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2016年の高校野球を占う【高知編】「高知の野球少年たちへ希望与える戦いへ」

2016.03.24

 明徳義塾土佐。21世紀枠や明治神宮大会枠を除く純粋なる一般枠でのセンバツ高知県勢出場2校は、1982年・第54回大会の明徳(現:明徳義塾)・高知商以来34年ぶり5度目の快挙である。
しかしその傍らで開催される春季県大会の出場校はついに「26」。県内野球関係者からもカテゴリーを問わず危機を訴える言葉が並ぶ。そんな切迫した状況の中で、高知県高校野球にできることとは?今回は未来の高知県高校球児たちに希望を与える2016年のチーム、選手たちを取り上げていきたい。

センバツ勢にもいる「新星」「復活途上」

古賀 優大(明徳義塾)

 まずは夏も間違いなく優勝候補にあがるセンバツ出場の2校。注目選手が目白押しである。
夏は7連覇がかかる明徳義塾ではまず、強い背筋から放つ送球タイム1.8秒台の二塁送球で、NPBスカウトからも注目を浴びる古賀優大(3年・捕手・右投右打・178センチ78キロ・友愛野球クラブ<福岡県・フレッシュリーグ>出身2016年インタビュー)。大関・琴奨菊(明徳義塾高相撲部OB)と同じ柳川市立東宮永小卒という話題性も備える。

 また、リードオフマン立花 虎太郎(3年・中堅手・181センチ73キロ・大阪南海ボーイズ<大阪府>出身)と侍ジャパン元U15代表の西浦 颯大(2年・右翼手・右投左打・177センチ65キロ・熊本北リトルシニア<熊本県>出身)はいずれも50メートル5秒9。さらに守備職人の高村 和志(3年・遊撃手・右投右打・171センチ61キロ・東大阪リトルシニア<大阪府>出身)、苦節2年でいよいよ聖地の先発マウンドに到達した中野 恭聖(3年・投手・右投右打・172センチ68キロ・えひめ西リトルシニア<愛媛県>出身)など、ほぼ全選手が何らかの特徴を持っている。

 一方の土佐もストイックさと洞察力では他の追随を許さない2年生エース・尾崎 玄唱(右投左打・165センチ60キロ・土佐中出身)や、最近では投手としても制球力が格段に上がった安打製造機・吉川 周佑(3年主将・中堅手兼投手・左投左打・166センチ63キロ・土佐市立高岡中出身)。この冬に取り組んだ送球フォーム改善が功を奏し、二塁送球タイムが格段に向上。楠目 博之部長も「甲子園でも簡単に走られることはないと思う」と語る楫 憲護(3年・捕手・右投右打・170センチ75キロ・出雲雲太ボーイズ<島根県>出身)も今後の活躍が楽しみな1人である。

 さらに両校には「新星」もいる。明徳義塾では背番号「18」の左腕・北本 佑斗(2年・投手・169センチ67キロ・大阪泉北ボーイズ<大阪府>出身)。控え選手に出場機会を与える目的で毎年11月最終週の週末に行われる「学校対抗戦」では好投。この冬をかけて「秘密兵器」への過程を積んできた。最速138キロのストレートに切れのあるスライダーを龍谷大平安(京都)相手にも発揮し、今後に期待を持たせる内容を残した。

 土佐ではけがから復帰し、冬の練習によって遊撃手の定位置を奪った森﨑 勇斗(3年・右投右打・169センチ65キロ・須崎市立須崎中出身)。守備・打撃ともにややムラはあるものの、好きな選手に「クルーズ(巨人)」をあげる玄人肌。グラブさばきのスムーズさで、昨秋守備に課題を抱えたチームの助けに必ずなれる存在だ。

 そして「復活途上」のこの男にも触れないわけにはいかないだろう。約1年前の春季高知県大会で最速146キロをマークした明徳義塾國光 瑛人(3年・投手・179センチ75キロ・龍野ボーイズ<兵庫県>出身)。それ以降、右ひじの状態は一進一退。このセンバツでもメンバーから漏れた。断腸の決断を下した馬淵 史郎監督ら首脳陣の想いを当人がどのように感じているか。最後の夏がどんな結果に終わったとしても残された時間を大事に使ってほしい。

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[page_break:「全国優勝・準優勝」世代、最後の夏へ]

「全国優勝・準優勝」世代、最後の夏へ

吉川 周佑(土佐)

 あまり中央には知られてはいないが、実はこの新3年生年代は県内で入学時から大きな期待を背負っていた。2013年の中学3年時、高知県選抜チームで出場した「15歳以下全国Kボール秋季大会」ではオール東京、福岡県選抜、報徳学園中(兵庫)、千葉県選抜を次々と破り決勝戦へ。最後は釧路クラブ(北海道)に特別延長で敗れ惜しくも準優勝に終わったものの、この快挙は高知中「文部科学大臣杯全日本少年春季軟式野球大会」初優勝にもつながった高知県中学軟式野球界のハイレベルさを改めて世に知らしめることに。ちなみに先述の土佐吉川 周佑の県選抜20名のうちの1人である。

 そんな彼らもいよいよ最後の夏を迎える。5年連続、明徳義塾との「高知大会決勝戦1点差敗戦」を超え、公文 克彦(大阪ガス~読売ジャイアンツ)・木下 拓哉(法政大~トヨタ自動車~中日ドラゴンズ)バッテリー以来の7年ぶり夏甲子園を目指す高知では主将の澤田 大成(3年・三塁手・右投左打・170センチ70キロ・香南市立野市中出身)、吉村 大輝(3年・投手・右投右打・172センチ72キロ・高知中出身)、榮枝 裕貴(3年・捕手・179センチ77キロ・高知中出身)、十河 友暢(3年・遊撃手・右投右打・170センチ70キロ・高知中出身)が主力を張る。

 高知市立城北中で藤川 球児投手(現:阪神タイガース)を指導した上田 修身氏が昨年8月から新監督に就任。昨秋は県大会準優勝で名門復活への過程を着々と歩む高知商では絶対的エースの高橋 大(3年・投手・左投左打・170センチ67キロ・高知市立愛宕中出身)、國澤 拓矢(3年・捕手・右投左打・169センチ73キロ・高知市立西部中出身)のバッテリーなど。小西 勝太(二塁手・右投左打・163センチ58キロ・葛城ボーイズ<奈良>出身)ら、旧チームからレギュラーを張る選手たちとの融合で10年ぶりの栄冠を目指す。

 高知南にはエース・友竹 海太(3年・投手・左投左打・174センチ71キロ・高知県立高知南中出身)と県内きっての右打者・中野 慎太郎(3年・左翼手・右投右打・180センチ72キロ・高知県立高知南中出身)が県選抜メンバー。技巧派の友竹を助けるべく中野に加え、飯田 裕翔(3年・捕手・右投右打・178センチ82キロ・高知市立介良中出身)、加志崎 愛斗(3年・中堅手・右投右打・173センチ77キロ・高知市立朝倉中出身)、中越 優誠(3年・遊撃手・右投左打・170センチ64キロ・高知市立横浜中出身)といった好打者たちの奮起が、2007年センバツ室戸以来、夏に限れば1994年宿毛以来21年間ない県立校甲子園出場へのかぎとなる。

 昨秋県大会土佐を苦しめた高知中村を投打でけん引する渡辺 大晴(3年・投手・右投左打・171センチ61キロ・高知県立中村中出身)は、金属バットの反発力を考慮に入れた軟投巧打が光る。

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[page_break:「追い付き、追い越せ」の各校に「勝負をかける」両輪]

「追い付き、追い越せ」の各校に「勝負をかける」両輪

 一方で、高知県選抜メンバーが進学した各校に追い付き、追い越すために日々の練習に励んだ選手たちも、冬の成果を見せるべき春、そして夏に入っていく。

昨秋県ベスト4
高知工で秋は15打数8安打3打点2盗塁の横田 謙慎(3年・三塁手・171センチ58キロ・右投左打・高知市立南海中出身)がリードオフマンの存在感を示せば、高知中央では長身2年生遊撃手・三山 吾郎(右投右打・185センチ76キロ・尼崎ボーイズ<兵庫県>出身)が大器の片鱗。

三福 徹(土佐塾)

 岡豊の1番・別府 秀悟(3年・右翼手・右投右打・180センチ70キロ・高知市立青柳中出身)や、高知東前田 日明(3年・投手・左投左打・178センチ71キロ・高知市立大津中出身)土佐塾三福 徹(3年・投手・左投左打・174センチ60キロ・土佐塾中出身)の両左腕は状態を安定化させ、チームの躍進につなげたい。高知小津は持ち前のチーム力を個々の実力アップによって、逆に梼原は個々の高い身体能力をチーム力強化によってより強固なものにしていくことが必要だ。

 最後にこの春「勝負をかける」両輪を紹介したい。右は高知谷脇 瑞基(3年・投手・右投右打・185センチ71キロ・土佐清水市立清水中出身)昨年6月には早くも最速138キロをマーク。新人戦では決勝戦で明徳義塾を破る原動力となったが、その後は吉村の2番手を抜けられていない。島田 達二監督もことあるごとに指摘する精神面の甘さを改善し、自らの力で前途を切り開きたい。

「高卒でプロへ行きたい」と明言する左腕は室戸安岡 将妥(3年・投手・左投左打・178センチ78キロ・室戸市立室戸中出身)。昨夏高知大会土佐戦で最速142キロを記録。課題の制球力もブルペン投球を見る限り大きく改善されている。あとは決意を体現できる心技体の持続と強化あるのみだ。

 県立・市立・私立。県内出身・県外出身。種々立場は違っていても1人1人は後に続こうとする野球少年たちに指針を与える大事な存在。高知県野球の未来は間違いなく、今を生きる彼らにかかっている。

(文・寺下 友徳


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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