Column

大阪桐蔭の連覇で幕を閉じたセンバツを徹底総括

2018.04.07

センバツ大会ナンバーワン投手は大阪桐蔭の優勝投手・根尾昂

大阪桐蔭の連覇で幕を閉じたセンバツを徹底総括 | 高校野球ドットコム
根尾 昴(大阪桐蔭)

――好投手の条件、前肩を開かない速球派8人を紹介

 4月4日に幕を閉じたセンバツ大会を振り返って、技術的に注目した選手を紹介したい。まず投手では出場順に細川拓哉明秀日立3年・右右・177/80)、井上広輝日大三2年・右右・180/74)、市川悠太明徳義塾3年・右右・184/75)、柿木蓮大阪桐蔭3年・右右・181/87)、増居翔太彦根東3年・左左・171/64)、土居豪人松山聖陵3年・右右・188/80)、奥川恭伸星稜2年・右右・182/81)、根尾昂大阪桐蔭3年・右左・177/78)の8人に注目した。

 スピードだけなら鶴田克樹下関国際・3年)、中村奎太日大三・3年)、川畑大地乙訓・3年)がたとえば柿木の今大会最速144キロと同等かわずかに上回るが、前肩の早い開きがあるかないかが重要なポイントなので、最初に挙げた8人に絞った。

 市川はサイドスローの速球派だ。サイドの本格派というと体の開きが早いヤクルトの秋吉亮のようなタイプを想像しがちだが、市川は歴代の名投手と言われるサイド&アンダースローと同様、体を横に振らず、縦方向に向かって振るので早い体の開きがない。最速146キロのストレートと打者近くで大きく変化するスライダーのキレも素晴らしく、ベスト3の称号を与えてもいいと思う。

 8人の中で最も完成度の低いのが土居だ。リリースのときの球離れが早く、敗れた近江戦では2回裏に6安打をつらねられ5点を失うなど〝未完の大器″を印象づけた。それでも私が好投手の条件とする左肩の早い開きがなく、ボールの角度も一級品。今後の成長が期待できるということではナンバーワン評価してもいいだろう。

 さて、今大会8人が計測したストレートの速さは高い順に井上、土居、根尾が147キロ、市川が146キロ、柿木、奥川が144キロ、細川が141キロ、増居が140キロと並び、準々決勝まで一番いいと思ったのが柿木。早い左肩の開きがなく、球持ちは長く、スピードガンの表示以上にボールが速く見え、コントロールが緻密というのが長所。それに対してチームメートの根尾は3回戦の明秀日立戦で最速147キロを計測した半面、与えた四球が9個と制球難を露呈してしまった。投手はスピード以上にコントロールが重要なので、3回戦終了時点では柿木のほうを大会ナンバーワンと評価していた。

 しかし、柿木をリリーフした準決勝の三重戦や連投で完投した決勝の智弁和歌山戦を見て、根尾のピッチングが柿木を上回ると評価を変えた。三重戦は8回投げて与四死球0、智弁和歌山戦は9回投げて四球1、死球3という成績。この3死球は2、3、4番に与えているので、制球難というより打者を攻めていると判断してマイナス評価しなかった。

 根尾のピッチングを見ていると177センチという身長が信じられない。真上から腕を振るのでボールが意表を突くくらい高いところから飛び出してくるような印象があり、182、3センチあるのではないかと思ってしまう。さらにこの高い位置から縦・横2種類のスライダーを投げ分け、ディフェンス面では名ショートらしくバント処理などで見せるフィールディングやゴロ処理が素晴らしく、1-6-3の併殺で見せる瞬時の状況判断など悪いところが見当たらない。準々決勝までは柿木、それ以降は根尾というのが私の投手部門のナンバーワンだ。

[page_break:藤原恭大と根尾昂のナンバーワン野手争い]

藤原恭大と根尾昂のナンバーワン野手争い

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増田 陸(明秀日立)

――好打者の条件:始動、ステップなどの動きが小さく、反動を封じ込める打者のこと

 最初に断っておくと、根尾を投手部門で選んでいなければ、遊撃手のナンバーワンは根尾だった。タイミングの取り方、打球の強さなど文句のない素質で、投手としての素晴らしさを見た後でもゆくゆくは野手一本でやっていくんだろうなと思えるくらい、野手の素質を強く感じた。さて、野手はまず各ポジションに候補者を並べたい。

[捕]高内希彦根東3年・右右・176/76)
  東妻純平(智弁和歌山2年・右右・172/74)
  渡部雅也日大山形2年・右右・182/84)
[一]文元洸成(智弁和歌山3年・右右・174/80)
  深見直人創成館2年・右左・176/100)
[二]黒川史陽(智弁和歌山2年・右左・180/80)
  富里尚史松山聖陵3年・右左・170/60)
[三]北村恵吾近江3年・右右・183/86)
  成瀬和人静岡3年・右右・177/80)
  林晃汰(智弁和歌山3年・右左・181/88)
  下山悠介(慶応3年・右左・176/74)
[遊]村松開人静岡3年・右左・170/70)
  増田陸明秀日立3年・右右・178/81)
  小松勇輝東海大相模3年・右左・172/67)
  松浦佑星富島2年・右左・171/65)
  日置航日大三3年・右右・176/78)
  小幡竜平延岡学園3年・右左・180/73)
[外]藤原恭大大阪桐蔭3年・左左・181/78)
  森下翔太東海大相模3年・右右・180/77)
  齋藤來音静岡2年・右左・179/74)
  上田優弥日本航空石川3年・左左・186/97)
  北野凱士明秀日立2年・右左・174/70)
  梶田蓮三重3年・右左・169/66)
  梶山耀平東海大相模3年・右左・165/70)

 打者の評価も投手同様、フォームを第一に考えた。投手の投げる球にタイミングをいかに合わせるのか、ということがバッティングでの最重要課題で、それをはかる目印が打席の中で「急がない」こと。

 投手のフォームに合わせて前足から始動し、ステップする動きまでゆったり、慎重に動いてタイミングを合わせる、口で言えば簡単だが、調子の下降とともに打席の中の動きはどうしても性急になってくる。3回戦まで智弁和歌山の林晃汰を高く評価しなかったのはそのためだ。清宮幸太郎(日本ハム)のようにバットをこねる動きをするが、清宮が脱力するためにバットを動かすのに対して、林はバットが動くほどに体全体に力みが増し、ストレートに差し込まれる原因になる。それでもベストナインの候補に入れたのは創成館戦のホームランを見たからだ。

 林のチームメート、文元は打席の中で大きな動きがなく、左右広角に安定して打てるのが強みだ。同じ三塁手の北村、成瀬、下山にも打席の中で急がないよさがあり、大会前、長打力が評判だった瀬戸内の4番門叶直己(3年)は始動、ステップともゆったりした動きがなく、体を割ったときのトップ時の割れが不十分だったこともあり、この候補からは外した。

 遊撃手は豊作だった。増田、小松が私の中のトップ2で、増田は1回戦の慶応戦であとホームランが出ればサイクル安打という大当たりで、2回戦の高知戦でも2安打を放った。対する小松は4強チームの1番打者として難敵相手の3回戦以降、長打を連発。3回戦の静岡戦では第5打席で三塁打を放ち、三塁到達タイムは俊足と認められる11.32秒(今大会2位)、準々決勝の日本航空石川戦では第1打席でホームラン、準決勝の智弁和歌山戦では第1打席で三塁打を放ち、このときの二塁通過時が7.99秒という速さだった。

 外野手は足の故障を抱えたままプレーした藤原が優勝校の4番らしく、重要な場面での強打が目立った。智弁和歌山との決勝では3対2で迎えた8回裏、無死二塁の場面で変化球を狙い打ってレフトの頭を越える二塁打を放ち4点目の走者を迎え入れ、準決勝の三重戦では延長12回裏、接戦に終止符を打つ二塁打を逆方向の左中間に放ち、勝負強さを遺憾なく発揮した。

 藤原以外では静岡の2年、齋藤來音が打つ形のよさに加えて、俊足、好守・強肩でも目立つ存在。昨年秋の2番からこの春は3番を任され、2回戦の駒大苫小牧戦ではホームランが出ればサイクル安打という猛打を記録、主役だった3年の村松、成瀬という好打者を脇に押しやった感がある。

 投手と同様に好打のベスト8を選ぶと、藤原、根尾、齋藤、小松、北村、上田、文元、増田という顔ぶれになる。ナンバーワンの選定は難しいが、根尾が最も華々しく、遊撃手としてのディフェンス面でも傑出した動きを見せ、藤原を上回ったような気がする。

(文・小関 順二

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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