【U-18ワールドカップ総括】世界レベルの逸材は誰だ!きらめく逸材を徹底紹介!
201センチの長身から常時150キロ台を記録するハンキンス。世界に衝撃を与えた
9月1日から始まった第28回WBSC U-18ベースボールワールドカップはアメリカの優勝で幕が閉じた。今回は世界各国の逸材を紹介していきたい。いずれ紹介する選手たちがプレミア12、WBC、東京五輪などに登場することを期待したい。
知れば知るほど高い壁を感じる今年のアメリカ代表のレベルの高さ
優勝したアメリカ。2年前よりもずっと強いチームとなっていた。選手たちの力量を知ると、世界一になるべくしてなったチームだった。
一番のウリは、150キロ超えが4人いる世界一の投手陣だ。4人の中で、最もスケールがある投手は、イーサン・ハンキンスだ。日本で言う高校2年生ながら、201センチ96キロと恵まれた体格から常時150キロ前後の速球と切れ味鋭いスライダーを武器にする大型右腕。ステップ幅が狭く、小回りが利いた投球フォーム。そうしないとうまく自分の身体を制御してコントロールあるボールを投げることができないのだろう。2試合を投げ、12イニングで27奪三振と驚異的な奪三振を記録。ドラフト対象年になった時、どんな評価を受けてMLB入りするのか、今から楽しみな投手である。
またキューバ戦で、7回1失点の好投、決勝戦の韓国戦でも好投を見せたミッチェル・ウィルコックスも195センチ99キロの長身の剛腕右腕で、長いリーチを生かしたフォームから繰り出す直球はコンスタントに150キロ~153キロを計測。とにかく力で抑えるピッチャーながらストレートのコマンド能力は高い投手だ。
ドラフト1位候補に挙がるクマ―・ロッカーも、2試合登板で、4.2回を投げて6奪三振。今大会、調子があまり良くないように見えたが、それでも、常時150キロ前半のストレート、140キロ近いカットボールを披露。ポテンシャルの高さを見せつけた。そして今大会の胴上げ投手となり、日本相手にも圧巻のピッチングを見せたジョン・ギン。今大会3試合で2.1回で、3奪三振ながら、マックス153キロのストレートはすべて動くボール。140キロ近いカットボール、130キロを超えるナックルカーブと変化球もハイクオリティ。高校生のレベルを超えた投手だった。
他でも日本戦でも好投を見せた146キロ左腕・ライアン・ウェザーズや、最速149キロ左腕・マシュー・リベラトーレなど145キロ超えの投手が多く投手陣のレベルは、日本を基準にすると、NPBと変わりないぐらいポテンシャルが高い投手が多かった。そういう投手を多く抱えるアメリカは本当に強かった。
日本戦で本塁打を打ったカサスの配球シーン
一方、打者も逸材が多かった。日本戦で豪快な左中間へ本塁打を放ったトリントン・カサス。大会通算3本塁打13打点をマーク。決勝の韓国戦では試合を決める豪快な本塁打を放ち、MVPを獲得した。カサスはストレート、変化球の対応力が高く、ここぞという場面で集中力を発揮する強打者。嫌らしい選手だった。
スーパーラウンドのオーストラリア戦でセンターから大ファインプレーを見せたマイケル・シアニはバットコントロール、脚力、守備範囲の広さはもちろん、物おじしない攻撃的なプレースタイルが素晴らしい選手だった。また3番を打つジャレッド・ケレニックは、穴がなく、全方向に鋭い打球を打てる左の強打者で、脚力もあり、日本でいうと中村晃(福岡ソフトバンク)のような選手だった。玄人受けするのは、ブライス・トゥラング。非常にハイレベルなショートで、打球反応の良さ、肩の強さ、守備範囲の広さ、プレーの確実さどれをとっても一級品で、NPBのショートと比較しても遜色ないレベルだ。
長くなってしまったが、それだけ今年のアメリカのナショナルチームは、逸材揃いで、このチームを破るにはかなり高い壁だったとお伝えしたい。
[page_break:今から覚えておきたい世界レベルの逸材]韓国の4番カン・ベクホは清宮幸太郎クラスのスラッガー
今から覚えておきたい世界レベルの逸材
準優勝の韓国は、投手陣のレベルが高かった。エースのクァク・ビンは140キロ前半ながら球質は重く、多彩な変化球を低めに集めるピッチングは社会人の投手を見ているようだった。またキム・ミンも大谷翔平を彷彿とさせるフォームから繰り出すフォームから140キロ後半をたたき出し、荒削りながら、ソ・ジュノンは、右サイドながら、常時140キロ~147キロの速球、スライダー、ツーシームを駆使する本格派サイド。決勝戦で打ち込まれた悔しさを糧にできるか。
日本戦で長打を打ったカン・ベッコの長打シーン
打者では4番を打つカン・ベッコが別格。柳田悠岐ばりのフルスイングから広角へ本塁打を打つ技術とパワーがあり、変化球にもしっかりと合わせることができる対応力の高さもあり、捕手としては素晴らしい強肩を持っているが、捕ってから投げるまでが遅く、阻止率は低い。大会後、KTウィズに指名されたカン・ベッコ。投げても最速156キロを誇る剛腕で、二刀流として起用される可能性が高い選手。もしプロで捕手をやるには、まだまだ身に付けないといけない選手だろう。ただ世界的に見てもスラッガーとしてのレベルはハイレベル。いずれはトップチームで活躍することを期待したい。そして大会後、アトランタブレーブス入りが噂されるペジファンは、今大会屈指のショート。打球反応の良さ、スピード感あふれる動き、シュアなバッティングは韓国の源田壮亮とイメージすると分かりやすいかも。
スーパーラウンドに進出したチームを見ると、4位のカナダは強打者が多く、その中でノア・ネイラーは注目の強打者。左打席から放たれる鋭い打球は、必見。懐が深く、いつでも長打を打てる雰囲気を持っている。4番を打つブルックマン(BROOKMAN Archer)だ。打率.219ながら、2本塁打、11打点。荒削りながら、リーチの長さを生かし、豪快な打球を放つ右のスラッガーだ。また捕手であるブルックマンはかなりの強肩で、座った状態から鋭い返球をする恐ろしい捕手である。
キューバは、大会首位打者のセサル・プリエトもバットコントロールの良さが光った。スーパーラウンドに進出できなかった台湾。チームとしての結果は、残念だったが、それでもハイレベルな逸材が実に多かった。劉 致榮は注目の二刀流。140キロ前半とカーブのコンビネーションで大会2試合登板で防御率1.98を記録した本格派右腕でありながら、打者としても、打率.316を記録し、才能を秘めた選手。2年生ショートの郭天信は33打数12安打、打率.364を記録した好打のショート。リズミカルの守備で好守備を連発。スピード感あふれるプレースタイルが光った。
オランダは、最速146キロ右腕・ブリークは、フォーム技術が高く、さらに制球力、変化球の精度も高い。近い将来、オランダのトップチームでプレーしていてもおかしくない投手だった。またパドレスのマイナーリーグでプレーしているアポステルはストレートにめっぽう強く、鋭い打球を連発する強打の三塁手。三塁手としても肩が強く、さらに攻守の技術を高め、いずれMLBに上り詰めることを期待したい。メキシコのエース・ガルデア・アコスタは145キロ前後の速球を投げ込む大型右腕。ストレートは微妙に揺れ動いており、変化球の精度も悪くない。マイナーでプレーしていてもおかしくないだろう。
世界大会はすでにプロでプレーしている、あるいはドラフトで指名されている選手が入り混じっており、高校生のレベルを超えた選手が多くみられるのがこの大会の面白さである。今回は世界トップレベルのアメリカの凄さを随所に知ることができた。ぜひ多くの選手が母国のトップチーム代表、各国のプロリーグ、そして世界最高峰のMLBで活躍することを期待したい。
(文・河嶋 宗一)
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