千葉敬愛高等学校(千葉)
秋から春へ、一段ずつチームをステップアップしながら夏を見据える
新チームになって、秋季県大会はベスト8、そして春季県大会ではベスト4に進出。一つずつステップアップしていきながら、Aシードで迎えるこの夏は、さらなる上のステージを目指していきたい千葉敬愛。四街道市の学校にあるグラウンドを訪ねた。
6月はスタミナ強化週間!
さまざまな設定での練習(千葉敬愛高等学校)
JR成田線の四街道駅で下車し北口に出ると、そこから徒歩で7~8分、近くに女子高もあり閑静な文教地区といっていい場所に千葉敬愛のキャンパスがある。そして、体育館には他のさまざまな部活動の活躍を示す垂れ幕がかかっている。男子ソフトボール部や、女子はバドミントン部、ダンス部などは全国でもトップレベルでもあり、誇らしげにその成果が掲げられている。もちろん、野球部としても負けてはいられないわけで、この春あと一つ勝って、「野球部関東大会出場」を掲げたいところだった。
結果的には、準決勝で敗退してしまったが、秋から一つ階段を昇れたことは、間違いなく自信になっているという。
学校としては、昨年あたりから生徒数が増えて、1クラス増となり、1年と2年は13クラスとなっている。このことで、急遽教室が必要となってきたため、昨年まではこの時期に合宿所として使用していた場所を、そのまま教室にせざるを得なくなった。そんなこともあって、この時期の例年の強化合宿が無くなってしまった。
校内強化合宿ができなくなった代わりに、6月上旬からは「スタミナ強化週間」として、練習後には意図的に身体に負荷をかけるトレーニングを課すようにしている。とはいっても、器具を使ったものではなく、古典的なモモ上げやスクワット系に、ダッシュやランニングといったメニューを増やしていくというパターンだ。
これを6月最終週頃まで続けて、そこから徐々に負荷を落としていって、夏の大会にベストコンディションにもっていくということを狙いとしている。
今年で、就任3年目となる山崎 祐司監督は、
「図抜けた選手がいるというものではありませんが、平均点は高いチームになっていると思います」
と、今年のチームを評している。そして、
「選手の個性を生かした育成と、基礎と基本に忠実なプレーを心掛けるように指導しています」
というのが、基本姿勢である。そして、どんな形であれ、「チームにとって必要とされる人物であることが大事」ということを選手たちには浸透させている。
エースの吉野涼&主将の石井 太一を軸に
3年生だけで27人、2年生が35人、1年生が31人と90人を超える大所帯となっている。それだけに、個々の役割をそれぞれに理解させていくことも、かなり難しい作業ではあるが、それを自覚させていくことが非常に大事になってくる。
通常の練習は、授業が終わって15時40~45分頃から始まる。グラウンドそのものは、外野のライト後方では県内では無敵を誇る強豪として知られている男子ソフトボール部が練習をしている。しかし、野球部のグラウンドはある程度は専有的に使用することが可能となっている。
グラウンドそのものは決して広いというものではない。それでも、
「校舎に隣接して試合もできるようなグラウンドがあるだけでも、恵まれていると思わないといけませんよ」
と、山崎監督自身はグラウンドにはあまり恵まれていない東京都の都立校出身だけに、この環境でも十分に恵まれていると感じている。IT企業を思わせるような、近代的な設備の校舎が、グラウンドを取り囲むかのようになっている。
エース吉野 涼君(千葉敬愛高等学校)
毎日のメニューとしては、特別な練習はしていない。シート打撃などでは、さまざまな状況設定を確認しながら、一つ一つのプレーに関して、まずいところがあれば山崎監督はもちろん、田中 貴祐樹部長や、山田 高宏コーチ、福田 達志コーチらが随時アドバイスを送っていくという形で進められていく。ボールを扱う練習では、やはり、実戦をイメージしたものが中心となっている。
今春は、エースの吉野 涼君が安定していたことで、チームとしてもしっかりとした戦いができたと振り返る。ことに、県大会の3回戦、東京学館船橋とは5回と9回にお互いに1点ずつ取り合うという展開の辛抱戦となり、タイブレークにもつれ込んだ。初めてのタイブレークは、10回表に相手失策に乗じて1点を奪うと、その裏も相手の中軸を吉野君がイメージ通りの併殺で切って取った。守り切れて勝てたことで、チームとしては大きな自信にもなった。
主将の石井 太一君(千葉敬愛高等学校)
捕手として吉野君をリードしていた主将の石井 太一君は、このタイブレークで勝てたことでチームそのものも成長したし、チームとしてもまとまりがあるということを実感したという。
ただ、その後の準決勝では優勝した専大松戸に1対8でコールド負け、昨秋も準々決勝で優勝した木更津総合に0対5で、コールドゲームにはならなかったものの、ほぼ一方的な形で敗れている。石井君は主将としても、それらの敗戦を一つのバネにしていかなくてはいけないと思っている。
あと一つの壁を乗り越えた先に
練習後の山崎 祐司監督の指示(千葉敬愛高等学校)
「結局、去年の秋も今年の春も、同じような負け方をしてしまっています。もう、そんな負け方はしないという強い気持ち、頂点を獲るという気持ちで練習しています」
と、練習に取り組む気持ちを語っている。
そして、そのために心掛けていることとしては、アップの時や練習の時にでも、お互いに厳しい声を掛け合っていくことだという。そして、
「今取り組んでいる、体力アップもそうですけれども、自分自身やチームに対して自信を持っていくことが、夏に勝ち抜いていくための要素になると思います」
と、思いを語っている。
課題としていた攻撃面に関しても、チームとしては最も努力している選手として評価されている椎名 俊介君も四番打者としての責任を感じつつ、確実に成長している。リードオフマンとしてチームを引っ張る曲者の吉原 裕貴君と、守りでも安定したところを見せている山崎 麗弥君との一・二番が機能すれば、得点力は上がっていくはずである。
そんな千葉敬愛が、冬から春にかけてのトレーニングとして取り組んできたことに、通称“吉岡”と呼んでいる練習がある。吉岡とは地名で、学校からほぼ3キロくらい離れたところにある平原だが、そこまで走っていくトレーニングである。ただ、その道のりが適度な上りと下りの繰り返しになっているのだ。実際、ロードに慣れている駅伝選手が走ってもかなり堪えるコースだという。そんな中で、足腰はもちろんのこと、精神力も鍛えられていったのである。
春4強に残れたということで、この夏はトーナメントの山形では四隅の一角を占めるAシード校として臨むことができる。ただ、だからと言って受けて立つ意識になってはいけないということは、山崎監督もミーティングなどでも何度も口にしていることである。それが、目指すところの「逆境に強くて、自信を持っていきながらも、かつ謙虚な姿勢を忘れないチーム」ということである。
毎年のことながら、近年の千葉県は30~40校くらいに甲子園のチャンスがあるといっても過言ではないくらいの混戦である。そんな中で、昨秋の覇者の木更津総合と今春の王者専大松戸がややリードしているという構図である。千葉敬愛は、秋春とそれぞれその優勝校に敗れているだけに、あと一つの壁をどう乗り越えていくのかということも、大きなテーマとなっている。
初戦を突破して勢いに乗っていきたいというのが正直なところであろう。だから、夏へ向けての戦いは「勢いづいて、乗ったら止まらないというような試合をしていきたい」と、あくまでチャレンジャーとして向かっていく意識なのである。
(取材・文=手束 仁)