Column

徳島大会ベスト8展望 史上初、5年連続夏甲子園出場目指す「進撃の巨人」鳴門にくさびを打つのは誰だ?

2016.07.23

 7月10日(日)に鳴門市の[stadium]オロナミンC球場[/stadium]で開幕を迎えた「第98回全国高等学校野球選手権徳島大会」。最大の焦点は鳴門のこれまで徳島県勢では前人未到となる5年連続甲子園出場となる。第1シードとして唯一の2回戦スタートと、4連勝で優勝と日程上にも余裕がある「進撃の巨人」にくさびを打つチームは果たして現れるのだろうか。

■これまでの勝ち上がりをチェック!

【第98回徳島大会】

Aブロック:第1シード・鳴門ゾーン

河野 竜生(鳴門)

 ちょうど一年前の選手権徳島大会から総体協賛ブロック大会まで県大会公式戦15連勝中。1997~2000年の徳島商を超える5年連続甲子園出場を目指す鳴門が「絶対本命」のプレッシャーをはねのけにいく。その下支えとなるのは鉄壁の投手陣。エースナンバーを背負う最速145キロ左腕・河野 竜生(3年・左投左打・174センチ72キロ・鳴門市第二中出身)は練習試合でも常時140キロ台のストレートをマーク。冬場から鍛えてきた下半身の粘りも申し分なく、チームとして掲げる「甲子園1勝」へのベースはすでに整っている。

 万が一、河野がマウンドを降りる事態となっても心配はない。先発では130キロ中盤のストレートが武器の右サイド・尾崎 海晴(3年・175センチ81キロ・右投右打・鳴門市第一中出身)に、最速141キロ右腕の松本 凌斗(3年・174センチ70キロ・右投右打・鳴門市大麻中出身)。リリーフには右翼手兼任の最速140キロ左腕・矢竹 将弥(3年・左投左打・176センチ74キロ・生光学園中<ヤングリーグ>出身)が控える。

 それともう1人。右ひじ痛も癒え、すでに左翼手として練習試合復帰を果たしている中山 晶量(3年・186センチ85キロ・右投右打・生光学園中<ヤングリーグ>出身)もマウンド復帰が間近。徳島大会中に昨年6月に出した最速146キロの復活は難しい情勢だが、1年夏にリリーバーとして鮮烈な印象を残した彼の復帰は、その先を見据える上において心強い材料となる。

 打線も強力そのもの。高校通算40本塁打に迫る四国No1スラッガーの手束 海斗(3年主将・左翼手・172センチ81キロ・右投右打・鳴門市大麻中出身)が4番。強肩捕手としても鳴らす5番・佐原 雄大(3年・右投右打・177センチ89キロ・徳島ホークス<ヤングリーグ>出身)も手束に負けず劣らずのパワーヒッター。その前後も役割を心得た選手たちが居並ぶ。

 それでも「みんなが捨て身になって来る。簡単ではない」と気を引き締める森脇 稔監督。自ら崩れる要素がない限り、鳴門の5連覇はかなりの確率で成し遂げられそうだ。

 次の相手となった徳島北はタレント揃い。前田 大成(2年・投手・190センチ85キロ・右投左打・藍住町立藍住東中出身)、新田 大輔(2年・投手・183センチ83キロ・北島町立北島中出身)、前田 将吾(3年・捕手・180センチ88キロ・右投右打・徳島藍住リトルシニア出身)のハイタワーバッテリーを備える好チームだ。

⇒次のページ:Bブロック:第4シード・富岡西ゾーン / Cブロック:第2シード・城南ゾーン

[page_break:Bブロック:第4シード・富岡西ゾーン / Cブロック:第2シード・城南ゾーン]

Bブロック:第4シード・富岡西ゾーン

紀本 幸太郎(富岡西)

 春の県大会では徳島池田、徳島城南の昨秋四国大会出場校を撃破し準優勝。8年ぶり2度目の四国大会出場と同時に逆転第4シード入りを手にした富岡西。その四国大会でも大手前高松相手に好投した絶対的左腕・紀本 幸太郎(3年・左投左打・174センチ75キロ・阿南市立第一中出身)は、春先から体重を10キロ増。最速138キロストレートやシュートを持ち味にさらに制球力と球威を兼ね備えるようになった。主将2番の杉本 勇太(3年・三塁手・右投右打・168センチ57キロ・小松島市坂野中出身)をはじめ、どの打順からでも足を絡めた攻撃ができることも魅力的。この2つが噛み合えば、お互い勝ち進めば準決勝で激突する鳴門戦において、1対8と完敗した春季県決勝戦のリベンジを果たす可能性はグッと高まるだろう。ここまで順当に勝ち進みベスト8まで駒を進めた。

 このブロックにも春ベスト8の徳島市立。さらに好選手が多いには、左の滝上 和弥(3年・176センチ70キロ・左投左打・三好市立三好中出身)、右サイドで最速135キロの玉岡 翔太(3年・右投右打・162センチ60キロ・三好市立山城中出身)。走ってもベースランニング1周13秒89の森下 義伸(3年・中堅手・173センチ73キロ・右投右打・東みよし町立三加茂中出身)の3名ばかりでなく、各人が力を伸ばしており、前評判は高かった。しかし勝ち抜いたのは2年生に好選手が多い小松島小松島となった。

Cブロック:第2シード・城南ゾーン

 昨夏昨秋と甲子園がかかった県大会でいずれも準優勝。鳴門相手に「3度目の正直」を期す第2シード徳島城南だが、彼らの初戦は、絶対的なエース・増田 将馬(3年・178センチ68キロ・右投右打・徳島市南部中出身)を軸に結束力で戦う徳島商だった。いきなりの正念場となったが、7対5で勝利した。さらに2回戦でも2年生に有望選手が多い小松島西にも、12対2で快勝をしている。

 そんな徳島城南のチーム力は旧チームと比べてもそん色ない。キャプテンの大野 翔太(3年・二塁手・170センチ65キロ・右投右打・徳島市南部中出身)が走攻守すべての高い対応力でリードオフマンの仕事を果たせば、4番の佐尾山 遼(3年・捕手・176センチ75キロ・右投右打・徳島中央リトルシニア出身)は強肩強打。エースの大東 右頌(3年・175センチ69キロ・徳島阿南シティホープ<ヤングリーグ>出身)は、テンポよく、かつ打者のタイミングを微妙に外す投球感覚を持っている。

 

 このブロックにはもう1つの注目カードが行われた。最速143キロ右腕・近藤 壱来(3年・177センチ66キロ・右投右打・阿南市立第一中出身)を擁する鳴門渦潮と、佐藤 将矢(3年主将・三塁手・178センチ80キロ・右投右打・徳島市徳島中出身)ら中軸のストレートを捉える力には目を見張るものがある徳島城北との対戦だ。「力勝負」という部分で見物になったが、鳴門渦潮が9対1で快勝している。

⇒次のページ:Dブロック:第3シード・生光学園ゾーン

[page_break:Dブロック:第3シード・生光学園ゾーン]

Dブロック:第3シード・生光学園ゾーン

武岡 大聖(生光学園)

 春先から明確に「鳴門を倒して、甲子園で勝つ」を掲げてチーム作りに取り組んできた生光学園にとって集大成の夏がやってきた。その準備に怠りはない。

 投手陣は中辻 颯(3年・170センチ72キロ・右投右打・大阪中央ボーイズ<大阪>出身)、三塁手兼任の黒石 真生(3年・170センチ77キロ・右投右打・忠岡ボーイズ<大阪>出身)の最速130キロ後半を出す右腕コンビに加え、総体協賛ブロック大会で公式戦デビューした安藝 智哉(1年・177センチ67キロ・右投右打・生光学園中<ヤングリーグ>出身)も最速135キロをマークし、3番手以上の評価を得つつある。

 一方の打線も安定感が。高校通算本塁打30本に迫るスラッガー・武岡 大聖(3年・右翼手・右投左打・177センチ92キロ・徳島ホークス<ヤングリーグ>出身)は、フォームを春以降、丸 佳浩(広島東洋カープ<関連記事>)のように腕をたたみ気味にしてから出す形に変更。持ち前の長打力に確実性が加わった。また、リードオフマンの橋本 玲汰(3年・遊撃手・右投右打・178センチ75キロ・大阪狭山ヤング<ヤングリーグ・大阪>出身)も平田 薫コーチ(元読売巨人軍など)の細やかな指導により、打球の力強さ・距離が増している。

 とはいえ、生光学園の次の相手となった新野はスクリューが最近の練習試合では効果的になってきた左腕・任介 澪志(3年・左投左打・170センチ66キロ・阿南市立阿南中出身)を絶対エースに据えている。初戦は川島に4対3で勝利しており、好試合が期待できそうだ。そしてベスト8進出を果たした阿南工は、チームバランスの良さがウリだ。。

<あとがき>

 徳島大会の特徴。それは「なぜ、こんな学校にこんな逸材が!」と感じさせる選手たちが毎年出現することだ。各校を見渡しても2年生たちにも楽しみな選手が居並んでいる。ただ、個の楽しみの一方で物足りなさを感じるのは「チーム化」。試合を見ていても厳しい見方をすれば、ともするとつながりを欠き、勝利に対して淡白なケースも多々見られる。

 では勝利への執念が顕著に出る最後の夏に、もし個々のポテンシャルを出し切り、チーム化できれば……。実は目の前に広がっている「無限の可能性」。その力を信じ、出し切り、つなげ、切磋琢磨する。それが2014年秋四国大会川島鳴門の1回戦突破を最後に全国・四国大会で11連敗中の徳島県勢が一気に突き抜ける原動力となるに違いない。

(文・寺下 友徳


注目記事
第98回全国高等学校野球選手権大会 特設ページ

このページのトップへ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.03.27

報徳学園が投打で常総学院に圧倒し、出場3大会連続の8強入り

2024.03.27

【福岡】飯塚、鞍手、北筑などがベスト16入り<春季大会の結果>

2024.03.27

【神奈川】慶應義塾、横浜、星槎国際湘南、東海大相模などが勝利<春季県大会地区予選の結果>

2024.03.27

青森山田がミラクルサヨナラ劇で初8強、広陵・髙尾が力尽きる

2024.03.27

中央学院が2戦連続2ケタ安打でセンバツ初8強、宇治山田商の反撃届かず

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード

2024.03.24

【神奈川】桐光学園、慶應義塾、横浜、東海大相模らが初戦白星<春季県大会地区予選の結果>

2024.03.23

【東京】日本学園、堀越などが都大会に進出<春季都大会1次予選>

2024.03.27

報徳学園が投打で常総学院に圧倒し、出場3大会連続の8強入り

2024.03.22

報徳学園が延長10回タイブレークで逆転サヨナラ勝ち、愛工大名電・伊東の粘投も報われず

2024.03.08

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.03.17

【東京】帝京はコールド発進 東亜学園も44得点の快勝<春季都大会1次予選>

2024.03.11

立教大が卒業生の進路を発表!智弁和歌山出身のエースは三菱重工Eastへ、明石商出身のスラッガーは証券マンに!

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード

2024.03.01

今年も強力な新人が続々入社!【社会人野球部新人一覧】