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2016年の高校野球を占う【沖縄編】「今年の沖縄ビッグ3はどこだ?有力校、有力選手も一挙に紹介!」

2016.02.29

 沖縄県では、対外試合解禁日から各校忙しく動き始める。全国選抜高校野球大会に出場する私学をはじめ、多くの高校が沖縄に訪れるからだ。残念ながら今年の選抜大会に沖縄代表は出場しないが、だからこそ各校とも迎える春の県大会での上位進出及び優勝を狙ってくる。優勝すれば九州地区高校野球大会への出場はもちろん、沖縄・熊本交流試合や招待野球試合(今年は大阪桐蔭高校を招聘)で、県外の強豪校の胸を借りられるのだ。

 一昨年の秋、2回戦で敗れた興南高校が翌年の春を制し、幾多の県外強豪校とぶつかりながら更にチーム力をアップさせて最後の夏も制したことからも、その恩恵は計り知れないのだ。そこで2016年の沖縄県高校野球界を、これまでの大会データなどを元に予想してみようと思う。

2016年沖縄県ビッグ3はこのチーム

黒島 投真(八重山)

 では秋の県大会4強を比較してみよう。優勝した八重山は、第137回九州地区高校野球大会でも1勝を挙げ21世紀枠でも最終選考に残るほどの力を有している。その中心にいるのが黒島 投真だ。名前の如く、投手としてもチームの真ん中にいる力を持っているが、新人大会以降は仲山 琉斗の登板機会が多くなっていった。ただそれは、黒島にとっても決して悪いことではなかった。

 打撃に専念することが出来た分、17打数10安打で打率.588と4番として優勝に大きく貢献。投手としても最後を締めくくる場面で登板し、勝利を手繰り寄せてきた。2番に座っていた友利 有也も打率.409。また、7番与那嶺 匡(同.462)、8番又吉 海智(同.375)と、下位にも強力な打者がいるのも心強いところだ。エース格となった仲山は34回を投げて防御率1.85。奪三振率0.79と高くなく、これほど極端な“打ち取るタイプ”の優勝校のエースもそうはいない。
ただ、準決勝那覇商業戦で見るように、先発の仲山が崩れても新里 光平、黒島と同等の力量を持つ投手がいることも八重山の強みの一つだ。

 準優勝の興南は、前チームからレギュラーを張る具志堅 大輝秋の県大会でも19打数8安打で打率.421と打線の中心を担う。成長した宮里 大湖(同.462)が4番を務めることで具志堅が3番に上がって打線の厚みも増した。その他上門 洸輝高那 峻比嘉 亮平と5人の3割打者がおり、ここに一年生中央大会準優勝した上原 麗男福元 信馬伊礼 希龍の力ある一年生たちが絡むと、八重山の力を上回る。

 逆に心配があるとすれば投手陣だろうか。沖縄県ナンバーワン投手として、文句無しに輝くのが比屋根 雅也。2015年、の県大会で防御率は全て0点台の上に、高い奪三振率(秋9.00)と低被打率(同.169)は、他のライバル校のエース達を大きく引き離す。その一方で、一昨年の新人中央大会から投げ続けてきた疲労が、どれだけ抜けているのかは心配の種。第137回九州地区高校野球大会でノックアウトされた姿は、チームメートにとってもショッキングな出来事だったろう。一年生中央大会で実績を残した川満 大翔他ら他の投手陣の整備が進んでいるのかどうか。こちらも厚みを増すと、「沖縄は今年も興南」となる色合いは濃くなっていく。

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[page_break:対抗勢力になるチームは?]

 八重山興南に勝るとも劣らない力を有するのが嘉手納だ。一年生中央大会を29年ぶりに制したメンバーが成長してきた。比屋根と同じ一年生の頃からマウンドを任された仲地 玖礼は、26回を投げて防御率1.38と八重山の仲山を上回る。9イニングの平均投球数が128球と、仲山よりも13球、比屋根よりも12球多いのは気になるが、ゲームメイク能力は比屋根と同等のものがある。秋9イニングを投げて無失点だった左腕仲井間 光亮が伸び盛りなのが嘉手納にとっては明るい材料であり、春の県大会では仲地に変わって多くのマウンドを守る可能性もあるだろう。

 また嘉手納と言えば打線。八重山のチーム打率が.315、興南が.317なのに対し.371と大きく引き離す。3番大石 哲汰から8番村濱 達成までが3割越えと、相手投手にとっては気の抜けない打者が続く。一番打率が低いのが仲井間の.250なのだから恐れ入るとしか言えない。

対抗勢力になるチームは?

 このビッグ3に、全員野球で挑むのが那覇商業。グラウンドが使えないというハンデは、大会でも蓋をあけてみないと分からないというのが本音だろう。それでも彼らは、自分たちの持つ一人一人の力を、如何にして試合に反映させ且つ勝利へと結びつけていくかを全員が共有するチーム力がある。逆境が生んだチームワークは、他の学校には無い強みでもある。

屋良 朝哉(那覇商)

 打撃陣でのキーマンとなるのが屋良 朝哉(秋の打率.471)と藏下 達希(同.500)の1、2番コンビ。彼らの出塁率の高さがチームの得点源となる。打率こそ振るわなかったものの、主将で4番を務める松永 太地は、藏下と同じ5打点をマークするなど、ここぞというところで勝負強さを発揮する。
投手陣では上間康貴が中心となる。秋25回を投げて防御率は1.80。奪三振率は2.16と少なく、仲山同様打たせて取るピッチングを心掛ける。同じサウスポーでもアンダー気味に投げてくる安里 純一、力ある球を投げてくる右腕の照屋 弘幸と3人の継投も春の県大会でのポイントとなるだろう。

 その秋の4強に割って入ろうという一番手が八重山商工宜野座になりそうだ。八重山商工は、秋の準々決勝で嘉手納打線を8回までゼロに封じた黒島 志門前粟蔵 知弘のバッテリーが、春の県大会でもキーとなる。25回を投げて防御率1.08の黒島だが、被打率は.286と高めだ。自責点こそ3だが、一発勝負のトーナメントの世界では例え味方にエラーが発生しての失点でも負けに直結する。女房役の前粟蔵と共に、走者を出さない工夫と成長をこの春でどれだけ見せることが出来るか。

 打線では2番安里 郁哉、3番仲嵩 勇雅、4番森田 虎之介が5割越え。この分厚い中心選手が引っ張るチーム打率は.348と、秋の8強の中では嘉手納に次ぐ2番目に高い数値となっている。

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[page_break:その他の有力校は去年の興南に続くことができるか?]

 一年生中央大会と秋の県大会連続8強の宜野座は1番伊藝 充騎が.打率483、2番大嶺 二千翔が同.357とリードオフマンぶりを発揮するなど、打線の繋がりという点では4強に勝るとも劣らない。
その中でも注目なのは岸本 恭里。秋の成績は12打数7安打で打率.583。さらに塁間走14秒47の快足で5盗塁をマークするなど、走攻守でチームを牽引した。右のクロス投法で打者を牛耳る玉城 楓と、本格派・内間 拓馬の両輪のさらなる成長が見られれば面白くなる。

その他の有力校は去年の興南に続くことができるか?

タイシンガー ブランドン 大河 (石川)

 秋8強の中部商は打率.467の4番小濱 勝太を筆頭に天願 夏生仲本 大成の打率4割トリオが魅力。同じく8強の前原はエースの左腕・山根 蓮太のピッチングはもちろんだが、11回を投げて自責ゼロの高江洲 翔も面白い存在となりそうだ。

その他では、初戦敗退したが、やはり一昨年の秋に初戦敗退を喫したものの、翌年の春に3位となった沖縄尚学は、一年生中央大会優勝するなど、個々の持つ力は秀でているだけにこの春も大暴れすることだろう。

 同じく一年生中央大会ベスト4コザ豊見城沖縄尚学にコールド勝ちを収めた秋16強の美来工科新人中央大会嘉手納に勝ち、秋では興南に敗れたものの1点差ゲームを演じた豊見城南、大会屈指の好選手タイシンガー・ブランドン・大河を擁する沖縄石川、雪辱を期す美里工業、野球部対抗競技会で優勝し、身体能力の高さを見せつけた糸満などまだまだ有力校がズラリと並ぶ沖縄県。

 頭一つ抜けた2016年沖縄県ビッグ3(八重山興南嘉手納)だが、実は2000年以降、秋の県大会4強(選抜出場チームは自動的に九州大会出場のため除く)が、春の4強以上に残ったことは無い。
そのデータを取るならば、この3チームを破るチームが春に現れるということになる。それがどこになるのか!

 8強以下のチームが昨年の興南に続きたいという思いだろう。興南一昨年の秋、2回戦敗退だったからだ。そこから春の県大会優勝夏の沖縄大会優勝につながった。
逆に、そのジンクスをこの3校のどれかがしっかりと勝ち上がれば、最後の夏も間違いなく八重山興南嘉手納の3強が中心となっていく。

 戦国沖縄になるのか、ならないのか。
春の戦いぶりは夏の沖縄を占う意味でも見逃せない戦いになることは間違いない。

(文・當山 雅通


注目記事
2016年度 春季大会特設ページ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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