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第86回選抜大会注目選手を紹介 【野手編】

2014.02.13

第86回選抜大会注目選手を紹介【投手編】

 第86回選抜高校野球大会が3月21日から開幕する。今大会で注目される強打者・好打者を取り上げていきたい。

今大会を代表する4名の強打者たち

岡本和真(智弁学園)

 今大会、最も注目を浴びるのは岡本 和真(智弁学園)、高濱 祐仁横浜)、浅間 大基横浜)、飯塚 悟史日本文理)の4名ではないだろうか。

 中でも注目ナンバーワンスラッガーと呼ばれるのが岡本 和真(智弁学園)。

 182センチ92キロと恵まれた体格、そしてヘッドスピードが速く、フォローが豪快な打撃スタイルで本塁打を量産。公式戦7試合で4本塁打、打率.632、出塁率.733とずば抜けた成績を残している。出塁率が7割を超えたのは長打力を警戒され、大事な場面でほぼ歩かされて、10四死球を記録したからだ。バッテリーにとっては打率6割、甘く入れば本塁打に出来る打者を相手に無理に勝負しても仕方ないと考えたのだろう。この大会でも重要な場面で歩かされる可能性は高いが、勝負を避けられることで力んでしまうのが怖い。あくまで自分の打撃に徹し、秋季大会で見せた力を発揮できるか注目だ。

 ロッテの高濱 卓也の弟・高濱 祐仁横浜)。1年春から名門・横浜の主軸打者として活躍。2年夏には松井 裕樹から本塁打、甲子園でも3ランを放つなどの活躍を見せたが、昨秋は練習試合・公式戦でわずか1本塁打に終わった。

 本塁打が1本に落ち込んだ原因としては左足の故障があったこと、そしてスイング軌道に狂いが見られたことだ。1年の時の彼のスイング軌道は無駄がなかった。ただ2年秋ではスイング軌道が遠回りになり、的確にボールを捉えることができていなかった。選抜決定後(第86回選抜高校野球大会 関東・東京の最後の1枠は横浜!)、高濱に自身の課題を聞いてみた。高濱は「確率を上げる打撃をする」と答えた。何の確率を高くするのかというと、甘い球をしっかりと捕えることだ。スラッガーと呼ばれる選手は甘い球を見逃さずに仕留められる。長打力は今年の高校生ではトップクラス。無理に長打を狙わなくても好球必打という思考で、甘い球を捕えられる確率を昨年より高めれば、大爆発も望めるのではないだろうか。

高濱祐仁(横浜)

 浅間 大基は公式戦・練習試合を通じて5本塁打、打率.473と高い数字を残した。昨秋の関東大会1回戦(2013年10月28日)では関東地区を代表する本格派左腕・上條 将希から本塁打を放ち、準々決勝の佐野日大戦(2013年10月29日)では田嶋 大樹から安打、痛烈な中飛を放っており、左投手への対応力も高い。脚力の高さ、守備範囲が広さも魅力的で、走攻守三拍子揃った外野手として大きく注目を浴びていきそうだ。

飯塚 悟史は投打ともに才能が優れた投手。投手編では投手・飯塚を紹介したが、当コラムでは打者・飯塚について紹介をしていきたい。飯塚は明治神宮大会で3本塁打を放った長打力が魅力の逸材。芯でとらえた時の飛距離はこの4人の中でもピカイチで、神宮大会決勝ではバックスクリーンのスコアボードに当てる大ホームランを放った。秋では9番を打つことが多かったが、プレッシャーのかかる上位打線で、明治神宮大会の打撃が出来れば、野手・飯塚としてドラフト候補に浮上するのではないだろうか。

 

[page_break:強打者、巧打者が揃う全国の逸材たち]

強打者、巧打者が揃う全国の逸材たち

北條裕之(八戸学院光星)

 9年ぶり出場の駒大苫小牧は中堅・伊藤 優希がキープレイヤー。伊藤は公式戦9試合で打率.552、12盗塁を記録。俊足を生かし、守備範囲は広く、走攻守三拍子に優れている。

 八戸学院光星の注目は北條 史也の弟・北條 裕之で、兄以上のスピードが武器の遊撃手。一歩目が速く、センターへ抜けそうな打球も追いついてしまう守備範囲は兄以上だ。広角に打ち分ける打撃で、チャンスメイクに徹する。攻守で躍動を期待したい。公式戦で打率.421を記録した深江 大晟、4番を打つ蔡 鉦宇はパンチ力のある打撃が持ち味。6番を打つ新井 勝徳は186センチの大型打者。さらに長打力が増して来れば、楽しみな打者といえるだろう。

 初出場の東陵は1番ながら公式戦で2本塁打、打率.421を記録した山崎 誠悟に注目。168センチと小柄ながら、パンチ力もあり、7盗塁を記録した俊足も魅力な外野手。

 

 

 7年ぶりの佐野日大は主将で1番を打つ吉田 叡生は打率.481の高打率を記録したバットコントロールが持ち味。昨秋の関東大会の横浜戦(2013年10月29日)では伊藤 将司から左前安打を放ち、初回5得点の口火を切った。5得点が決め手となり、選抜出場へ大きく前進させた。選抜でも勝利へ向けて、突破口を切り開く打撃を見せる。

 20年ぶり出場の山梨学院大附で前チームから4番を打つ菊池 海斗は好投手に振り負けせず、鋭い打球を飛ばす遊撃手。勝負強い打撃を見せたい。東京代表の関東一で正捕手の池田 瞳夢は冷静なリードと強肩でチームをまとめ上げ、5番打者としてチーム最多の8打点を記録し、勝利に貢献した。守備面でアピールをしたい選手。関東・東京の最後の枠に選ばれた横浜で、1番を打つ川口 凌は打撃センス抜群で、好投手に対しても自分の型を崩さず、安打を放てるバットコントロールが魅力。他校から最も警戒された打者で、佐野日大のエース・田嶋 大樹は彼だけにフォークを使った。それでも空振りせずに一塁ゴロ。最終打席では落ちる球を捉え、二塁打にした。今年は同じチームの高濱 祐仁浅間 大基が注目されるが、キーマンになる存在だ。

大谷司(龍谷大平安)

 神宮大会準優勝の日本文理で、5番を打つ池田 貴将は一発を打つ長打力に、逆方向へ長打が打てる技術を併せ持つ。15年ぶり出場の東海大三は4番を打つ浦野 雅也が打率.429、10打点とチームの二冠王の好打者で、選抜でも突破口を切り開く打撃を見せる。

 東海大会優勝の三重三重はバットコントロールが良い1番・長野 勇斗と2番・内田 蓮に注目。準優勝で初出場の豊川は公式戦3本塁打の高桑 平士郎を強打の遊撃手としてマークしていきたい。

 近畿大会優勝の龍谷大平安徳本 健太朗大谷 司の1、2番コンビに注目。徳本は公式戦13試合で13盗塁を決めた脚力の高さを持つ。外野へ抜けたら即座に三塁を狙う積極性ある走塁で、チャンスを切り開く。大谷は188センチ84キロと恵まれた体格をした大型打者。公式戦の成績は打率.233とあまり高くないのだが、明治神宮大会では鋭い打球を飛ばしており、潜在能力の高さを感じさせた。確実性を上げて、常に長打を打てる打者へ成長してほしい。準優勝の智弁和歌山は1年夏から出場の長 壱成が打率.476を記録した強打の捕手。

 4年連続出場の履正社は能力が高い打者がずらりと並ぶ。バットコントロールが良い3番吉田 有輝、公式戦で19打点を記録した4番の中山 翔太、公式戦打率.409、3本塁打、9打点と確実性、長打力が備わった強打の捕手・八田 夏の3人に注目だ。

 智弁学園は岡本 和真の前に打つ吉岡 郁哉が打率.370、2本塁打を記録。練習試合を含めて9本塁打を打つパンチ力ある遊撃手。2年連続出場の報徳学園は正捕手の岸田 行倫が4番として公式戦打率.471、18打点を記録。守備では強肩と投手の持ち味を発揮するリードで、チームをベスト4に導いた。投手もこなす万能な選手だ。5年ぶり出場の福知山成美は潜在能力が高く、バットコントロールが良い木村 典嗣、正捕手として引っ張る佐野 友亮の昨夏甲子園経験者がチームを引っ張る。

 中国大会優勝の岩国で、4番を打つ二十八 智大はパンチ力ある打撃が魅力で、一つ一つの打球が力強い。20打点を記録した勝負強さが頼もしい。準優勝の広島新庄の4番・阪垣 和也は公式戦の本塁打は1本のみだが、捉えた時の打球の速さは圧巻。選抜でも大当たりを見せる。

 四国大会優勝今治西は攻守でチームを引っ張る正捕手・越智 樹が強肩と広角に鋭い打球を打てる打撃で、チームの勝利に貢献する。準優勝の徳島池田の岡本 昌也は1本塁打、7打点とチームの中心打者として活躍を見せた強打の三塁手。3年ぶり出場の明徳義塾は3番を打つ多田 桐吾が公式戦で打率.450と高い数字を残した左の好打者。

 神宮大会優勝沖縄尚学は公式戦2本塁打を記録した三塁手・安里 健、右、左に長打を打ち分ける核弾頭の赤嶺 謙に注目。赤嶺は常に全力疾走を心掛け、内野安打にすることが多く、それがきっかけとなって、点につながることが多い。実力だけではなく、プレーに対する姿勢の良さも見てもらいたい。初出場の美里工は公式戦でチーム最多の15打点を記録した4番の花城 航、公式戦4本塁打を記録した3番の宮城 諒大がチームの中心。24年ぶり出場の鎮西は1番を打つ中野 航太がチームトップの公式戦打率.356、7打点を記録した。21世和枠出場の鹿児島大島は4番を打つ小野 浩之介がチーム唯一の本塁打を打っている打者。公式戦の本塁打も、練習試合の本塁打も小野だけ。176センチ78キロと恵まれた体格と中堅もこなす身体能力の高さが武器だ。

[page_break:中心選手で活躍する新2年生の逸材野手]

中心選手で活躍する新2年生の逸材野手

大下誠一郎(白鴎大足利)

 新2年生の逸材の紹介に入りたい。注目は昨秋、1年生ながら主軸を打っていた大下 誠一郎白鷗大足利)だ。公式戦の打率.276、6打点と成績面ではやや物足りなさはあるが、ここぞという場面で勝負強さを見せ、数字以上に怖い打者。捉えた時の打球の速さはドラフト候補と注目される打者にひけをとらない。またマウンドにも上がり、140キロ近い速球でねじ伏せる。投打の中心としてチーム初勝利を目指す。

 佐野日大竹村 律生は守備範囲が広さが持ち味のショートストップ。関東一伊藤 雅人は本塁打はないが、広角に鋭い打球を放ち、打率.375を記録。強肩が光る三塁守備をさらに磨いていきたい。

 日本文理星 兼太は1年春から公式戦に出場した好打者。普段は6番を打つが、神宮大会決勝戦(2013年11月21日)では1番を打ち、カーブを振り抜き、本塁打にしたパンチ力を持つ。12打点を記録した勝負強さも侮れない。

 智弁和歌山の山本 龍河は、前チームまでは投手としてマウンドに登ることもあったが、新チームでは野手に専念。公式戦2本塁打、13打点、打率.460と三部門で高い数字を残した。秋の公式戦が終わり、オフには投球練習に取り組んでいるようで、投打でパワフルな働きを期待したい。

 

山本龍河(智弁和歌山)

 智弁学園の広岡 大志、1年夏から出場し、一発を打つ長打力を持った左翼・大西 律暉の成長にも期待。岡本の前後を打つ彼らが成長することで、より強力な打線になりそうだ。

 中国大会優勝の岩国の核弾頭・川本 拓歩は公式戦21安打を放った。常にミートし、右、左に打ち分ける。二塁守備も堅実。長打力を伸ばし、強打の二塁手を目指したい。

 神村学園の1年生ながら4番を打った山本 卓弥に注目。184センチ83キロと恵まれた体格を誇り、バットコントロールと長打力を兼ね備えた逸材。選抜では4番として勝負強い打撃を見せていきたい。2年連続出場の創成館鷲崎 淳は公式戦でチーム唯一の本塁打を放っており、長打力のある打者。本来はエースだが、左ひじを痛め、九州大会では野手に専念した。投手に復帰し、投打で力強い姿を見せてほしい。

 今年はポテンシャルの高い野手が多く、逸材が並ぶ。全力でアピールし、印象に残る活躍を見せてもらいたい。

(文:河嶋宗一)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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