第448回 鹿児島の2016年を総括!樟南、鹿児島実「2強」健在も、底辺拡大への取り組みも!2016年12月25日

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【目次】
[1]樟南と鹿児島実の強みとは?
[2]春優勝の神村学園、秋優勝のれいめいも意地を見せる
[3]鹿児島の高校野球がさらに発展するには

 2016年の鹿児島高校野球界で最も印象深い出来事といえば、何といっても樟南VS鹿児島実の決勝戦だろう。延長15回で決着がつかず、史上初の再試合となり、2日間の死闘の末、樟南が3年ぶりとなる夏の甲子園への切符を手にした。長年、鹿児島高校球界の「2強」として全国区の知名度がある両校も、このところ神村学園鹿屋中央といった新興勢力の台頭などで厳しい戦いを強いられることも多くなっていただけに、今年は「2強の勝負強さ、未だ健在なり」の印象が一番強く残った。

樟南と鹿児島実の強みとは?

畠中 優大 (樟南)


 樟南も、鹿児島実も、長年の伝統に裏付けられた明確なチームカラーがあるのが何よりの強みである。の決勝戦は、浜屋 将太(3年)、畠中 優大(3年)の両左腕エースを中心に県内随一の守備力=盾を持つ樟南と、綿屋 樹(3年関連記事)を中心にどこからでも得点できる攻撃力=鉾を持つ鹿児島実、「鉾盾の争い」と表現したが、それはそのまま両チームが長年培った伝統のチームカラーを表している。

 樟南は浜屋、畠中、県内屈指の両左腕を擁する強みを最大限に生かして、3年ぶりに鹿児島の頂点に返り咲いた。決勝戦延長15回再試合の2試合はこの2人の存在抜きには語れないだろう。特に昨夏、熱中症で降板して初戦敗退の屈辱を味わって以降、この1年間結果を残せていなかった畠中の復活が大きかった。鹿児島実戦は最初の試合で先発してゲームを作り、再試合では5回、無死満塁絶体絶命のピンチをリリーフして無失点で切り抜け、勝利の立役者となった。

 浜屋は、小柄ながら、キレのあるスライダーを武器に毎試合2桁奪三振を記録する安定感があり、この1年間、樟南の先発の柱だった。だが「浜屋1人では夏勝てない。甲子園に行くには畠中が必要だった」と前川 大成主将(3年)。山之口 和也監督も「それだけの力を持っており、経験も積んでいる選手」と畠中の復活を期した。その期待に見事に応えた。

 2年生から正捕手で、両投手の持ち味を存分に引き出した前川主将、準決勝まで無失策だった守備…樟南らしい堅実な野球が夏にようやくできるようになった。「打線は水物。最後は守りのチームが勝つ」と準決勝の後で前川主将が語った通り、決勝では最大のライバルに守り勝って夏の甲子園をつかんだ。

 センバツに続く春夏連続出場は果たせなかった鹿児島実だが、夏の決勝を除けばこの1年間は県内公式戦負けなしの実績を残し、鹿児島の盟主としての地位を復活させた。全国でも屈指のスラッガーに挙げられた綿屋主将を不動の4番に据え、板越 夕桂(3年)、追立 壮輝(3年)ら昨夏の甲子園を経験したメンバーを中心に、相手投手に対応して様々な打順を組み合わせる攻撃は、今までの鹿児島実にない斬新さがあった。

 攻撃力に目が行きがちだが、右アンダースローの谷村 拓哉(3年)は浜屋、畠中に引けを取らない粘投を続け、守備から崩れる試合はなかった。高い能力を持つ選手が集まり、ハードな練習で鍛え上げられたチームの底力を感じた。毎朝の裸練習など練習のハードさは昔から続く伝統だが、それに加えて科学的な食事トレーニングなども取り入れている。夏はライバル樟南に敗れたが、どちらの野球も甲子園で見てみたいと思わせるものがあった。

 3年生が抜けた秋の新チームも、メンバーが大幅に入れ替わったが準決勝で優勝候補の筆頭に挙げられた神村学園に勝ち、九州大会でも8強入りした。

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鹿児島実 【高校別データ】
神村学園 【高校別データ】
樟南 【高校別データ】
樟南二 【高校別データ】
川内 【高校別データ】
れいめい 【高校別データ】

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プロフィール

政純一郎
政 純一郎(つかさ・じゅんいちろう)
  • 生年月日 1974年12月18日
  • 出身地 鹿児島市
  • ■ 経歴
    鶴丸高校―同志社大
  • ■ 鹿児島新報で6年間スポーツ担当記者。2004年5月の同社廃刊後、独立
  • ■ 「スポーツかごんまNEWS」を立ち上げ、野球、バスケットボール、陸上、サッカーなど主に鹿児島のスポーツを取材執筆する。2010年4月より奄美新聞鹿児島支局長を兼務
  • ■ 著書に「地域スポーツに夢をのせて」(南方新社)「鹿実野球と久保克之」(同、久保氏と共著)
  • ■ Webでは「高校野球ドットコム」、書籍では「野球小僧」(白夜書房)「ホームラン」(廣済堂出版)「陸上競技マガジン」(ベースボールマガジン)「月刊トレーニングジャーナル」(ブックハウスHD)などに記事を寄稿している。
  • ■ 野球歴は中学から。高校時代は背番号11はもらうも、練習試合に代打で1打席、守備で1イニングの試合経験しかない。現在はマスターズ高校野球のチームに所属し、おじさんたちと甲子園の夢を追いかけている
  • ■ フルマラソンの自己ベスト記録は3時間18分49秒(2010年のいぶすき菜の花マラソンにて)。野球とマラソンと鹿児島をこよなく愛する「走るスポーツ記者」

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