Column

帝京・松本剛から学ぶ!遊撃手&走塁論

2011.03.03

技術ノート

帝京高校・松本剛から学ぶ!遊撃手&走塁論2011年02月26日


帝京のキャプテンでショート・松本剛。高校球界屈指の好選手で今秋のドラフト候補として名前があがる。特に、守備や走塁が素晴らしい松本、日頃、どんなことを考え、工夫してプレーしているのかを聞いてみた。

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【目次】

ショートというポジション

中継プレーへのこだわり


盗塁、走塁へのこだわり


帝京で野球をすることについて


目指す選手像は? ライバルは?

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ショートというポジション

【松本剛選手】

――松本剛といえばショート。リトルのときはピッチャーもやっていたのを見たけど、シニアでもずっとショートでしたか?

松本選手(以下「松」) シニアでもピッチャーをやっていましたが、高校に入ってショートに専念しました。ショートは魅力があるポジション。だからこそ、自分はこのポジションにこだわりも持ってます!

――松本選手はどちらかというと正面のゴロよりも左右の難しいゴロが得意そうですね!

「松」 そうですね! 三遊間の厳しいゴロなんか、好きですね!遠投でスナップきかせて…そういうのが自分は好きです!

――やはりショートの見せ場はそこですか?

「松」 自分は三遊間の深いゴロを捕って一塁に投げるプレーですね。あそこの捕球と、捕ってから投げる速さ、肩、正確さなどは負けたくないです。

――だいたいピッチャーの特徴と、キャッチャーのサインや構え、打者の振りや構えをみていれば、打球がどこにくるか分かるのですか?

「松」 そうですね。ずっとショートをやっていて、経験も積んできたので、そのへんの感覚はあるかなと思います。ピッチャー、キャッチャー、バッターからこういう打球がきそうだなというイメージが湧くんです。

――だから、最初からちょっとどっちかに寄っていたりするんですね。

「松」 そういうのは、結構分かっちゃうので動きますね。自分はよく「一歩目がいい」と言っていただけるんですが、最初から来そうな方向に一歩寄っているので、そう見えるのかもしれません。

――甲子園でも解説者の方も「松本選手は一歩目がいい」と褒めていたけど…

「松」 自分の場合は、パっと動くのが速いんじゃなくて、その前に動いているので、それで一歩目が速く動けているように見えるのかもしれません。

――半歩どちらかに動いただけでも50センチ違いますよね。

「松」 そうですね。50センチ違ったら三遊間を抜けそうな打球もとれますから!

――三遊間と二遊間だとどっちが好きですか?

「松」 三遊間ですね! そっちの方が、打球がきそうなときもわかりますし!

――センター方向だと、ちょっと遅れてもグラブの方向だから追いついていけますか?

「松」 そうなんです、出せるんです!だから、グラブが逆になる三遊間の方に意識をおきます。三遊間はやはり意識しておかないと立ってしまうこともあるし、低くいかないと厳しいので、そういうことを考えても三遊間に意識を強めで、二遊間にきても対応できるようにしています。


中継プレーへのこだわり

【帝京高校野球部・試合シーン】

――ショートの大事な役割として中継プレーがあるよね。そこへの自分なりのこだわりや、気を付けていることはありますか?

「松」 カットに関しては、自分はラインをあまりずれない自信があるんです。これもずっとやってきての感覚なのですが、外野打球が飛んで、追いかけて、バックサードなら一瞬だけサードをみたら、ここだ、というところに入ればだいたいラインが合ってます。

 他の人から微調整を声で言われても、自分の感覚の方が合っていることが多いので動きません(笑)。たまに、ずれちゃっていた時は「自分が悪かった」と謝りますけど。

――何よりも自分の感覚を大事にするのですね。

「松」 外野手の中にはボールがシュート回転している選手もいるので、そういう場合はあえてラインをずらして入ったりもするんです。ピチっとラインに入ってシュート回転したボールがくると、捕球した体制から投げづらくなるので、あえてラインを一歩引いてボールを呼ぶ感じですね。

――ボールがきたところで前に出つつ投げる方向に引きつつ捕球して投げると?

「松」 ボールを迎えにいくのが嫌なんです。投げる方向に引きながら捕って投げた方が勢いがつきますからね!

――ショートバウンドがきたときは?

「松」 ショートバウンドがきたら外野手側にすくいにいく人も多いと思うんですが、僕はワンバンするな、この球落ちるな、と思ったら投げる方向に引いているんです。きれいにワンバウンドで捕れるところまで引いて、そこで切り返して投げます。

――こういうことはいつから考えるようになったんですか?

「松」 中学時代も自分なりに守備には力を入れていたんですが、高校に入って、バッティングよりまずは守備でアピールしたいなと思っていたのでいろいろ考えるようになりました。どうしたら早くカットからホームに投げられるかなと考えるようになって、そうしたら、何事も引いた方がいいなと分かったんです!

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【目次】

ショートというポジション
中継プレーへのこだわり

盗塁、走塁へのこだわり


帝京で野球をすることについて


目指す選手像は?

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盗塁、走塁へのこだわり

【試合中の松本選手】

――足も速ければ、走塁の上手さも光っている松本選手。走塁へのこだわりや決めごとなどはありますか?

「松」 自分はシニアのとき、走塁がメチャクチャ下手だったんです。

 (リードがない)リトルあがりで遅れもあったし、なおかつ自分は走塁センスがなかったんです。中学3年になっても、三盗はできても二盗ができない……。ピッチャーが明らかに前に向かって投げるってときしかスタートが切れなかったんです。

 でも、高校に入って、先輩たちのバッティングをみたら飛ばす人ばかりで、1年生の自分はこのままでは試合に出られないと思いました。でも、1年でもレギュラーになりたいという気持ちが強くて、足と守備を生かして絶対レギュラーをとろうと思ったんです。足の速さはそこそこあっても不得意だった走塁を思い切りやってみようと思うようになったんです。

――まずはどんなことから始めたのですか?

「松」 大胆にスタートを切れる練習をしていきました。練習試合などでも、逆をつかれてもしょうがないと思いながら強気でスタートをきっていくように。そうしたら、それがうまくいくようになっていきました。

――積極的な気持ちがよかったんですね。

「松」 その後、あるとき、たまたま夜にテレビをみていたら、何かの番組で西武の片岡易之選手の盗塁理論のようなものをやっていたんです。高校に入ってすぐだと思うんですが……。それをみていたら、「盗塁をするとき、片岡さんはどこを見ているんですか?」という質問に、片岡選手は「ピッチャー全体をぼんやり見ます」って言っていたんです。けん制があるかないかの感覚も「それで分かる」と言っていたんです。「上が先に動く人もいれば、足しか動かないピッチャーもいるし、ここがぴくって動く」とか……。

――それで早速やってみた?

「松」 はい! さっそく次の日から自分もピッチャーをぼんやり見るようにしてみたんです。そうしたら、すごい感覚が生まれてきました。本当にぼや~っと見ていると「盗める!」と思ったんです。

――ピッチャーのどこを見る、というのではない?

「松」 どこを見るんだ?と言われてもわからないんです。本当に全体をぼんやりとぼやける感じでふわっと見ているんです。そうすると、けん制がくるな、とわかったり、ここはこないな、と思ったり。それが結果につながりだして、確信に変わってきて、そこから自信を持っていけるようになりました。

――分からないときもありますか?

「松」 ありますね。調子が悪くて見えないときもあります。気持ちに焦りがあったりすると見えなくなります。でも、絶好調のときはその感覚が生まれてきて絶対分かります。

――左ピッチャーだと?

「松」 左でも同じ感覚です。左でもだいたい苦にならないですね。

――三盗も?

「松」 逆に三盗の方がもっと分かります。もう自分の感覚でいけますね!

――癖を盗んだりというのは?

「松」 癖が分かっていればより走りやすいですね! あとは配球を読んで、変化球のときにスタートを切る。高校生の組み立ては意外と単純なので、分かりやすいですよね!

――じゃあ、今は走塁に関しては自信がある、といえますか?

「松」 声を大にして「はい!」と言えるまでではないのですが、入学当初、走塁に関して本当に自信がなかったのでどうにかしていい方法を見つけようと思った末に、いいものがみつかりました。

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【目次】

ショートというポジション

中継プレーへのこだわり

盗塁、走塁へのこだわり

帝京で野球をすることについて


目指す選手像は?

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帝京で野球をすることについて

【帝京高校野球部・練習シーン】

――話しはガラリとかわって、高校野球で大変なところはどこ?

「松」 みんなは上下関係といいますが、自分はそんなにきつくはなかったです。言われたことはちゃんとやる、何か言われても嫌な顔をしない、一人だけ調子に乗ったりしないで普通のことをしていけば大丈夫だと思うんです。

――帝京は、ミーティングでお互いのことを言い合ったりしますよね。そこはどうしていましたか?

「松」 納得いかないプレーに関しては「あれはこうじゃないですか?」とか「自分はこっちの方がいいと思います」とかは言ったりはしました。

 でも、それは、野球のことであって、よりチームがよくなるためのことなので、それを言って遺恨が残るようなことはないんです。

 あのミーティングは「ここだけ」というルールになっていますから、ロッカールームにいってまで続くことはないんです。

――そこが帝京の面白さというか、いいところですね! でもやっぱり1年生で試合に出ていると緊張もしたでしょう

「松」 プレーは学年関係なしに大胆に思い切りやっていいと思うんです。でも、むちゃくちゃ緊張していました。練習試合も公式戦も(苦笑)外野に指示を出すにしても、なんかへんな感じというか、全部が難しかったですね。いつもどうすればいいんだろうと考えていました。

――特に、夏の甲子園予選、甲子園での試合などは極度のプレッシャーの中でやっていた?

「松」 そうですね。自分のエラーで負けたりしたら大変ですから。でも、不思議なことに、そういう緊張感があった方がミスをしないんですよ。

――緊張感があった方がいいんですね?

「松」 自分はたぶんそうだと思います。緊張した中の方がいいみたいです。

――プロ向きですね!

「松」 プロにはいきたいですけど!

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【目次】

ショートというポジション

中継プレーへのこだわり


盗塁、走塁へのこだわり

帝京で野球をすることについて

目指す選手像は?

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目指す選手像は?

【左・松本剛選手と右・伊藤拓郎選手】

――目標にしている選手はいますか?

「松」 巨人の坂本勇人選手です。

――その理由は?

「松」 あの若さで巨人のショートを守っていることがまずすごい。自信満々なところもいい。1番打者として、出塁もよくするし、長打力もあるし、守備もうまいし。すべてをきっちりきれいにこなすところがすごいなと思っています。

――伊藤拓郎、という存在は?

「松」 拓郎はみていて刺激になるので、いてくれて有り難い存在ですね。今までそんなに一生懸命やる感じではなかったんですが、このところやる気が出てきてどんどんよくなっています。拓郎が頑張っているから自分も頑張ろう、拓郎があんなに実績を残したんだから自分も頑張らなきゃ、そういう感じでいつも刺激になっています。

――では、夏に向けて、また目標のプロに向けて、今後の抱負をお願いします!

「松」 チームとしては、とにかく夏の甲子園です。これまで2回甲子園には行っているんですが、それは先輩に連れていってもらった甲子園。夏は自分たちの力で後輩を甲子園に連れていってあげたいという気持ちです。最後の夏なので、全国制覇を狙います! 個人的にはとにかく結果を残すこと。プロ1本に絞って自分にプレッシャーもかけて頑張っていますが、春夏の結果次第だと思うので、チームに貢献できるプレーをたくさんしてアピールしていきたいと思います!

――最後に、同じ高校球児、これから高校野球に飛び込もうという選手へのメッセージをお願いします!

「松」 これから高校野球をやる選手には、どんな高校であれ、いいこと、辛いこと、いろいろあると思うんです。特に1年生の間は、何をやらなくちゃいけない、あれをやらなくちゃいけない、とあると思うので、絶対辛いと思います。でも、それを乗り越えれば必ずいいことがあると思うから、そこを頑張ってほしいです。あとは、高校野球はスタートが大事だと思うので、準備をしっかりして高校野球の世界に入っていくといいと思います。高校野球って、心が折れること、折れそうになることが何十回もあると思うんですけど、そこは〝甲子園〟など、自分なりの目標持ってぶつかっていけば乗り越えられると思います。僕もあと半年頑張るので、同じ仲間として頑張っていきましょう!

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【目次】

ショートというポジション

中継プレーへのこだわり


盗塁、走塁へのこだわり


帝京で野球をすることについて

目指す選手像は?

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(文・インタビュー:瀬川 ふみ子)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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