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甲子園で涙したミレニアム世代の投手たち この悔しさは来年で晴らす

2017.08.26

甲子園で涙したミレニアム世代の投手たち この悔しさは来年で晴らす | 高校野球ドットコム
左から柿木(大阪桐蔭)、万波(横浜)、市川(明徳義塾)、戸田(東海大菅生)

 第99回全国高等学校野球選手権は、花咲徳栄の優勝で幕が閉じた。来年は第100回大会を迎えるということもあって、例年以上に2年生は「ミレニアム世代」として注目を浴びている。今回は投手、野手に分けて、来年期待の選手を紹介したい。

 今年は才能豊かな投手が多く現れたが、その多くが「潜在能力の高さを証明しながらも悔しい負け方をしている」という点である。その代表格が大阪桐蔭柿木 蓮だろう。柿木が甲子園で魅せたピッチングは掛け値なしに素晴らしかった。1学年上の徳山壮磨は実戦的なフォーム、球筋だが、柿木は躍動感あふれる投球フォームから繰り出すストレートは破壊力抜群。130キロ近いスライダーも魅力で、来年には150キロ越えも期待できるのではと思わせるポテンシャルの高さがあった。順調にいけば、来年のドラフト候補となるだろう。しかしその柿木は仙台育英戦でサヨナラ負けを喫した。完封勝利まであと1人に迫りながらの敗戦はかなり悔しいものがあったはず。逆にこの敗戦が柿木を大きくさせるのではないかと信じている。

 またベスト4の東海大菅生戸田 懐生もいかにも強気な顔立ちした投手で、猛々しい投球スタイルで立ち向かっていく投球は見事だった。171センチと小柄とはいえ、常時140キロ前後のストレートは威力抜群。130キロを超える縦スライダーの精度も魅力だった。投球の基礎はほぼ出来上がっているので、自分の器をどう大きくするのか、排気量をどう高めていくのかを追求してほしい。準決勝・花咲徳栄戦で8回表に2失点した経験を成長のきっかけにしてほしい。

 準優勝の広島広陵は、2年生右腕・森 悠祐のピッチングが目を惹いた。力強い腕の振りから投じる常時140キロ中盤・最速147キロのストレートはエース・平元銀次郎よりも威力があった。しかし成績は芳しくなく、1.1回を投げて、自責点5と悔しいピッチングに終わった。その森に、中井 哲之監督は、ある温情を見せた。決勝戦の9回表、二死。中井監督は森をマウンドに送った。相手は3番西川 愛也花咲徳栄が誇る強打者相手に森は全力投球。最後はスライダーで空振り三振に打ち取った。これが甲子園唯一の三振だった。それまで打たれた悔しさと最後で三振に奪った自信を糧にして、今度は森で甲子園に導けるエースになってほしい。

 来年は北信越地区の投手が面白い。最速148キロ右腕・日本文理 鈴木 裕太日本文理)、最速145キロ右腕・大橋 修人日本航空石川)、最速142キロ右腕・直江 大輔松商学園)、最速148キロ左腕・山田 龍聖高岡商)と目白押しだ。しかし4人とも打たれた。鈴木は、2イニングで無失点。最速145キロを計測したものの、ボールが高めに浮いて、回転数が欠けるストレートとなっており、打者からすれば打ちやすいストレートとなっていた。スケールを失わせず、実戦力を付けることが課題だろう。大橋は、上半身、下半身が連動された投球フォームから繰り出す140キロ前半のストレートは、キレがあり、スライダーの切れも良かった。しかし登板した8回表は無失点に抑えたものの、9回表はエラーが重なり、3失点とほろ苦い甲子園デビューとなった。この経験を糧に、さらなる成長を見せることを期待したい。

 直江は投球フォームのバランスが良く、回転の良いストレート、カーブは見ごたえがあった。まだ細身で体ができてくれば、それに応じてストレートの球質、球速も上がってくるタイプといっていいだろう。しかし登板した盛岡大附戦では、2.2回を投げて2失点と悔しい結果に終わった。全国レベルの打線と対戦した経験は直江によって大きな経験になったことは間違いなく、秋の大会に活かすことができるか。

 山田は、力任せのフォームとなり、140キロ中盤出ていたが、ボールが高めに浮いてしまい、大量失点のきっかけをつくってしまった。まさに未完の大器で、高校2年生ながら常時140キロ台叩き出せる投手はそんなにいない。甲子園の反省から、ほぼ打たれない左腕へ成長するのか、注目していきたい。


 また初戦敗退した大垣日大も、2人の2年生右腕も期待が持てる内容を残した。 修行 恵大は、183センチ70キロと長身から投げ込む右投手。まだ腰の開きが早く、縦回転の動きができていないが、それでもしっかりと振り下ろす角度ある130キロ後半のストレートは高い将来性を感じる。そして5回途中から登板した杉本 幸基も胸郭をうまく使うことができる投手で、テークバック・リリース・フィニッシュの一連の流れまで綺麗で、しっかりと腕を振ることができて、コンスタントに140キロ前後の速球を投げ込んだ。将来的には、140キロ後半の速球まで速くなる可能性があるだろう。

 明徳義塾市川悠太も、右サイドから常時140キロ前後のストレート、130キロ前半のツーシーム、120キロ台のスライダーを両サイドへ散らせるピッチングは高校2年生としてはかなり高度だった。しっかりと体を作り、常時140キロ中盤まで速くなり、プロのサイドスローピッチャーに見られる浮き上がるような軌道を手に入れた時、高卒プロが近づくことだろう。

 平田龍輝智辯和歌山)は、183センチの長身から最速144キロの速球、切れ味鋭いスライダーのコンビネーションで抑える投手で、来年の近畿地区を引っ張る本格派右腕として見逃せない存在。

 最後に紹介したいのが万波 中正横浜)だ。高校1年春から公式戦に出場。入学当初からスラッガーとしての育成が進んでいたが、秋から始めた投手の方が高いレベルで活躍できる可能性を秘めている。外国人特有のステップ幅が狭い投球フォームから繰り出すストレートは最速146キロを計測。さらに曲がりが鋭い変化球を持ち合わせており、ボール1つ1つの精度が高かった。投打ともに荒削りだが、どちらかというと投手の方が実戦的。フォーム特性上、日本人のような下半身主導のフォームは難しいので、万波の場合は外国人投手のフォームを参考にしながら、世代を代表する剛腕投手に成長してほしい。

 以上が今回紹介したいミレニアム世代の一面である。多くの投手が満足できるピッチングはできなかった。逆に、それが良いのではないだろうか。悔しさを味わった多くの2年生投手が来年、甲子園を沸かせるピッチングを見せることを期待したい。

(文・構成:河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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