慶應義塾)
8強の慶應義塾は本格派・津留崎 大成、右サイドで打たせて取る投球に長けた高橋 伶介と二枚看板がいて、さらに柳町 達、木村 洋介など長打力ある選手が揃う。投打の総合力が高く、打線も一冬超えて、打撃力も格段に増してくるので、各校からすればかなり怖い存在になる。
夏4強、秋でも8強入りした横浜隼人は、強打者・山口 直也を中心に今年も強力打線は健在。一冬超えた後は脅威になりそうだ。
好投手・関野 大哉擁する湘南学院、2013年秋季関東大会出場の日大高は経験者が多く揃う。パンチ力があり、またクローザー役を務める川口 諒太、厳しい場面でもしっかりと力を出せる則竹 良太、打たせて取る投球が光る中村 雅治と実戦向きの選手が多いのが特徴だ。ベスト8の日大藤沢は大型捕手・下地 滉太を中心に攻守とも総合力を高めていきたい。横浜創学館は、プロ注目の大型右腕・望月 惇志の成長がカギになりそうだ。
昨春県大会ベスト8の原動力となった南のエース・神谷 翼。攻守とも粘り強いチームだが、ワンランクレベルアップを期待したい。県大会3回戦でコールド負けした横浜。今までの横浜にないミスが見られた。一冬超えて、攻守ともに洗練された横浜を見せることができるか。
個人では、中学時代、15Uメンバーに選出され、すでに140キロ台の直球を投げ込む藤平 尚真が一躍、神奈川県屈指の右腕へ成長を果たすか。桐蔭学園は最速143キロの本格派右腕・田村 海人がエースとして一本立ちできるか。また法政二のエース・仲島 大雅は140キロ前後を計測し、キレのあるスライダーを投げ分ける投球術は見応えがある。チームとしても、投打ともに能力が高い選手が揃っており、こちらもシード入りを期待出来るチームだろう。
強打者・渡部 健人、松山 翔吾など打力が高い選手が揃う横浜商大高。まだ投手陣が仕上がっていなかったが、一冬超えて投打ともに磨きがかかると、上位校からすれば、警戒しなければならないチームだろう。好投手擁する相洋も躍進に期待がかかる。昨夏準優勝(2014年第96回神奈川大会データ)の向上も、チーム作りがしっかりしているだけに春に浮上するだろう。また桐蔭学園を長年率いてきた土屋監督が星槎国際湘南に就任。どんなチーム作りするかも注目だ。公立校ではベスト16入りした横須賀総合、鶴嶺、綾瀬の3校の躍進にも期待したい。
春季大会は、夏のシード権争いへ向けて、重要な争いになる。甲子園を睨んでいる強豪校は、シード権を獲得して、夏では序盤から強豪校との戦いは避けたいところ。
神奈川は千葉、埼玉と比べると勢力図が大きく変動することはない。そのため強豪校にとってシードを取れることは重要で、それは大会終盤の戦いを迎えるまでに、どれだけ体力以外にも、心理的負担を減らしていけるかも大事な部分となる。いかに、選手たちのピークを大会終盤に持っていけるかが、夏の勝ちあがりで求められる部分だ。
だが、早期敗退すると、去年の夏に横浜隼人対横浜商大の対決が初戦から実現したように、強豪校のぶつかり合いが起きてしまうのだ。ファンからすればたまらない展開だが、当事者からすれば、避けたい展開である。
実は重要な意味を持つ春季大会。ぜひ各校の戦いぶりに注目してほしい。
(文=河嶋 宗一)
【高校野球ドットコム編集部】
ドットコムTwitter
ドットコムfacebook