Column

2016年の高校野球を占う【千葉編】「木更津総合の黄金期到来か?対抗勢力、注目選手を一挙紹介!」

2016.02.20

 ベスト8の顔ぶれがいつものごとく変わるのが千葉県の特徴。それだけ実力ある学校の存在が多いのだが、昨年春はプロ入りした原 嵩渡辺 大樹の2人を中心とした大型チームで本命と見られていた専大松戸が、苦しみながらも頂点を勝ち取った。今年は昨秋の関東大会優勝で、2年連続の選抜出場を決めた木更津総合が本命と見られるだろう。ではその対抗勢力となる学校はどこなのか?また注目選手を紹介していきたい。

木更津総合は黄金期に入ることができるか?

早川 隆久(木更津総合)

 関東大会優勝木更津総合は近年の戦いぶりが実に安定している。2012年から2年連続で夏の甲子園に出場し、昨年は選抜出場、夏の千葉大会では4強入りと上位進出校が大きく変わりやすい千葉県においてこの戦績は素晴らしい。また今年の戦いぶりによっては、木更津総合は黄金期に入る可能性を持っている。
今年も投打ともに戦力層が厚い。出所が見難く、キレ味抜群のストレートで勝負するエース早川 隆久2015年インタビュー、今年にかけて制球力が大きく向上した左腕・武田 大慶と投手陣の力量は県内ナンバーワンで、特に好調時の早川はなかなか打ち崩せない。

 打線についても、上位下位の切れ目のない打線が特徴。注目選手を挙げると、インコースに強く、ライナー性の打球で次々と外野の間を抜く打球を打ち返す峯村 貴希2015年インタビュー、打つ時に、両膝を我慢して低めのボールを打ち返す山下 輝2015年インタビューの1年生コンビ、状況に応じてライト方向に打ち返し、盗塁技術も高い小池 航貴、外野の間へ鋭い打球を連発する鳥海 嵐万の4人。

 この打線が怖いのは、ファーストストライクからどんどん振っていく点。攻撃開始から10分も立たないうちに4、5点取るというのがざらだ。攻撃力だけではなく、ロースコアの試合展開になれば、我慢強く守り切れるしぶとさもある。攻守に隙がなく、夏になれば、優勝候補に当然入ってくるだろう。
木更津総合は、夏以降の布陣についても気になるところ。峯村、山下の2人が中心とした打線は強力そうだが、あとは2年生投手、新入生投手が台頭すると、来年も上位争いを見せてくれそうだ。

 対抗勢力となるのは、やはり昨秋の県大会準決勝木更津総合と0対1の接戦を演じ、2年連続の夏の甲子園出場を目指す専大松戸となる。その専大松戸では原、渡辺に負けない長打力を持っているのが丸茂 弘汰だ。構えは実にどっしりとしていて、さらにライト方向へ強い打球を打てる右のスラッガー。昨秋の3回戦東海大望洋戦でもサヨナラ本塁打を放つなど、勝負強い。丸茂はこの2人に負けないポテンシャルを持っているが、昨年のような長打で勝負するチームではない。左の巧打者・川添 雄晴、粘り打ちが上手く、昨夏の決勝習志野戦で絶妙なインコース打ちを見せた伊藤 彰伸、守備力とミートが上手い寺元 啓介と渋い打者が揃っているのが印象。課題は投手陣の個々の能力アップとなりそうだ。

 昨秋準優勝千葉明徳は、本格派右腕・千葉明徳鈴木 翔、粘り強い投球が持ち味である左腕・持永 真之介の2投手のリレーで粘り強く勝ち上がってきた。野手では1年生から試合に出場している左の好打者・谷 駿汰、長打力のある中台 陸斗、攻守の要として活躍する1年生捕手・菅井 紀美靖などが注目だ。

 ベスト4に入った東京学館浦安は、長打力のある高橋 聖人が注目されるが、投手陣のコマが豊富。どの投手もしっかりとゲームメイクできる能力を持っているため、継投策が上手い。課題を挙げれば、個々のスキルアップ。一冬越えてストレートのスピード、変化球の切れといった能力を伸ばしていきたいところだ。

このページのトップへ

[page_break:ベスト8のチーム状況、ベスト16ではやはり東海大望洋、習志野が対抗勢力か]

ベスト8のチーム状況、ベスト16ではやはり東海大望洋、習志野が対抗勢力か

 秋ベスト8に入った学校を目を向けていくと、稲毛習志野を破ってきた(試合レポート)ように、粘り強い試合運びがウリの好チーム。春、夏も上位進出するために個々の能力を高めていきたいところだ。

 そして同じく8強に入った千葉黎明は、エース・川口 廉がどこまで化けるか。1年生からエースとして活躍している選手で、球速は135キロ前後ながらキレがあり、制球力も高くスライダーの切れも良い投手だが、1年秋からまだ爆発的な成長を見せていない。この冬のトレーニングで成長した姿を見せていきたい。また好守備、ミートセンスが良く俊足の二塁手・藤江 康太、川口に負けない速球を投げ込む十和田 圭介も面白い投手だ。

 千葉経大附夏1回戦負けから立ち直り、ベスト8まで勝ち進んだ。投手の中村 亮太は球速こそ速くないが、粘り強く投げられる投手。打線では4番を打ち、そして捕手としてチームを引っ張る坂巻 尚哉の活躍がカギだ。

 市立船橋は、今年も堅実な守備、積極的な走塁が健在で、常時130キロ中盤の速球を投げていたエース・八幡 悠耶は140キロ越えを期待したい投手。1年生の時から試合出場していたスラッガー・柄澤 侑也、塁間タイム3.9秒台の脚力を誇る草野 里葵(1年)は注目の外野手だ。ボールを当てるセンスに優れ、俊足を生かした外野守備は高校生としては高いレベルにあり、一冬でどこまで本格化するか楽しみな選手だ。

 ベスト16入りしたチームでは習志野東海大望洋に注目。習志野稲毛戦(試合レポート)で守備の乱れが出て敗れてしまったように、立て直しが求められる。打線では、俊足巧打の加藤 駿、スピーディな三塁守備、パンチ力ある強打がウリの内山 京祐、1年生から4番に座る強打者・吉野 海都、そして力強い速球に加え、制球力が高い並河啓太とタレント揃い。例年、激しい競争を促すチームだけに、春にどんなチームになっているか楽しみだ。

島 孝明(東海大望洋)

 東海大望洋は選手のポテンシャルの高さでいえば千葉県ナンバーワンで、木更津総合を上回っているといえる。エースの島 孝明は最速142キロのストレートに加え、カットボール、スライダー、チェンジアップを内外角に散らせる投球は簡単には打たれない。そのまま球速が伸びていけば、関東地区を代表する右腕になる可能性を秘めている。

 リードする峯尾 京吾は、正確なスローイング、キャッチング技術の高さ、打撃技術の高さ、選球眼とどれをとっても高レベルなキャッチャー。目指すタイプは栗原 陵矢(福岡ソフトバンク)になってくるのではないだろうか。野手も逸材揃いで、4番を打つ倉石 匠己は逆方向にも本塁打を打てる左のスラッガー。その倉石を中心にパンチ力のある打者が揃うが、その中でも異色の存在といえるのがショートの藤本 誠啓(1年)。複雑な動きを器用にこなす遊撃守備、また肩の強さはハイレベルで、打撃面でもボールを当てるセンスに優れ、外野の間を抜く長打を連発。近年の東海大望洋にはいないタイプだ。今後体ができてボールを飛ばすコツをつかめば、さらに注目を浴びる可能性を持った選手といえるだろう。

 セカンド・金久保 優斗もマウンドに登ると140キロ近い速球、キレのあるスライダーを投げ込む投手だ。選手の能力は申し分ないだけにあとは試合運びという点が課題になるだろう。

このページのトップへ

[page_break:拓大紅陵、千葉英和、成田など有力校の状況も見逃せない]

拓大紅陵、千葉英和、成田など有力校の状況も見逃せない

松尾 康平(拓大紅陵)

 今年はベスト16以下のチームでも、面白い選手がいるのが特徴だ。
拓大紅陵は機動力、攻撃力が高く、今年も上位進出に期待がかかる。左のスラッガー・本多 正典、勝負強さが光る坂本 大希、俊足でバットコントロールの良い松尾 康平、広角に長打が打てる古島 佑樹と野手の逸材が揃う。あとは投手陣の底上げにかかっているのではないだろうか。ベスト16の千葉英和は、曲りが大きいカーブを武器にする左腕・道地佑、135キロ前後の速球で勝負する右腕・坂上 聖の2枚看板の成長に期待がかかる。3回戦で千葉経大附に健闘を見せた検見川はメンタルの強化を課題に取り組んでおり、強豪校に競り勝つ力をつけていきたい。

 また上位進出チームに負けない選手層を誇るのが成田。大型右腕・尾身 健太朗、走攻守ともに高いパフォーマンスを見せる花嶋 悠吏、長打力のある酒巻 翔と選手1人1人の力量は高く、流れに乗れば怖いチームだ。

 横芝敬愛は、140キロを超える速球を投げる本格派・横芝敬愛伊藤 翔、強打の二塁手・高上 幸大の成長に期待。志学館都築 駿小林 功汰とともに130キロを超える右腕コンビが注目だが、打線のレベルアップというのが強豪校に対抗するカギだ。

 千葉商大付は、投打の柱・吉山 栄太、長打力もあり、守備範囲の広い外野守備を見せる小山 裕輝と打力ある選手が多いが、昨秋はあまり力を発揮することができなかっただけに一冬越えてレベルアップできているか。柏日体は、上位進出チームに負けないだけの選手層を誇り、さらに全体の底上げが実現できれば、怖い存在。昨秋の県大会中央学院を破った松戸馬橋は、投打の柱・秋山壮太が大型右腕。一冬越えてストレートに磨きがかかっているか。中央学院も、夏を経験している右腕・浅野 辰樹など経験者がいるが、一冬かけて仕上げてくるチームなので、見逃せないだろう。

 我孫子は昨秋の専大松戸戦(試合レポート)で本塁打を放った石川 竜馬など打力がある選手が揃い、試合終盤の粘り強さが出てくると面白い。千葉敬愛は、伸びのある速球を武器する右腕・石松 卓己に注目。まだ130キロだが、この冬を超えて140キロ台に達することができるか。銚子商は大型右腕・安藤 大賀がチームをけん引し、上位に導く存在となるか。また1年から活躍する好打の内野手・河野 聖二西武台千葉)、昨夏から活躍する渡辺 剛志(市立柏)は強肩巧打の外野手だ。

 千葉県は県大会出場しなかったチームも面白い。相川 汰生吾水町 貴行と長打力のある選手が多い東海大浦安、また昨夏16強の松戸国際は見逃せない存在だ。さらに昨夏の千葉大会で、16奪三振の快投を見せた鈴木唯大国府台)もキレのある速球を武器にする左腕。強豪校からすれば警戒しなければならない相手になりそうだ。

 こうしてみると今年の千葉県も、全体的に好選手、好チームが多く、春、夏のベスト8が大きく変わっていてもおかしくない。上位進出となるチームはどこなのか?ぜひ春季地区予選から注目をしてほしい。

(文・河嶋 宗一


注目記事
第88回選抜高等学校野球大会 特設ページ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.24

【福島】田村、日大東北、只見、福島が初戦を突破<春季県大会支部予選>

2024.04.25

筑波大新入生に花巻東、國學院栃木、北陸の甲子園組! 進学校からも多数入部!

2024.04.24

【佐賀】敬徳と有田工がNHK杯出場を決める<春季地区大会>

2024.04.24

【春季四国大会逸材紹介・香川編】高松商に「シン・浅野翔吾」が!尽誠学園は技巧派2年生右腕がチームの命運握る

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.21

【神奈川春季大会】慶応義塾が快勝でベスト8入り! 敗れた川崎総合科学も創部初シード権獲得で実りのある春に

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!