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第86回選抜高校野球大会の選考を振り返る【北海道、東北、関東、東京 編】

2014.01.26

第85回選抜の選考を振り返る【21世紀枠 編】

北海道、東北、関東、東京 出場校一覧

選抜大会 (参考)選手権大会
地区 区分 高校名 都道府県 出場回数 過去の戦績 出場回数 過去の戦績
北海道
(1枠)
私立 駒大苫小牧 北海道 9年ぶり3回目 1勝2敗 7 14勝5敗(優勝2回、準優勝1回)
東北
(2枠)
私立 八戸学院光星 青森 2年ぶり7回目 5勝6敗 6 16勝6敗(準優勝2)
私立 東陵 宮城 初出場 1 0勝1敗
関東/東京
(6枠)
私立 白鴎大足利 栃木 初出場 3 1勝3敗
私立 桐生第一 群馬 7年ぶり4回目 2勝3敗 9 13勝8敗(優勝1)
私立 佐野日大 栃木 7年ぶり4回目 2勝3敗 6 4勝6敗
私立 山梨学院大附 山梨 20年ぶり2回目 1勝1敗 5 1勝5敗
私立 横浜 神奈川 2年ぶり15回目(夏春連続) 23勝11敗(優勝3準優勝1) 15 32勝13敗(優勝2)
私立 関東一 東京 2年ぶり5回目 7勝4敗(準優勝1) 5 8勝5敗

北海道 枠1・候補校5

■ 駒大苫小牧
決勝まで残った札幌大谷とともに最終選考に残り、優勝と投攻守全てに高い評価がされて選出された。投手では1年生右腕の伊藤大海が軸で、低めへの直球とカーブのコントロールが良く、的を絞らせない投球が良くできていたという評価を得た。さらに右の菊地翔太、左の立花翔と安定度の高い投手陣での継投策でのタイミングも良く、層の厚さが見られた。守備では内外野とも強肩で、特にカバーリングの良さが目立った。攻撃ではチーム打率2割7分9厘で傑出した選手はいないが、機動力もあり、全道大会4試合で10盗塁、16犠打とチームの持ち味を生かしたそつのない攻めが光った。

補欠校 札幌大谷
惜しくも決勝で敗れたが、1年生エースの岡本凜典が一戦毎に力をつけて、守備と攻撃でもバランスが取れているという評価があり、川嶋弘委員長は夏へ向けての期待の言葉を語った。

東北地区 枠2・候補校15

佐藤 洸雅 (東陵)

まずここ数年の東北地区のレベルの向上は非常に目を見張るものがあったと総括した。特に昨年は21世紀枠を含めて5校出場し4校が初戦を突破。夏も6県中、5校が初戦を突破して、ベスト4にも2校が残った。相澤孝行委員長は、「その中で、今回は2校という枠をいただいて、非常に厳しい状況の中で、戦力面、フェアープレー面、地域性と全ての面から多角的に厳正な論議を行って、2校を選出した」と語った。

■ 八戸学院光星
東北大会で一戦毎に力をつけた。初戦は仙台育英相手に苦戦し、リードしていた展開を一挙に6点取られて逆転されたが、それを再逆転する粘りを見せ、勝利をしてから勢いに乗って優勝。東北地区トップでの選出となった。投手では右の中川優と、決勝で先発した1年生左腕の呉屋開斗の2人が中心。特に中川投手は大会中に急成長し、優勝に大きく貢献した。打撃では1番の北條裕之が長打力のあるリードオフマン。3番深江大晟、4番蔡鉦宇、5番森山大樹のクリーンアップは高打率を誇り、甲子園でも勝機に畳みかける攻撃は大いに期待できると高い評価を得た。

■ 東陵
粘りとチームワークが身上の高校生らしいチームと評価されて、準優勝の実績から2番目で選出された。投手は佐藤洸雅岡本直己の1年生右腕が二枚看板を形成。打撃では、1番で主将の山﨑誠悟が打率4割を超えて足もあり、チームの犠打飛が48とコツコツと繋いで粘りある野球を見せる。その粘りを一番発揮したのが準決勝の青森山田戦。エースの佐藤が150球を越える力投でゲームをものにした。残念ながらその力投が影響したのか決勝では2対13で大敗したが、「粘り強さは、(大敗によって)失われるものではない」と相澤委員長は強調した。

補欠1位 青森山田 
補欠2位 角館 

☆ポイント解説

相澤委員長は、補欠1位の青森山田を下馬評は東北地区で一番手に挙げられていた通り、バランスのとれた良いチーム、2位の角館を守りがしっかりして、東北大会を盛り上げた殊勲者と評した上で、準決勝で八戸学院光星に惜敗した花巻東について報道陣からの質問を受けた。
「準決勝で残念ながら、ラフプレーがあった。一昨年、韓国での大会(18U世界選手権)で日本の森友哉捕手がアメリカの選手に危険なプレーをされた後、高校野球の特別規定でそういうラフプレーをしないとルール決めをしたが、昨年の選抜大会でもそういったことが起こった。あらためて、技術振興委員長の名前で全国的に厳しく徹底していこうということになりました。人命というのはオーバーかもしれませんが、選手生命に関わる非常に大事なこと。にも関わらす、(この試合で)そういうプレーがあって審判はラフプレーとして判断してルールを適用した。現に相手の捕手は脳震盪を起こして退場をしてしまっている」と意を決したように話した。
相澤委員長のオーバーかもしれないと話しつつも≪人命≫という言葉を使った所に大きなポイントを感じる。深く掘り下げてみると、体の打ち所によっては、仮に命は助かったとしても、その後の生活が五体満足でできない危険もはらんでいる。
さらに考え方を変えてみると、ラフプレーをしてしまった側もされた側と同様にケガをするという可能性もあるのだ。
選考委員会ということで大きく取り上げられてしまったが、『過去に起こってしまったラフプレーが今、悪いかどうかを問うのではなく、これからラフプレーでケガを引き起こさないためにはどうすれば良いかを選手も考えるきっかけにして、野球に取り組んでほしい』というメッセージが込められているように思えた。

関東・東京地区 枠6・候補校18

まずは基本枠の関東4校、東京1校を選出した。

■ 白鷗大足利
投攻守にバランスが取れて関東大会を初制覇し、文句なしで1番目に選出された。投手では右腕の比嘉新が185センチの長身から、重い直球と縦に鋭く変化するスライダーに安定感があり、関東地区の強力打線を抑えた。打撃では4番で主将の直井秀太を中心に、切れ目がなく、関東大会全試合で二桁安打と素晴らしい結果を残したと評価された。

■ 桐生第一
先発8名が1年生のチーム。エース右腕の山田知輝は、184センチ80キロの恵まれた体からの直球は力強く、追い込んでからのフォークボールの切れも良い。3試合で完投して、そのうち2試合完封は見事という声が多かった。攻撃でも4番を打つ山田を軸に勝負強く、機動力もあり、守備も鍛えられていた。

■ 佐野日大
エース左腕の田嶋大樹は、180センチの長身から140キロ台の直球とスライダーのキレが良く、三振を奪える投手。また、左打者への内角の攻めも冴え、公式戦防御率0.49の成績も合わさって、「今大会左NO1投手」と絶賛された。攻撃陣は、先発メンバーのうち左打者が6人いて切れ目がなく、横浜との準々決勝で初回に5点を取った集中打と下位打線の迫力が光った。守備でも派手さのない、堅実なプレーが光った。

■ 山梨学院大附
投手陣は左腕の山口大輔がエースで、カーブとスライダーが良く、微妙な制球力と粘り強い投球が光った。打線はクリーンアップが強力で、チャンスに強く、バントも正確。1点を確実に取る野球ができていた。守りも県大会と関東大会を合わせた8試合で失策が4と良く鍛えられており、バランスの取れたチームと評価された。

■ 関東一
東京都大会を制し、1番目で選出された。投手陣は右の羽毛田晶啓と左の阿部武士の継投。特に1年生左腕の阿部は、130キロ台前半のスピードながら、曲がりの大きなカーブとキレの良いスライダーを低めに集め、打者のタイミングを外して打たせて取る投球ができていた。準決勝の東海大高輪台戦での無四球完封は見事という声が多かった。攻撃陣も強力で、打撃戦となった決勝の二松学舎大附戦では、持ち前の打力に加えて、機動力がいかんなく発揮されて延長戦を制した。守りも良くまとまっている印象が強かった。

■ 6校目は?
ラスト1枠の前に、比較対象となる関東の5番目と東京の2番目が決まった。
関東5番目は横浜佐野日大に敗れた準々決勝は、初回に5失点をしたエースの伊藤将司が、2回以降は散発5安打無失点と本来の投球を取り戻した。打線は大半が夏の甲子園の経験者で、特に浅間大基高濱祐仁など強打者を軸に切れ目がなく、守備面も全員が強肩でよくまとまっているという声が多く、ラスト1枠の比較対象に残った。
東京2番目は準優勝の二松学舎大附。エースの大黒一之は、力強い直球と多彩な変化球を持ち、強気で押す投球が決勝まで勝ち上がる原動力となった。決勝では大黒投手が崩れたものの、リリーフした1年生の岸田康太が130キロ台後半の直球とスローカーブを有効に使って踏ん張った。打線は準決勝で優勝候補と評判の高かった日大三三輪昂平投手を打ち崩し、3回に一挙8点を奪い、決勝でも13安打を放つなど、逆らわない打撃が徹底されていることが高い評価に繋がった。だた、決勝での4失策、そのうち3個がタイムリーエラーとなり投手陣を助けられなかったことが課題として浮き彫りになった。

6校目の比較対象に残った横浜二松学舎大附を、投手力、攻撃力、守備力を詳細に検討する作業に入った。その結果、攻撃力は互角で、投手力と守備力での安定度が高いのが横浜という結論に達し、ラスト1枠に推されることが決まった。

関東補欠1位 健大高崎
補欠2位 霞ヶ浦

東京補欠1位 二松学舎大附

関東地区の5番目の選考については記者会見でも質問が飛んだ。初回の5失点を追いつききれなかった横浜はベスト8敗退組の試合内容で、唯一競り合う展開にできなかったが、川嶋委員長は伊藤投手が立ち直ったことと「関東ナンバーワン投手の佐野日大・田嶋投手から3点を奪った」ことをプラス材料として強調した。その他では桐生第一にサヨナラ負けした霞ヶ浦横浜との比較で肉薄していたようだが、シード校で関東大会が未勝利で終わったことが横浜を上回れない材料と今回はなってしまった。
2008年に同じく関東シード校未勝利ながら宇都宮南が選出されたこともあったが、「当時は関東地区が増枠になった年だった」と川嶋委員長は話した。ただし、シード校未勝利の扱いについては答えがないことも強調し、15校出場ということもあって今後も難しい選択が続きそう。
さらに(今回なら習志野健大高崎を含む)関東ベスト8組全体の選考という点では、2球場での開催で選考委員も二班に分かれて見ているため、どの試合を見ているかでそれぞれに違う印象があり、議論を戦わせていることも関東5番目の選出の難しさを物語っている。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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