Column

成蹊高等学校(東京)

2015.07.10

 今年、野球部創部90年を迎えるなど歴史と伝統があり、現 内閣総理大臣の安倍 晋三氏の母校としても有名な成蹊高等学校。

夏の大会
に向けて、野球部の現状やこれまでの取り組み、進学校ならではの勉強と部活動との両立について、そして11日(土)の初戦に向けての意気込みを両角 雄功監督、本木 惇太主将、石村 優貴選手、栗田 陸選手の副将2名にお話を伺いました。

基礎から見直すキッカケとなった春季大会の敗戦

ダッシュをする選手たち(成蹊高等学校)

「もう1回基本から見直そうということから、フリーバッティングは無しにして、キャッチボールとトスバッティングだけを約1ヶ月半やっていたんですよ」

 春季大会での都立葛飾野戦で敗れたことで、もう1度基本から見直す決意をした両角 雄功監督。

 この1ヶ月半で選手たちは基本の大切さを学ぶ。さらに、トスバッティングと同じようにバント練習も行った。
「先日の練習試合では、5点入ったうちの3点はスクイズでした」

 徐々に結果が表れつつある取り組みに笑顔を見せる指揮官。

「稽古とは、一より習い十を知り、十よりかえるもとのその一」という千利休の言葉がある。
10までやって、それで終わりではない。もう1回1から戻って再度行うからこそ気づくこともあるので基礎は大切なのだ。

 専用のグラウンドを持つ成蹊高校だが、下校時間が決まっており、勉強や受験との両立という事情があり練習量に関しての悩みもある。しかし、選手たちは自分で考え、朝練等で自主的に取り組んでいる、と本木 惇太主将。

 両角監督は選手たちについて、
「今の3年生は1年生の時から行っている練習を熟知しているので、私が指示するよりも彼らの方がやることを知っているのです。与えられる練習ばかりではなく、自分たちで考えることも大切。練習内容についても、主将の本木と昼休みにその日の練習内容を話し合う。練習では、最後に自由練習を行うこともありますが、そのときは自分たちで考えて練習に取り組むように指示しています。ですから走る選手もいれば、牽制球の練習をするピッチャーというように個々それぞれ」
と、個々の自主性を尊重している。

「やらされる野球」では伸びないことが30年を超える指導の中で一貫した考えであり、それは野球に限った事ではなく、勉強も同じである。だから自分で求めて考えてやる野球じゃないとダメだと両角監督は語る。


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[page_break:何事にも目標意識をもつ大切さ、文武両道を実現する事で見えてくる考え]

何事にも目標意識をもつ大切さ、文武両道を実現する事で見えてくる考え

栗田 陸選手(成蹊高等学校)

 今年、グラウンドの改修工事のため、隣接する陸上トラックで走りを中心としたトレーニングを行ってきた選手たち。
400メートルのグラウンドを、縦に2つに割った200メートルでダッシュを行うトレーニング。200メートル1本を40秒以内に走って1分20秒休息を挟む。それを8本1セットから始め、それを2回繰り返したら次は9本1セット。9本を2回繰り返したら10本と数を増やして走る。最終的に12本くらいまで走ったそうだ。

 内容を聞いただけでもキツさが伝わってくるメニューだが、これだけではない。
この1分20秒間の休息の間に、腹筋と背筋を途中で20回ずつ入れる。200メートルを走って最初腹筋を20回行い、余った時間を休みに充てて息を整える。

「自分が意識していたことは、このランメニューで何回1位を獲れるかということでした。8本1セットの時は4回1位を獲ることを目標にして。そういう風にして目標を持って自分に負けないように走っていました」と語るのは副将の石村 優貴選手。

 また守備の要である捕手の栗田 陸選手(副将)は、こう語る。
「普通に走っているだけだとあまり効果がないので、ピッチャーが体重移動を意識して走れということを言われていたので、それを一緒にやろうと思って。一緒にピッチャーに声を掛けながら、体重移動を意識しながら走りました」

 想像を絶するラントレーニングを漠然とこなすだけでなく、選手たちはそれぞれの目標や課題を持って走っていた。

 進学校である成蹊高校では、野球部とはいえど勉強と部活動との両立は欠かすことができない。
その点に関して両角 雄功監督は「野球と勉強との切り替えができる選手は、それが自然とプレーでも出てきますね」と選手たちを見渡す。

 選手の多くが部活を行いながら塾にも通う。どのようにして部活動と勉強を両立するのか。

「部活をやる時は部活で、塾と学校では勉強をして、家では宿題だけと切り替えをしています。勉強で、反省をしてそれを次に生かすという部分は、練習試合とも似ていると感じます」(石村 優貴選手)

「塾に通うのに、直接塾に行ってしまうと食事が摂れずに体重が減ることが気になるので、部活が終わってすぐに家に帰って食事だけ摂って塾に行くようにしているところは工夫しています」(栗田 陸選手)

 野球と勉強を両立しようとすることで見えてくる考え方や工夫もあるのだ。


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50人の選手で挑む90回目の夏

練習後のミーティングの様子(成蹊高等学校)

 現在の成蹊高校の部員数は、3年生が17人、2年生が16人、1年生が18人で部員が51人。マネージャーを加えると総勢58人。部が創部されて90年の節目の年を迎えた。

 野球部90年間の中で、3分の1の約30年を成蹊高校の指導に携わる両角 雄功監督。指導を始めた当初は、部員5人のうち実質的に活動していた3人に両角監督を加えた4人からスタートしたという。そんな経験をしているからこそ、現在の部員58名で野球ができることに幸せを感じる両角監督。

 さらに現在、3学年共通して部員が誰1人として辞めていないという野球部。
練習中に厳しい言葉を投げかけても日常生活では全くぎくしゃくしないようで、誕生日をみんなで祝ったり寄せ書きの色紙を書いてプレゼントしたりするなど、仲の良さが取材から伝わってくるほど。

 目標意識を持って取り組めていて、かつチームの雰囲気も良い成蹊ナイン。夏の大会の目標とは。
「去年、久々に1勝できたので、それは超えていかないといけないと思っていて、1戦1戦集中して接戦をしっかり勝っていきたいと思います」と明確な目標を持って取り組む本木 惇太主将。

 昨年、怪我で万全の状態で臨めなかった石村 優貴選手は、チームを引っ張っていけるように攻守で貢献できるように活躍を誓う。

「90周年なので0Bの方も期待していますし、学園の生徒や保護者の方々も注目をしてくれていると思うのです。そういう中で、1つでも多く夏の大会を勝ち進んでいき、熱い戦いをお見せしたいと思います」(両角監督)

 成蹊高校は11日(土)に、都立千歳丘と初戦を戦う。
58人の選手で挑む90回目の夏。今までで一番熱い夏になることは間違いないだろう。

(取材・写真:佐藤 友美


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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