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【愛顔つなぐえひめ国体・総括】坊っちゃんでの「愛顔(えがお)」を 四国次世代へ「つなぐ」ために

2017.10.11

【愛顔つなぐえひめ国体・総括】坊っちゃんでの「愛顔(えがお)」を 四国次世代へ「つなぐ」ために | 高校野球ドットコム
大阪桐蔭vs済美のヒトコマ

3日間観客動員「27,479人」。大盛況だった坊っちゃんスタジアム

10月7日(土)1日目 9,354人
10月8日(日)2日目 9,069人
10月9日(月・祝)3日目 9,056人
3日間計   27,479人

 これが「第72回国民体育大会(愛顔つなぐえひめ国体)高等学校野球(硬式)競技会」 における[stadium]坊っちゃんスタジアム[/stadium]の公式観客動員数である。

 6日(金)は無念の雨天中止で日程は3日間に短縮されたにもかかわらずこの数字。「近年の同競技会観客動員でも2009年の新潟国体(トキめき新潟国体)<HARD OFF ECOスタジアム新潟開催>に次ぐ観客動員数になります」と、松山市大会運営事務局もこれには驚きを隠さない。

 夏の甲子園6本塁打の中村 奨成(広島広陵3年・捕手)や大阪桐蔭徳山 壮磨(投手・3年)、藤原 恭大(中堅手・2年)、花咲徳栄清水 達也(3年・投手)、仙台育英西巻 賢二(遊撃手・3年)といった侍ジャパンU-18代表選士をはじめとする甲子園スターのラストユニフォームを観に、全国からの数多くの高校野球ファンが愛媛県へと足を運んだ今大会。それと同時に[stadium]坊っちゃんスタジアム[/stadium]の大盛況は「野球王国」愛媛県民の高校野球に対する関心の高さを改めて証明した。

[page_break:地元代表・済美が大阪桐蔭に「スタンダード」示す奮闘、次世代高校野球示唆する「タイブレーク2イニング」も]
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好投を見せた八塚(済美)

地元代表・済美が大阪桐蔭に「スタンダード」示す奮闘、次世代高校野球示唆する「タイブレーク2イニング」も

 大会全体を見渡すと11試合で10本塁打と大会68発が飛び出した夏の甲子園における流れを引き継ぐ形に。初優勝を果たした広島広陵、準優勝の大阪桐蔭を筆頭に各打者のスイング力の強さは、観客を大いに楽しませた。

 その中でも1回戦のトピックスは愛媛県開催地代表として13年ぶり2度めの国体出場となった済美の奮闘。特にエース・八塚 凌二は9回裏こそ「(3回戦で9回表に盛岡大附に追い付かれ、延長10回に屈した)甲子園のこともあって抑えようと思って力んでしまった」サヨナラ3ランで力尽きたものの、大阪桐蔭打線相手に社会人・伯和ビクトリーズに進んでも通用するスライダー、チェンジアップを要所で低めに投げる心憎い投球。

 一方の打線も8安打中4安打が長打と、愛媛大会・甲子園での戦いを踏襲した。「(6回表に)逆転したタイミングが少し早かった」と悔しさをにじませつつ「3年生は本当によくやってくれた」と称賛を惜しまなかったのは試合後の済美・中矢 太監督。この戦い方は今後、愛媛県代表が全国で戦う上でのスタンダードとなっていくだろう。

 また、2回戦・東海大菅生vs盛岡大附戦では、大会規定により延長10回無死一・二塁からの選択打順タイブレークでも決着が付かず。延長11回は延長10回からの継続打順でタイブレークを行うという来春センバツで導入される「延長13回以降タイブレーク」での戦い方を示唆する出来事も生じた。

 試合後、指揮官としてははじめて先攻でのタイブレークを経験した元中日ドラゴンズ投手の東海大菅生若林 弘泰監督が「投手の立場としては抑えて裏を迎えたいので先攻の方がいいし、今後はタイブレークの練習も必要かもしれません」と感想を述べれば、2015年春季東北大会1回戦・秋田商戦でタイブレークを経験しているものの、2イニング目のタイブレークとなった盛岡大附関口 清治監督は「タイブレークは一度9回までの流れが切れてしまうので怖い部分がある。だから、タイブレークになった時は相手との力関係を見て作戦を立てないといけない」と言及。

 社会人野球では「無死一・二塁からの送りバント→敬遠」を視野に入れ、一死満塁からはじまるタイブレーク方式を含め、本来の目的「投手の負担軽減、選手の疲労軽減」を具現化するために、何がベターな選択なのか?まだ議論の余地があることを感じさせる一戦であった。

[page_break:愛顔(えがお)をつなぐため愛媛・四国高校野球がなすべきこと]
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みきゃんと映る広陵ナイン

愛顔(えがお)をつなぐため愛媛・四国高校野球がなすべきこと

 そして今大会は愛媛県高野連、松山市大会実行委員会の皆さんはもちろんのこと、松山市周辺から早朝~深夜にかけて力を注いでくれたボランティアスタッフ。そして[stadium]宇和島市営丸山公園野球場[/stadium]で開催刺された「軟式の部」で役割を果たした南予地区含め、それぞれの役割を「オール愛媛」でおもてなしの心を貫いた指導者のみなさん、野球部員、マネジャーたちがいなければ、到底成り立たなかった。この場を借りて改めて「本当に、ありがとう」と感謝の言葉を述べたい。

 ただ、大事なのは「国体後」。大会中は全国レベルの選手たちがスポットライトを浴びる場所に到達する裏で、守備やバックアップなど基本を大事に練習し、的確な準備をし、試合中も常に情報を収集していることに触れる機会も多かったはず。指導者、1・2年生たちがそれをどのような形で消化し、チーム力、人間力アップにつなげるか。全国レベルのチーム来訪に対する強い関心を継続するための「招待試合」開催も含め、今大会で得たことを全力で学び、実践する。これが全力で戦ってくれた10チームに対する恩返しであろう。

 今大会の成功は愛媛県・四国地区の全国躍進、未来を担う若者たちの輩出ではじめて完結するもの。「高校野球」が愛媛県・四国地区にとっていまだ支持されるべき対象であることが証明された今、愛情のこもった笑顔「愛顔(えがお)」を私たちは未来永劫つないでいくスタートラインにしていこうではないか。

(文・寺下 友徳

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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