Column

神宮大会を沸かせた逸材たち 期待のドラフト候補を徹底総括

2017.11.15

 明徳義塾の優勝で幕が閉じた明治神宮大会。今年は1万人以上の観衆が訪れるなど、見ごたえのある大会となった。今回はそんなドラフト候補たちを総括したい。

勝てるピッチングを見せた市川悠太

神宮大会を沸かせた逸材たち 期待のドラフト候補を徹底総括 | 高校野球ドットコム
市川悠太(明徳義塾)

 今大会、評価を全国レベルのピッチャーであることを不動のものとしたのが明徳義塾市川悠太だろう。右足の内転筋を痛め、さらに右手の爪が割れ、最速145キロを誇るストレートも、今大会は142キロにとどまり、ほとんどが134キロ~139キロだったが、それでも回転数が高く、本気で投げ込んでくるときのストレートは大学生を見ているかのようなストレートだった。市川はショート気味に食い込んでくるストレートで攻める投手だったが、今大会はアウトコースへのスライダーを有効的に使い、決勝戦では4安打完封。創成館の好打者・峯 雄汰は「インコースのストレートを標準に絞っていたけど、アウトコースのスライダーが良かった」と創成館打線の勢いを止めていた。

 不調ながらも、ストレートの切れ、変化球の切れともにドラフト候補としての片りんを見せた市川。この冬は故障の回復、体力強化が課題となる。10試合完投の源は体幹トレーニング。毎日10種類以上の体幹トレーニングのメニューをこなし、スタミナを強化してきた。関節が柔らかく、その柔軟性を失わない程度のトレーニングをしたいと語るように、意識の高さも見られる。来春、ドラフト上位候補の評価を与えられるような投手へ成長するのか注目したい。

 創成館川原 陸七俵 陸の両左腕はともに踏み込み足が広いフォームから繰り出す135キロ~130キロ後半のストレートは威力があり、体格が良く、その後、大化けが期待できそうな逸材。また右オーバーとサイドを投げ分けする伊藤 大和も140キロを超える。これほどの素材が集まった創成館は全国トップレベル。この神宮大会の経験が選抜にどう生きるか。いずれは上の世界を狙える逸材として引き続きチェックしたい選手だ。

 大阪桐蔭の147キロ右腕・柿木 蓮、192センチの大型左腕・横川 凱は、平均球速が130キロ中盤と不調に終わった。実力不足というより、コンディション、メカニクスなどをもう一度見直して復活してほしい。

 甲子園で最速145キロを計測した大橋 修人も、常時130キロ後半にとどまり、140キロ連発はならなかった。「自分が良いときは指にかかったストレートが投げることができる。今はそれができない。そのストレートを投げるために答えを探している最中」ともがきながら上達のヒントを探っている。

[page_break:今大会で野手として大きく評価を高めた大谷拓海(中央学院)]

今大会で野手として大きく評価を高めた大谷拓海(中央学院)

神宮大会を沸かせた逸材たち 期待のドラフト候補を徹底総括 | 高校野球ドットコム
大谷拓海(中央学院)

 野手では今大会の主役として期待された大阪桐蔭根尾 昂藤原 恭大大阪桐蔭山田健太は不調に終わった。今、大会が終わっても、3人は全国的に見てもトップレベルの選手であることは変わりなく、ぜひ悔しさを冬の練習にぶつけ、選抜では当たりを戻してほしい。

 今大会評価を挙げた野手は成瀬 和人静岡)だろう。今大会、打率.571を記録したが、何より光ったのは腰が据わり、鋭いスピンから放たれる強烈な打球である。打席の存在感、逆方向へ鋭い打球を打ち返す技術の高さは、今大会でもトップクラスだった。また静岡村松 開人初戦日本航空石川戦で3安打。打球の速さはもちろん、俊足、軽快な遊撃守備ともにハイレベル。ドラフト候補として注目したい選手だ。

 二刀流だと根尾昂が注目されるが、スケールという点では、大谷 拓海中央学院)はかなり凄みのある選手へ成長しそうだ。投手ではなく、野手として。投手としては130キロ後半の速球とフォークで武器にする大谷は全国的に見ても好投手として推せる。ただ明徳義塾市川 悠太から逆方向へ打ち込んだ本塁打を見ると野手として魅力を感じる。根尾も体幹の強さ、反応の良さで本塁打にできる選手だが、将来、どちらが本塁打を量産できるかといえば、大谷である。

 投手としてもまだまだ伸びしろがある選手なので、しっかりと体が完成して、判断するスカウトもいるかもしれない。千葉県では久しぶりに現れた投打ともに凄い逸材なので、ぜひ両面で凄いと思わせるパフォーマンスを見せることを期待したい。

 日本航空石川の4番上田 優弥静岡戦では3安打。打球の速さは必見だが、もう少し打球の角度をつけてほしい。スイング軌道、腰の使い方、下半身の使い方などが変わってくると、評価も変わってくる選手だ。

 以上が明治神宮大会で光る活躍を見せたドラフト候補たちである。これまでの地方大会を見ていても、まだまだ成長を期待したい逸材は多くいる。ぜひ選抜では、スケール感たっぷりのパフォーマンスを見せて、ファンを興奮させることを期待したい。

(文・河嶋 宗一

神宮大会を沸かせた逸材たち 期待のドラフト候補を徹底総括 | 高校野球ドットコム
注目記事
2017年秋季大会 特設ページ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.16

【春季埼玉県大会】2回に一挙8得点!川口が浦和麗明をコールドで退けて県大会へ!

2024.04.16

【群馬】前橋が0封勝利、東農大二はコールド発進<春季大会>

2024.04.16

社会人野球に復帰した元巨人ドライチ・桜井俊貴「もう一度東京ドームのマウンドに立ちたい」

2024.04.17

仙台育英に”強気の”完投勝利したサウスポーに強力ライバル現る! 「心の緩みがあった」秋の悔しさでチーム内競争激化!【野球部訪問・東陵編②】

2024.04.17

「慶應のやり方がいいとかじゃなく、野球界の今までの常識を疑ってかかってほしい」——元慶應高監督・上田誠さん【新連載『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.1】

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!

2024.04.15

四国IL・愛媛の羽野紀希が157キロを記録! 昨年は指名漏れを味わった右腕が急成長!

2024.04.12

【九州】エナジックは明豊と、春日は佐賀北と対戦<春季地区大会組み合わせ>

2024.04.11

【埼玉】所沢、熊谷商、草加西などが初戦を突破<春季県大会地区予選>

2024.04.09

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード