Column

県立浦添商業高等学校(沖縄)

2015.06.22

 2012年の夏
優勝候補と呼ばれた興南(同年春季県大会準優勝)と2回戦で対戦した浦添商は、同点に追いつかれた9回裏にサヨナラ勝ちを収めると、勢いそのままに勝ち進む。準決勝では、前原と延長戦の激闘を制すると、決勝でも沖縄尚学(同年春季県大会優勝)を相手に逆転勝ちを収めて4度目の夏の甲子園出場を決めた。

 その当時のメンバー・宮里 泰悠らの勇姿を見て浦添商の門を叩いたのが、今年の3年生たちだ。
彼らにとって最後の夏が、6月20日に幕を明けた。
今回は、初戦を間近に控えた浦添商のこれまでの歩みを紹介する。

キャプテン・大城 匠選手にインタビュー!

Q.今年のチームの特徴を教えてください!

 今年のチームは、投手を中心とした守りの野球で、相手よりも1点でも多く取って競り勝つチームです。

昨年秋
も、満足できない結果ばかりで、監督さんも僕らの持っている力をもっと引き出そうと、春以降は、練習試合でも負けることは許さないという気持ちで臨んできました。

 もし試合に負けたら、左右のポール間走を10本。これがひとつの基本で、例えば3点差で負けたら10×3=30本を走りました。
これを全員でやりきったことで、より負けない心と、みんなでやりきったぞという思いは残りました。つい先日、八重山遠征に行ったのですが、そこでも、みんなの心がひとつになったと思います。

 

 一体、この「八重山遠征」でチームにとってどんなことがあったのでしょうか?

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僕らの熱い夏 2015
第97回全国高等学校野球選手権大会
【ひとまとめ】2015年の全国各地の高校野球を占う!
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転機となった八重山遠征

大城 匠選手(県立浦添商業高等学校)

 大城 匠キャプテンが語った八重山への遠征では、八重山高校、八重山商工八重山農林の3校と対戦したのだが、この遠征には、八重山出身でもある宮良 高雅監督の粋な計らいが込められていた。

 浦添商は、3年生部員だけでも56名いる。そのほとんどが、ベンチ入りせずに最後の夏を迎えるのだ。避けられない運命でもあるのだが、これまで頑張ってきた選手たち全員に野球を楽しんでもらいたいと、3チーム編成で八重山遠征に臨んだ。最後の夏の大会では試合に出られない選手たちも、この遠征では心から野球を楽しむことが出来たという。3年生の太田は、
「僕はこの夏、応援する側へ回るのですが、八重山で試合が出来て、さらにホームランまで打てました。レギュラーメンバーともすごくいい時間を過ごせました。夏の大会では、ベンチメンバーにしっかりと声援を送りたいと思います」

 また、キャプテンの大城は、
「最後の夏、出られないみんなの思いを背負って、絶対勝って甲子園出場を決めるんだという思いがより強くなりました」と語った。

 その気持ちはエースも同じだ。
1年生大会優勝したチームの柱(当時は現在ショートを守る宮城 清主と二本柱)として、長くマウンドを守るサウスポー天久 太翔は、こう振り返った。

「1年生で優勝して、2年生の夏は、美里工伊波 友和さんと延長15回を投げあって勝てました。振り返るとあのときのピッチングがすごく良かった。でもそれから調子が下降して、も商業大会も満足いく投球はなかったんです」

 ところが、約3週間前に運気が上がり始めた。
「体の開きを抑えようと新しいフォームに取り組んでから、ストレートのキレが上がりました」

 宮良監督は、
「軸足のタメが良くなってきたのも最近で、夏を前に、良い状態で迎えることが出来るのはホッとします」

 そんなサウスポーがライバル視しているピッチャーがいる。昨年の秋季県大会ベスト4へとチームを導いた首里高校の中真 慶大だ。

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[page_break:今年はレギュラー、控え選手との差がほとんどない]

今年はレギュラー、控え選手との差がほとんどない

天久 太翔選手(県立浦添商業高等学校)

「同じ左で、同じように1年生から投げ続けてきた。僕らが初戦を突破したら当たる可能性がある。もちろん(新人大会準優勝の)嘉手納が来るかも知れませんが、どちらが来ても投げ勝ちます!」
そんな天久 太翔をはじめとする浦添商投手陣を引っ張るのが2年生の金城 慶也捕手だ。
「自分はあまりバッティングでは貢献出来ないので、リードとキャッチングで先輩たちを支えたい。太翔さんや、大城勇人さん、上地哲平さんの持ち味を出しつつ、内と外をしっかり使って相手を封じたいです」

 そう話す金城も、今年に入ってすでに2本のホームランを放った。さらに中学硬式野球ポニーリーグでは、全日本のメンバーに選ばれたほどの選手でもあるのだ。一つ下だが、投手陣はもちろん、先輩たちからの信頼が厚い守りの要でもある。

 当時の高校生BIG3と呼ばれ、優勝候補だった愛工大名電濱田 達郎を前に、大方の予想を覆して打ち破った浦添商。3年振りの甲子園へ向け、これまでに無いほどの団結力とチームの底上げが出来た。あのときと同じように、一戦一戦をしぶとく戦い抜くことで、みんなの夢が近づいてくる。宮良 高雅監督は言う。

「この3年生たちは頑張り屋さんが多く、今ではレギュラーメンバーと控えの差がとても縮まりました。そういう意味での選手層の厚さはあると思います」

 まるで、秋までの4番でも、春までのクリーンアップでも打順が確定ではなく、その日の調子が良い選手が試合に出られるような厚さとなった。加えて八重山遠征で分かち合ったレギュラーメンバーとスタンドで応援する同級生たちの絆は、どこの高校よりも強いとナインみんなが信じている。

 さぁ、夢舞台へ。3年生56名の思いを乗せて浦添商が突き進む!

(取材・文=當山 雅通

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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