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センバツを沸かせた根尾、小園、野村などスーパーミレニアム世代が来年の第100回大会を盛り上げる!

2017.04.20

 来年、8月5日から開催される第100回全国高校野球選手権記念大会は史上最多の56校が出場する。まさに記念すべき年に、3年生を迎える選手たちは逸材ぞろいで、スーパーミレニアム世代と呼ばれる。今回はセンバツで注目を集めたスーパー2年生たちの活躍ぶりをスポーツライター・小関順二氏が振り返る。

高校2年生は逸材揃いのスーパーミレニアム世代!

センバツを沸かせた根尾、小園、野村などスーパーミレニアム世代が来年の第100回大会を盛り上げる! | 高校野球ドットコム
左から根尾 昂(大阪桐蔭)、山田 健太(大阪桐蔭)、山下 航汰(健大高崎) ※写真=共同通信社

 今年の高校2年生は逸材揃いだ。さらに2000年生まれということもあって「スーパーミレニアム世代」と呼ばれている。一般的によく知られているのは飛騨高山の古川中学時代、投手としてストレートが146キロを計測し、全国中学校スキー大会ではスラロームの部で優勝している根尾昂大阪桐蔭・投手&遊撃手&中堅手・右左・177/75)である。中学時代の実績と、高校ナンバーワンの実績を誇る大阪桐蔭で1年夏からベンチ入りした実力が評価され、その知名度は群を抜いている。

 また超高校級スラッガー、清宮幸太郎を擁する早稲田実業は、たとえば走者二塁の場面で清宮が敬遠されることを考えなければならない。星稜時代の松井秀喜(元巨人など)が92年夏の甲子園で明徳義塾バッテリーから5打席連続敬遠され、2対3で惜敗した過去を教訓にするなら、清宮のあとを打つ打者に実力者を据えるのが最も賢明な策である。その候補者として白羽の矢が立ったのが野村大樹早稲田実業・三塁手・右右・172/80)である。

 根尾は今センバツで、優勝校のレギュラーとして5試合に出場した。静岡戦では4番手として登板、ストレートが最速146キロを計測して素質のよさを改めて見せつければ、野村は2試合で通算9打数5安打2打点、打率.556という安定感のあるバッティングで注目を集めた。

 話題性でも実力でも2人は「スーパーミレニアム世代」にふさわしい存在だが、彼らに負けないくらい注目を集めるスーパー2年生が今センバツには数人いた。根尾、野村を含めて、今センバツで注目した2年生を別表に紹介したので見てほしい。

 正直に言うと、根尾、野村よりよく見えた選手がいた。遊撃手の小園海斗報徳学園・右左・178/73)と中堅手の藤原恭大大阪桐蔭・左左・181/78)だ。

 小園は走塁と守備だけなら今年のドラフト候補の中でも上位に入る。走塁で凄いのは準決勝の履正社戦、第3打席でセンターフライを打つのだが、このときの二塁到達タイムが7.76秒だった。準々決勝の福岡大大濠戦、第3打席でも同様にセンターフライを打ち、このときの二塁到達タイムが7.99秒。単に足が速いだけでなく、ゲームへの参加意識の高さがこの走塁からはうかがえる。

 ちなみに、私がストップウォッチで計測した小園の打者走者としての各塁到達タイムは以下の通りである。驚くことに私が全力疾走・俊足の目安にしている打者の走者の「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12秒未満」を、10回の計測機会のうちすべてクリアしている。全力疾走率10割は私の計測史上で初の快挙である。

[page_break:根尾、野村だけではない「スーパーミレニアム世代」の選手たち]

根尾、野村だけではないスーパーミレニアム世代の選手たち

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小園 海斗(報徳学園)

【センバツでの小園海斗報徳学園)の各塁到達タイム】
◇1回戦/多治見
第二打席:遊撃ゴロ3.97秒
第三打席:三塁打11.27秒
第四打席:二失4.06秒

◇2回戦/前橋育英
第二打席:一塁ゴロ4.09秒
第三打席:右前打4.24秒

◇準々決勝/福岡大大濠
第三打席:中飛7.99秒

◇準決勝/履正社
第一打席:中前打4.02秒
第二打席:左前打4.15秒
第三打席:中飛7.76秒
第五打席:右前打4.08秒

 小園は守備もうまい。フィールディングとスローイングに軽快さと強さが同居し、たとえば根尾と比較すると、根尾のほうは人からうまいと思われたい、強肩と思われたいという欲が見え、それがフィールディング、スローイングを不安定にしているきらいがあるが、小園からはそういう雑念が感じられないので安心して見ていられる。

 藤原は大会前から左肩の故障があり、今センバツは万全の出来ではなかった。準決勝までの成績は19打数2安打、打率.105という停滞ぶり。それでも西谷浩一監督は1番・中堅手としてスターティングメンバーで起用し続け、最後の最後、決勝の履正社戦の2本塁打に結実させた。選手も立派だが監督もたいしたものである。

 第1打席の先頭打者ホームランは内角低めのスライダーを捉えた一発で、第3打席のソロホームランは2-2からの高めストレートを捕手寄りで捉え、右中間に放り込んだ一発。コースも球種もまったく異なる球を最高の結果につなげているのだから技術力が高いと言う他ない。

 三塁手では早稲田実の野村と大阪桐蔭大阪桐蔭 山田健太(右右・183/85)が双璧だ。
 野村は強打とともに小園同様にゲームへの参加意識の高さで目を引く。2回戦の東海大福岡戦、第2打席で3球目のストレートをセンター前に運び、単打性の打球にもかかわらず果敢に二塁を陥れ(中堅手のエラー)、第4打席ではスライダーをレフト前に弾き返し二塁走者を迎え入れているが、相手守備陣のホーム返球の間に二塁へ進塁している。

[page_break:センバツで印象に残ったスーパーミレニアム世代の投手たち/小関氏がセンバツで注目したスーパーミレニアム世代!]
センバツを沸かせた根尾、小園、野村などスーパーミレニアム世代が来年の第100回大会を盛り上げる! | 高校野球ドットコム
山田 健太(大阪桐蔭)※写真=共同通信社

 山田は1回戦の宇部鴻城戦、4回裏に放った2ランが見事だった。内角いっぱいのストレートに対し腕をたたんで押し込んだ一発で、技術力の高さが証明された。また、1回戦から準決勝まで4試合連続で打点を記録し、通算打率.571、安打12、打点8はともにチームナンバーワンの成績。

 守備もうまい。準決勝の秀岳館戦では2回裏、5番打者がショート寄りに放った強い打球を飛びついて好捕、そのあとのスローイングも低く伸びる球筋で安定していた。

 打者走者の各塁到達タイムに目を向けると、2年生が各分野で上位を占めた。

 バントのときの一塁到達では健大高崎の1番、今井佑輔(中堅手・右右・174/68)が3.85秒で1位。バント以外の一塁到達では福岡大大濠西隼人(中堅手・右左・176/70)が3.79秒で1位。

 二塁到達では大阪桐蔭の藤原が7.72秒で2位、報徳学園の小園がセンターフライのとき7.76秒で二塁に到達し、これが大会3位の好記録。三塁打のときの三塁到達では健大高崎の今井が11.17秒で1位、報徳学園の小園が11.27秒で2位という具合。本当に野手は2年に好素材が揃った。

センバツで印象に残ったスーパーミレニアム世代の投手たち

 投手は反対に物足りなかった。私がいいと思った選手は3人ともチーム内ではエース的扱いではなく、投球フォームの完成度も低かった。

 スピードは2回戦の静岡戦でリリーフした大阪桐蔭・根尾の146キロが最も速く、次いで同校の柿木蓮(右右・183/83)、横川凱(左左・190/85)の143キロ、142キロが続く。この3人の中で最もピッチャーらしいのが柿木である。先輩の藤浪晋太郎(阪神)を思わせる大きい横変化のスライダーを備え、球持ちもいい。

 根尾はたとえばスピードガン競争で投げるイチロー(マーリンズ)のように速いことは速いが、野手が投げているようにしか見えない。下半身主導でなく上半身の強さで投げるタイプに見られる特徴である。西谷監督は1年前、松井稼頭央(楽天)を例に出して育成の方向性を語ってくれたが、今センバツを見て卓見だと思った。

 PL学園時代、松井はピッチャーとしてスカウトの注目を集めていたが、中村順司・当時監督は松井を指名した西武のスカウトに「ブルペン入りさせない」ことを入団の条件にしたという。ブルペンで投げる姿を見ればピッチャーとして育てたくなるのは当たり前。それくらい投手・松井は魅力があったが、本当の才能は野手のほうにあると見抜いて「ブルペン入りさせない」と約束させた。根尾にはこの教訓が生かされていくはずだ。

小関氏がセンバツで注目したスーパーミレニアム世代!

◇投手
宮城 滝太滋賀学園・右右)180/65
柿木 蓮大阪桐蔭・右右)183/83
横川 凱大阪桐蔭・左左)190/85

◇捕手
大柿 廉太郎健大高崎・右右)178/74
雪山 幹太早稲田実業・右左)169/73

◇一塁手
山下 航汰健大高崎・右左)174/77

◇遊撃手
村松 開人静岡・右左)170/70
西山 虎太郎履正社・右左)180/66
根尾 昂大阪桐蔭・右左)177/76
小園 海斗報徳学園・右左)178/73

◇三塁手
野村 大樹早稲田実業・右右)172/81
大阪桐蔭 山田健太大阪桐蔭・右右)183/85

◇外野手
今井 佑輔健大高崎・右右)174/68
髙山 遼太郎健大高崎・右左)175/73
成瀬 和人静岡・右右)176/76
筒井 太成履正社・右左)173/82
藤原 恭大大阪桐蔭・左左)181/78
谷合 悠斗明徳義塾・右右)178/83

(文=小関 順二

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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