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野村、山下…スター野手が期待通りの活躍を見せた今年の関東大会!

2018.05.29

野村、山下...スター野手が期待通りの活躍を見せた今年の関東大会! | 高校野球ドットコム
左から山下 航汰(健大高崎) 野村 佑希(花咲徳栄) 増田 陸(明秀学園日立) 髙山 遼太郎(健大高崎) 森下 翔太(東海大相模)

 5月19日から開幕した春季関東大会(千葉開催)健大高崎の優勝で幕が閉じた。今大会は野手のドラフト候補が多かった大会でもあり、関東大会で飛躍を遂げた野手が多い。そんな今大会を振り返る。

ドラフト候補野手のパフォーマンスを振り返る

大会前からドラフト候補として評判が高かったのは、
13702明秀日立
野村佑希花咲徳栄
山下航汰健大高崎
高山遼太郎健大高崎
森下翔太東海大相模
の5人である。まずこの5人から振り返っていきたい。
 増田はやはり自慢の守備が非常に良かった。身のこなしの良さが光る守備は「華やかさ」があり、シートノックから高校野球ファンの目をくぎ付けにした。三遊間の深い位置、二塁ベース寄りの打球にも、軽快なフットワークで追いつき、そのままランニングスローでアウト。スローイング一つ一つが強く、プロ注目の遊撃手として評判通りのディフェンスを示した。一方、打撃は1安打のみ。テクニックとストレートの切れを兼ね備えた板川佳矢横浜)のようなタイプを打ち崩すことができるか。今後こういう左腕投手は当たり前のように対戦する。そういう投手を攻略できる技術を身に付けていきたい。

 野村は2試合で、7打数4安打1本塁打4打点と評判通りの打力を発揮。専大松戸戦では先制タイムリー、高校通算52号となる右翼へソロ本塁打、3安打目の左前安打はいずれも初球を打っているように、初球から甘い球を見逃さない嗅覚の鋭さ、目の良さ、打撃技術の高さが光った。打撃フォームは構えを見ると以前ほどグリップを高めに掲げることはなくなり、だいぶコンパクトに構え、スイング軌道も無駄がないものとなっている。

 そして昨冬から三塁守備に挑戦。まだ打球反応、バウンドの合わせ方はうまい三塁手と比べるとまだ差がある。それでもヒット性の打球に食らいついて追いつくなど必死さは見せ、軽いスローに見えても強い送球ができる肩の強さがある。もともと投手としては146キロを投げるだけに、守備技術を高め、この夏は敵なしの打棒を見せたい。

 山下は20打数7安打、1本塁打4打点を記録。決勝の日大三戦では場外弾を放った。凡退した打席を見ても、打球は鋭く、打席の内容が非常に良いのだ。相手投手からすれば簡単に凡退させない怖さを実感したはずだ。またベースランニングを見てもなかなかの俊足、レフトの守備を見ると肩の強さも標準レベルで、打つだけの選手ではない。さらに守備レベルを高めていきたい。

 高山は今大会で3本塁打と自慢の長打力をアピール。高山はフォロースルーが大きい豪快なスイングをしており、それでいて140キロ台の速球、甘い変化球に対応できる技術の高さがある。そして今年から三塁守備に転向したが、打球反応が早く、軽快なグラブ捌き、強肩が光るスローイングは必見。今年は三塁手のドラフト候補が多いが、その候補に匹敵する選手に入ったといえる。

 森下は7打数1安打。花咲徳栄戦で放ったサヨナラ本塁打のみに終わった。高校通算49本塁打を放っているように、打者としてのポテンシャルの高さは全国トップクラスの森下だが、どうもタイミングの取り方に狂いが生じているように感じる。打撃以外でも、俊足、センターから放たれる強肩も魅力。

 打撃不振は選抜から続いているが、それを乗り越え、今年の夏では敵なしの打撃を見せることができるか。

[page_break:大当たりを見せた健大高崎、日大三の野手たち]

大当たりを見せた健大高崎、日大三の野手たち

野村、山下...スター野手が期待通りの活躍を見せた今年の関東大会! | 高校野球ドットコム
金子凌(日大三)

 今年はドラフト候補以外にも打撃力、守備力が高い選手が多かった。優勝した健大高崎は山下、高山以外も好野手が多かった。二塁の大越弘太郎は、高い打撃技術から右、左へ打ち分け、安打を連発。二塁守備でも広い守備範囲と捕球からすぐに送球に移行できる技術の高さを披露。大越と二遊間を組む小林 大介も塁間タイム4.00秒前後の俊足とスピーディな動きが光る遊撃守備を見せ、投手陣を盛り立てた。

 パンチ力ある打撃と守備範囲の広い中堅守備を見せた今井 佑輔、168センチながらパワフルな打撃を見せ、高校通算39号本塁打を記録した享保 駿など打てる打者が多かった。

 準優勝した日大三の主将・日置航が同点本塁打を放つなど大事な場面での活躍が光った。以前よりもコンタクト力が高まり、右中間への鋭い打球も多くなかった。遊撃守備ではスローイング面に成長が見え、三遊間からでも鋭いスローイングが増えた。日置が良いのは機転が利いたプレーや気配りができること。習志野戦では投手・中村奎太に声かけをしながら、気持ちを落ち着かせていた。

 4番大塚晃平は20打数10安打11打点と大活躍を見せた大会となった。準決勝・決勝にかけて3本塁打。うち2本はバックスクリーン弾と、高い打撃技術と強烈なパワーを発揮。全体の打撃を振り返ると、くさい球は粘りながら、甘く入った直球、変化球を逃さず長打にできるようになった。この関東大会で日大三らしい4番打者になってきた。

 また1番金子凌は22打数10安打5打点と大活躍。インパクトまで無駄のないスイング軌道で、右、左へ打ち分けるバットコントロールの良さは、歴代の日大三の左打者と比べてもトップレベル。また打球反応の良い三塁守備で、次々とヒット性の打球をアウトにした。

 そして今大会で急成長を見せたのが佐藤 コビィだ。桐光学園戦で公式戦初安打を含む2安打1打点の活躍。常総学院戦ではライト方向へ同点本塁打を放った。昨秋はボールとの距離感が取れず、詰まった打球が多かった。しかし今大会のコビィは、タイミングの取り方もよくなり、スイング軌道は実にコンパクトで、打球も鋭い。右方向に本塁打が打てる技術の高さとパワーは下位打者とは思えない。

 

 これまで小倉監督とのマンツーマンで打撃練習を重ねてきたが、関東大会でようやく実を結んだ。さらに準決勝でサヨナラ打、決勝でリリーフとして登板した高木翔己。投げては130キロ中盤の速球、カーブを武器にする右腕で、打ってもミートセンスが高い打撃が持ち味でこういう選手が控えに回っているのだから、このチームは本当に層が厚い。

[page_break:出場校全体に好野手が多かった]

出場校全体に好野手が多かった

野村、山下...スター野手が期待通りの活躍を見せた今年の関東大会! | 高校野球ドットコム
野尻幸輝(木更津総合)

 ベスト4の常総学院は、好野手が多かった。関東大会で2試合連続本塁打を放った水野勢十郎は注目のセカンド。抜群のヘッドスピードを武器にベルトゾーンは軽々とスタンドインさせる長打力と、右中間へ長打を打てる技術の高さは必見。セカンドの守備は軽快で、逆シングルからスナップスロー、グラブトスなど難しい技術を軽々とこなす。遊撃手・吽野 圭祐は強肩を生かした遊撃守備は必見。バウンドの合わせ方も実によく、ランニングスローも強く、高校生としてはA級。茨城県では13702に匹敵する選手といえよう。打撃でもバスターのような構えから鋭い打球を放っており、高いレベルに進めばさらに持ち味を発揮するタイプではないだろうか。4番藤川 寿真も強打を発揮。一発はなかったが、広角に鋭い打球を打つことができており、また中堅守備も守備範囲が広く、強肩を披露した。

 同じくベスト4の木更津総合は、1番東智弥、3番山中稜真、4番野尻幸輝の主軸3人が活躍を見せ、好投手が揃う国士舘横浜にコールド勝ちするなど、あっと言わせる活躍を見せた。

 東は大会3試合で14打数6安打5打点の活躍。国士舘戦で先頭打者本塁打、横浜戦で三塁打を放ち勢いを乗せた。アッパー気味の高速スイングから鋭い打球を連発。さらに俊足を生かした守備、走塁でチームをもりたて、センターから見せる強肩も注目だ。

 山中は12打数6安打を記録。山中は軸が安定し、速球、変化球をいとも簡単にとらえるバットコントロールは関東大会の左打者でもトップクラスだった。

 野尻は10打数4安打4打点と、3試合続けて打点を挙げ、勝負強さを発揮。野尻は本塁打こそなかったものの、打球の速さは山下航汰健大高崎)とひけをとらない。これで甘く入ったボールを軽々とスタンドインできる技術が備わればもっと評価が上がる選手だろう。

 ベスト8で敗れたチームでは横浜 斎藤 大輝横浜)、長南有航横浜)、蛭間 拓哉浦和学院)が存在感を示した。斎藤は明秀日立戦で逆転を呼び込む三塁打。木更津総合戦でも適時打を放ち、8打数3安打を記録。斎藤は内外角を捉える打撃技術、さらに軽快なステップが光る二塁守備と攻守ともに優れた選手だが、ここぞという場面で力を発揮できる精神力の強さが魅力。全国的に見てもトップレベルの技量を持ったセカンドといっていいだろう。

 長南は木更津総合戦で本塁打。関東大会に出た左打者でもパワーはトップクラスだが、打撃が粗く、まだ自分の力を発揮することができていない。レフトとしては肩の強さはあるだけに、自分のパワーを発揮できる技術を身に付けたい。

 蛭間は2試合で、7打数4安打2打点の活躍。パンチ力とミート力を兼ね備えた左打者で、昨年と比べると打撃の安定度が増し、自分の実力を発揮できるようになっている。また、センターの守備でも守備範囲の広さと強肩ぶりが際立っていた。

 2回戦で敗れた花咲徳栄野村佑希以外にも好野手が多く、3年生では二塁手・倉持賢太が2試合で10打数5安打6打点の活躍。6番打者に座るが、打てるポイントが広く、広角に打ち分ける技術の高さが光っていた。またキレの良い動きを見せる二塁守備も見逃せない。

1回戦で敗れた専大松戸は千葉県屈指のショートストップ・昆野海翔がライトへ3ランを放ち、存在感を示した。また今里も2安打を記録し、バットコントロールの良さを披露した。

 今年は非常にレベルが高い野手が高かった大会であった。この大会をステップアップの機会として、さらなる飛躍を期待したい。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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