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2015年の高校野球を占う【東海編】「伝統校、新鋭校が争う構図に」

2015.02.13

 今年の東海地区は伝統校だけではなく、昨秋、東海大会に出場した新鋭校が登場。今年は伝統校と新鋭校が争う構図となっており、激戦が予想される。今年の4県(岐阜、愛知、三重、静岡)の勢力図はどうなっているのか。また東海地区の注目選手も紹介し、3月の対外試合解禁へ向けて理解を深めていきたい。

誉、浜松修学舎など新鋭校が登場

内田 大貴(誉)

 静岡と県岐阜商が決勝を争い、打線に力のあった静岡秋季東海地区大会を制した。たまたま、戦前からの歴史を背負う伝統校が2強に残ったが、東海地区にも新しい波が訪れている。

 東海大会出場校で言えば、愛知県大会を制したと、3位校で東海大会初出場を果たし結果的には21世紀枠代表校として選出された豊橋工が象徴的だった。また、静岡県2位校の浜松修学舎は、創部6年目。岐阜県大会を制した(試合レポート岐阜総合学園と共に初出場だった。

 なかでも、注目はだった。エース左腕の内田 大貴は172センチ64キロと体格には恵まれてはいないが、大きく弧を描いて曲がり落ちてくる左腕独特の大きなカーブと、鋭くキュッと曲がるキレのいいスライダーを中心にした投球で、県大会では東邦愛工大名電といった甲子園常連校を相次いで完封した。ピンチにも動じない度胸の良さも魅力だ。東海地区大会でも最少失点で敗れはしたものの、県岐阜商と好投手戦を演じた。

 矢幡 真也監督も、創部31年目で迎えた千載一遇のチャンスに手ごたえを感じていた。
「投手がいいですから、強豪相手でも負けないチームにはなったかなという気持ちはありました」と、東海大会に挑んだ。課題的に浮き彫りになったのが打線の迫力不足だった。中軸を任される竹内 宏多主将を中心に冬の間にどこまでパワーアップしているか楽しみだ。

 21世紀枠代表で、悲願のセンバツ初出場を果たした豊橋工は、182センチの長身右腕森 奎真に注目が集まる。昨春、夏といずれも好投し東邦を最後まで追いつめ自信になった。バッテリーを組んでいた彦坂 拓真とともに、打線でも中軸を打つ存在だ。このバッテリーと中村 亮太主将がチームの意識を高めていき、チームは確実に成長している。センバツを通じて様々な経験を積んでいくことでさらなるチームの飛躍が期待される。

 県大会準優勝の愛工大名電準々決勝で競い合った中京大中京の名門校も健在だ。愛工大名電毛利 元哉武藤 健司らの打線は破壊力があるが、今や伝統的にチームカラーともいえるバントも精度が上がっている。中京大中京は、経験のある上野 翔太郎加藤 大騎が投打の中心として引っ張る。これに、昨夏の甲子園でも投げた藤嶋 健人やパンチ力のある溝口 慶周と投打の軸がいる東邦を加えた名古屋市内の私学3強は、もちろんチーム力が高い。

今回のコラムに登場した学校の野球部訪問とチーム紹介は以下から!

東邦高等学校(愛知)


21世紀枠 各地区候補 紹介!豊橋工業(愛知)

2015年度 春季高校野球大会 特設ページ
【ひとまとめ】2015年の全国各地の高校野球を占う!

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愛知・静岡の勢力図

安本 竜二(静岡)

 追う存在としては、長谷川 颯山田 純平らの投手陣に深谷 竜介捕手が引っ張る県大会ベスト4の春日丘や、近年躍進著しい至学館昨夏の準優勝校栄徳などがいる。また同じ尾張地区のの躍進に刺激を受けている、選手層の厚い愛知啓成弥富から校名変更して2年目の愛知黎明、秋の全尾張大会で躍進した公立の西春にも注目だ。

 三河勢では、秋の全三河大会を制した愛産大三河は平松 卓磨はじめ、投手の層が厚い。昨年のセンバツでベスト4に進出して旋風を巻き起こした豊川全三河大会準優勝の豊橋中央なども元気だ。地区ブロック大会で豊橋工を下している桜丘浜口 カズ投手が安定している成章、地道なチーム作りで定評のある渥美農も見逃せない。

 他には、新体制となった星城、知多の雄大府、伝統の豊田西も健在だ。

 創部6年目の浜松修学舎をはじめ、静岡県にも新しい勢力が台頭している。浜松修学舎は女子校から転身し中高一貫の芥田学園から2年前に校名変更した。多彩な球種が持ち味の小林 祐揮が安定して、東海大会ベスト8に進出した。また、31年ぶりに秋季東海大会に戻ってきた日大三島も昨年は春に続いての東海大会進出だった。経験のある小澤 怜史(インタビュー【前編】 【後編】)を中心に投打にまとまりはある。ただ、県大会東海大会と、立て続けに静岡に大敗し脆さも露呈。このあたりが課題となるが、一冬超えてメンタル面がどこまで成長しているのか楽しみでもある。

 戦力的には、静岡が抜けた存在となっているが、とくに打線の迫力は全国でもトップレベルと言っていい。安本 竜二堀内 謙伍らの強打が目立つが、リードオフマン静岡鈴木 将平のセンスの良さも光る。

 ベスト4に進出した常葉菊川と、常葉橘といった甲子園出場実績のある常葉勢はもちろん、選手層も厚く力はある。藤枝明誠も近年整備されてきており、飛躍を目指す。

 日大三島の活躍が刺激となっている東部地区勢は、三島から校名変更した知徳が粗削りながら魅力的だ。飛龍加藤学園なども上位を狙える。公立勢では富士市立駿河総合などが地道にチーム作りをしている。

2015年度 春季高校野球大会 特設ページ
【ひとまとめ】2015年の全国各地の高校野球を占う!

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[page_break:岐阜・三重の勢力図]

岐阜・三重の勢力図

西脇 達也 (岐阜総合学園)

 全国的にも注目の左腕高橋 純平がいる県岐阜商が中心となっている岐阜県。2年ぶり28回目のセンバツ出場を果たした県岐阜商は敢えて、ここで紹介するまでもないが、高橋だけではなく、広瀬 将植田 大一らの打線も強力だ。

 そんな岐阜県だが秋季県大会を制したのは岐阜総合学園だった。一見線は細いが、西脇 達也投手の粘り強い投球が光った。強肩の三津村 知哉捕手もリードのセンスがよく、野村 淳監督もバッテリーを中心とした守りのチームとして自信を持っている。廣瀬 智遊撃手の守備範囲の広いプレーも注目だ。打線に破壊力がつけば、さらに面白い存在となっていきそうだ。

 関商工甲子園に導いた北川 栄治監督が母校へ異動して指揮を執る岐阜も、OB会など周囲の協力体制が整いつつあり見逃せない。また、爆発力のある土岐商とともにベスト4に残った関商工も力はある。それに、秋季県大会はいずれも初戦で敗退してしまったものの大垣日大中京、市岐阜商などの存在も忘れてはならないだろう。

 近年、いなべ総合学園と菰野が2強となっている三重県。この秋はその両校が準々決勝で激突し、いなべ総合が16対10と乱戦を制した。その勢いで県大会を制したいなべ総合試合レポート)。尾崎 英也監督は「東海地区大会決勝進出」にこだわりセンバツ出場を目指したが、あと一歩で県岐阜商に阻まれた(試合レポート)。しかし、祝 大祐内山 昌高らの投手陣は安定している。また、経験も豊富でセンスのいい市川 晃大が引っ張る打線も勝負強く、県内では攻守に一番の力があると言えよう。菰野三重山田 大樹も注目の投手である。

 県大会3位決定戦で1対0と小気味のいい投手戦を演じた津西津商の両校もまとまりはいい。準優勝海星渡辺 勇斗と1年生左腕川崎 達矢の投手が安定しており、森下 晃理監督も手ごたえは感じているようだ。

 昨夏の甲子園準優勝校の三重は、新チームのスタートも遅れメンバーもほとんど一新され、県大会では海星に屈した。しかし、甲子園で一発を放った山井 達也など一冬超えた春以降は楽しみとなる。

今回のコラムに登場した学校の野球部訪問は以下から!

三重高等学校(三重)【前編】


三重高等学校(三重)【後編】

(文・手束 仁

2015年度 春季高校野球大会 特設ページ
【ひとまとめ】2015年の全国各地の高校野球を占う!

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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