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【高知展望】明徳義塾の独走を止めるのは誰だ?中村、梼原など公立校の戦いにも注目!

2016.09.10

 高知大会では決勝戦で高知中村との激闘を制し、7連覇を飾った明徳義塾甲子園で3年ぶりのベスト4。「高知県代表」としての責任を果たすと同時に四国の盟主たる矜持を示した2016年夏を引き継ぐ形で迎えた秋の高知県大会「第69回秋季四国地区高等学校野球大会高知県予選」。
甲子園帰りすぐの第60回高知県高等学校選抜大会(新人戦)で優勝を飾るなど独走気配を強める明徳義塾に対抗するのはどの学校か?今回はブロック別に展望を加えつつ、夏まで追いかけるべき注目選手についても触れていきたい。

第1シード・明徳義塾ブロック:他を突き放す明徳義塾に高知農業らがどこまで迫るか?

西浦 颯大(明徳義塾)

 県新人戦では準々決勝・梼原戦こそ苦戦したものの、他の3試合を危なげなく勝利し、4年ぶり20回目の大会制覇を飾った明徳義塾に県レベルでは死角は見当たらない。

 特に打線は甲子園3回戦嘉手納戦で豪快な満塁アーチを放った西浦 颯大(2年・右翼手・175センチ72キロ・右投左打・熊本北リトルシニア<熊本>出身)、新チームから正捕手に座った谷合 悠斗(1年・180センチ80キロ・右投右打・岡山メッツ<ヤングリーグ・岡山>出身)が中軸を張り、新人戦準決勝・高知中央戦ではアベックアーチ。6番でのポイントゲッターと守備の要として機能する今井 涼介(2年・遊撃手・170センチ65キロ・右投右打・大阪八尾ボーイズ<大阪>出身)らと共に、甲子園での経験を早くもチームに還元している。

 やや心配な投手陣もセンバツで登板した最速138キロ左腕・北本 佑斗(2年・左投左打・170センチ70キロ・大阪泉北ボーイズ<大阪府>出身)に加え、新人戦では高知市立潮江中時代から高評価を受けていた1年生右腕・市川 悠太(右投右打・182センチ75キロ)が台頭。秋は完全に2本柱の一角を占める勢いである。「自滅」「油断」の二文字が顔をのぞかせない限り、準決勝進出は堅いと言わざるをえない。

 ここに新人戦1回戦で土佐に善戦した伊野商、同じく1回戦で最速133キロをマークし、高知中央の強打線にも互角に渡り合った澤田 侑磨(2年・右投右打・166センチ73キロ・土佐町立土佐町中出身)がエースとして引っ張る高知農。二塁送球2.0秒台の強肩を誇る小松 龍矢(2年主将・捕手・右投右打・168センチ66キロ・安芸市立清水ヶ丘中出身)などポテンシャルある選手が多い高知工がどこまで迫れるかに注目したい。

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[page_break:第3シード・高知中央ブロック:大混戦を抜け出すのはどこ?梼原の動向には要注目!]

第3シード・高知中央ブロック:大混戦を抜け出すのはどこ?梼原の動向には要注目!

 最激戦区のブロックと言っていいだろう。徳島野球倶楽部監督として四国地区の社会人野球で台風の目になってきた大村 研視・新監督率いる第3シード・高知中央はもちろんのこと。新人戦準々決勝で明徳義塾に冷や汗をかかせた梼原、さらに勢いに乗った際には私学を破る力を出せる岡豊に、曲者の高知追手前もこのブロックである。

 高知中央済美(愛媛)から転校し夏の高知大会で最速140キロを出したエースの和田 星哉(2年・右投右打・174センチ80キロ・高知中出身)と、三山 吾郎(2年主将・左翼手・右投右打・185センチ80キロ・尼崎ボーイズ<兵庫>出身)、武田 快徒(2年・一塁手・右投右打・174センチ82キロ・尼崎ボーイズ<兵庫>出身)が組む3・4番は四国屈指といってもよい迫力。彼らを十二分に機能させる周囲のチームプレーが激戦を勝ち抜くポイントとなる。

 対抗馬の梼原は新人戦で130キロ中盤のストレートと切れ味鋭いスライダーで組み立てる浅井 大地(2年・177センチ72キロ・土佐清水市立清水中出身)が完全に一本立ち。明徳義塾戦では8回103球被安打6・奪三振2・与四死球2で2失点(自責点1)完投と惜敗の中にも大きな光明を得た。

 元々は、しぶとい1番の北川 泰成(2年・左翼手・右投左打・174センチ65キロ・南国マリナーズ<ヤングリーグ>出身)、走・攻・守の能力すべてが高い大型長距離砲・溝渕 翔(2年・中堅手・183センチ75キロ・四万十市立中村中出身)など、明徳義塾戦でも10安打を放った打線の確かさには定評がある梼原。それだけに、彼らのクオリティに2007年室戸センバツベスト8に導いた横川 恒雄監督の采配が合致すれば学校初の四国大会出場。その先にある翌年3月の大きなご褒美につながっても何ら不思議ではない。

 さらに大型右腕・伊與田 耕平(2年・右投右打・184センチ78キロ・土佐市立土佐南中)や俊足リードオフマン・大原 鉄也(2年・右翼手・左投左打・170センチ67キロ・高知市立南海中出身)らのタレント力でこれを阻止せんとする岡豊も虎視眈々と上を狙う。

 なお、高知追手前でエースナンバーを背負う坂上 銀河(2年・左投左打・170センチ66キロ・中土佐町立久礼中出身)は「高校に入ってから腕を下げた」(常廣 直樹監督)超変則アンダースロー左腕。新人戦では高知中村を下す原動力となった。左打者の背中から入る独特のストレート軌道は、強豪校を相当悩ませそうである。

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[page_break:第2シード・高知ブロック:低評価を覆しに行く高知に主力が残る中村の一騎打ちか]

第2シード・高知ブロック:低評価を覆しに行く高知に主力が残る中村の一騎打ちか

「新チーム立ち上げから練習試合は10戦以上勝ちなし。こんなことははじめてです」。島田 達二監督がため息をつく。確かに新人戦を見る限り個で見れば高知の力はこの十年で1・2を争う低さである。黒岩 廉(2年・投手・右投右打・181センチ70キロ・室戸市立室戸中出身)、西山 尚良(2年・捕手・180センチ80キロ・安田町立安田中出身)バッテリーにはスケール感があるが、まだ経験が少々足りない印象だ。

 それでも新人戦は決勝進出。コツコツとつなぎ、忠実に試合を運ぶ様は大いに好感が持てた。事実、2009年には同様の低評価で始まったチームが秋季県大会明徳義塾を決勝で破り優勝。四国大会でも準優勝でセンバツ出場を決めた例もある。自らの弱さを認識し、前向きにひたむきにチーム一丸となって戦えば、秋の決勝進出もおのずから手に入ってくるだろう。また、この秋は新人戦では右肩痛で登録から外れた昨年の侍ジャパンU-15代表・中屋 友那(1年・投手・右投左打・179センチ70キロ・高知中出身)も背番号「19」でベンチ入り。逸材の公式戦デビューがどんな状況になるかも楽しみである。

 高知とは逆に新人戦1回戦で高知追手前にサヨナラ負け。落とし穴にはまったのが高知中村である。北原 野空(2年・投手・右投右打・168センチ71キロ・高知県立中村中出身)、一圓 優太(2年・三塁手・右投右打・171センチ72キロ・四万十市立八束中出身)の主軸は健在だけに、「レギュラーに軒並み故障者が出てしまった」(横山 真哉監督)コンディションをいかに戻しているかが秋のリベンジへの第一条件となる。

 ただ、チームで戦う意識の高さで夏の高知大会ベスト8の安芸や、高知東らもこのブロック。特に安芸対高知中村の「併設型中高一貫校」対決は、激戦必至の好勝負となりそうだ。

第3シード・高知商ブロック:土佐vs高知商激突濃厚。注目選手たちも激突!

柴田 大輔(土佐)

 他校には非常に申し訳ないが、ここは準々決勝・土佐vs高知商のカードで鉄板だろう。第3シードの土佐はセンバツでも先発した尾﨑 玄唱(2年・右投左打・164センチ62キロ・土佐中出身)が登板しない中でも新人戦ベスト4。守備の不安は常に付きまとうものの、4番・捕手となった柴田 大輔(2年・右投右打・173センチ76キロ・堺ボーイズ<大阪>出身)ら甲子園経験者の力で、2年連続センバツ出場への権利が取れる場所へ進みたい。
 

 対する高知商の柱は50メートル走6秒0・一塁駆け抜け3秒8台の超速リードオフマン・黒岩 真光(2年・投手兼中堅手・178センチ68キロ・右投左打・高知市立西部中出身)だ。秋はチーム事情により投手としての出番が増えそうだが、全国トップクラスの足は全ての対戦相手に脅威を与える存在。基本は大事にしながら日々新たな戦術を志向する上田 修身監督の下で、スピードスターがいかに躍動するかが楽しみだ。

 大会は9月10日(土)開幕、準々決勝後に明徳義塾いわて国体出場による1週間のブレイクを挟み、順調に進めば10月8日(土)に準決勝。10月9日(日)に決勝・3位決定戦を行い3位までが愛媛県で開催される第69回秋季四国地区高等学校野球大会に出場する。ついに25チームとなった厳しい野球人口の中、選手たちには次に続く野球少年たちの模範となる全身全霊を込めたプレーを切にお願いしたい。

(文=寺下 友徳


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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