【東東京展望】関東一と二松学舎大附の2強時代は夏まで続くのか?それを阻む学校は?
7月2日から開幕する東京東西大会。抽選会前に各校の有力校、有力選手を紹介していきたい。まずは東東京から。
関東一、二松学舎大附の2強時代
左から 佐藤 佑亮(関東一)、大江 竜聖(二松学舎大附)
1970年代から90年代にかけて、帝京と当時は東東京であった早稲田実のライバル対決は熾烈で、東京の高校野球を盛り上げた。今日、関東一と二松学舎大付の関係は、その域に近づきつつある。秋と春の都大会の決勝は、ともに関東一と二松学舎大付で、2回とも関東一が勝って優勝した。関東一はオコエ瑠偉(楽天<関連記事>)ら、甲子園4強のメンバーがごっそり抜け、小粒になった感じは否めなかったが、身体能力が高い選手が集まり、日替わりでヒーローが生まれる。
センバツでは東邦の好投手・藤嶋健人(関連記事)に完璧に抑えられたが、それが刺激となり打撃を強化。春季都大会では日大三の小谷野楽夕のスライダーを打ち砕き、関東大会では、プロ注目の島孝明(関連記事)を攻略した。
外野手の本橋 慶人、捕手の佐藤 佑亮は長打力と足があり、外野手の宮本 瑛己は、30メートル走ならオコエに負けない快速の持ち主。そのうえ関東大会では、1年生の石橋 康太が勝負強い打撃をみせ、同じく1年生の宮田 蒼太がセンスの光る守備をみせた。投手陣は左の佐藤 奬真がエースになり、右の関東一河合 海斗、竹井 丈人それに、伸び盛りの高橋 晴に小川 樹と、数は揃っている。
二松学舎大付は、2年前の夏に「1年生トリオ」として注目された左腕の大江竜聖、捕手の今村大輝(関連記事)、内野手の三口英斗が、最後の夏を迎える。大江はこの春やや力みがあったものの、大人の投球ができるようになった。今村は打球の飛距離が一段と伸び、三口は主将としてチームを引っ張る。
加えて、パワーと足のある永井 敦士、控え投手も兼ねる市川 睦と連なる打線は、全国的にみてもレベルが高い。けれども、2大会続けて関東一に敗れるという現実に、市原 勝人監督は春季都大会の決勝戦の後、「どちらかというと甘い」と語った。関東大会では、中沢 航介、堀川 尚希という2人の1年生をスタメンで起用。チーム内の競争の中に、厳しさを打ち出している。
投手力充実の東亜学園、都立城東
関根 智輝(都立城東)
かつて東亜学園といえば、ドラフト1位で広島に入団した川島 堅をはじめ、投手陣の良さで知られた。近年はやや打力優勢になっていたが、今年は投手王国が復活しつつある。秋までは4、5番手だったが、制球の良さを買われてエースになった田原 芳紀は、微妙に動く変化球で関東一などに好投。春季都大会4強進出に貢献した。長身の右腕・青木 大河、球威のある左腕・鈴木 裕太など、投手陣は充実。打線は、主将の鈴木 翼が牽引する。
都立城東は、エース・関根智輝(関連記事)の成長が何よりも頼もしい。最速144キロのストレートを武器に、気持ちの入った投球をする。さらに縦横のスライダーを磨かれ、投球全体でレベルアップを果たしている。打線は秋までは関根頼みであったが、主将の高野 慎太郎なども得点に絡むようになり、春季都大会の準々決勝では、関東一に9回降雨ながら引き分けるなど、東大野球部出身の池上 茂監督も、手応えを感じる。
現時点で評価が難しいのは、名門・帝京。岡崎 心、郡 拓也、佐藤 怜などが並ぶ打線は、間違いなく強力。しかし問題は投手力。春季都大会では捕手の郡も含め6人が登板。秋の主戦である安村 陸人、高丸 優太は、春はベンチ入りすらしておらず、誰が軸になるか、見当もつかない。
日本ウェルネス、夏も旋風を起こせるか!?
渡部 健人(日本ウェルネス)
その他のシード校は、修徳、岩倉、江戸川、東京日本ウェルネスの4校。修徳はプロ注目の外野手・淵上 聖司をはじめ、準々決勝に進んだ昨夏のメンバーがほとんど残り、戦力的には、上位5校と遜色がないが、秋、春とももろさを露呈している。
岩倉は、1番で捕手の伊勢 海星の打撃がいい。高校に入って左打ちに変えたことで飛距離が伸び、春季都大会では本塁打3本を記録した。江戸川も、早大学院の柴田 迅(関連記事)からサヨナラ本塁打を放った星野 充など、打線が充実している。
春季都大会で旋風を起こしたのが、東京日本ウェルネス。1回戦から3回戦まで全て1点差で、1回戦と3回戦は逆転サヨナラ。横浜商大から転校してきた強打の渡部 健人は春は不振であったが、それでも勝てたことに美齊津 忠也監督はむしろ手応えを感じる。青森山田などを指揮した美齊津監督の守り勝つ野球が、夏どこまで通用するか注目だ。
シード校以外でも高いレベル
2強の存在が際立っている東東京ではあるが、シード校になれなかったチームにも、注目すべき選手、チームは多い。打撃で注目なのが、春は初戦敗退ながら、秋は4強の東海大高輪台のリードオフマン・嶋崎 草太郎と4番の大西 星夜。秋と春ではあまりに成績の差が激しいが、宮嶌 孝一監督が「紙一重だと思います」というように、良い展開になれば、夏も旋風を起こし得る。
投手力では、ともに最速が140キロを超える横手投げの川西 雄大、本格派の大竹 義輝を擁する明大中野が面白い。春は不振だったが、長身の本格派・矢崎 裕希(小山台)、球威のある小幡 圭輔(立教池袋)なども、本来の投球を期待したい。
チームとしてのバランスの良さでは、堀越と駿台学園の名が挙げられる。第1回東京大会準優勝の荏原中学を引き継ぐ日体荏原は、この春から日体大荏原に校名を変更。監督には、雪谷の監督であった相原 健志が就任し、名門復活を目指す。
相原監督が抜けた雪谷は、神子 堅吾を中心とした打撃のチームを目指す。その雪谷を、春の1次予選で延長11回を4安打完封した神戸友彰(葛飾野)は、この試合のサヨナラ弾を含め、1次予選、都大会と4試合連続本塁打を記録。父親がガーナ人のブライト 健太は身体能力が高く、葛飾野には、興味深いタレントが揃っている。
春は八王子に大敗したものの、東京実は左腕・横山 恒平の変化球のキレがよく、4番の福島 大涯は巨体の割に、器用な打撃をする。昨夏準優勝の日大豊山は、左腕の山本 日向の投球がカギを握る。成立学園では大角 健人の打撃が注目される。
関東一、二松学舎大付を東亜学園、都立城東、帝京などが追う展開であることは確かだが、シード校外にも力のあるチームが多く、序盤から気の抜けない試合が予想される。
(文・大島 裕史)
注目記事
・2016年度 春季高校野球大会特集