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鵡川高等学校(北海道)

2011.02.10

「鵡川高等学校」

鵡川高等学校2011年02月10日

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【目次】
1.鵡川高等学校
2.ご飯は練習後40分以内に摂取
3.2か月に1回の筋力測定で、自分の体を知る
4.寮ではなく、体も心も育てる「塾」
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鵡川高等学校

 今、高校野球界でも選手の理想体重は、「身長-100」(身長175cmの選手であれば理想体重75キロ以上)と言われているが、鵡川の場合、今年1月14日の時点で2年生29人の平均体重は身長マイナス100をクリア。また、1年生25人の平均体重もあと2キロで理想体重の数値に近づくなど、学年問わずどの選手をみてもがっしりとした体つきをしている。これまで鵡川は2002年以降、3度春のセンバツに出場しているが、冬を越える前に行われる神宮大会でも毎回どのチームよりも体の大きさが目立っていた。
そんな鵡川の体作りの秘訣とは…。そして、作り上げた体を無駄にせず野球に生かし、勝てるチームに育つ方法とは?

 まずは、鵡川高校野球部の環境を写真で紹介。

【野球部は全寮制で、監督のご家族も一緒に暮らす】

【2つある室内練習場。一方は監督自ら建てたものだ】

【投球練習、打撃練習、ウエイトと何でも出来る室内】

【片方の室内練習場はノックも出来るほどの広さ】

【室内の奥にはウエイトトレーニングのスペース】

【昨年立正大から母校に戻ってきた亀田直紀コーチ】

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【目次】
1.鵡川高等学校
2.ご飯は練習後40分以内に摂取
3.2か月に1回の筋力測定で、自分の体を知る
4.寮ではなく、体も心も育てる「塾」
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ご飯は練習後40分以内に摂取

 食べる。とにかく、食べる。鵡川は一日の中で、食事をしている場面が多い。
「食べるのが遅いやつは伸びない」「朝飯は金なり」「日本人なら米をたくさん食べろ」この日も佐藤茂富監督の口からは、“食”に関する言葉が次々と出てきた。食べることも、練習の一環なのだ。
 佐藤監督が鵡川に就任する前の砂川北時代もそうだったが、全寮制の鵡川の場合はとくに、部員全員に徹底した食事指導ができるようになった。部員たちの一日の食事の流れはこうだ。朝6時にランニングや自主練習、寮内の掃除を終えて、朝7時半に朝ごはん(ご飯茶碗2杯)。12時に昼ごはん(ご飯茶碗1杯)、練習を終えて18時に夕ご飯(ご飯茶碗2杯)。さらに、夜間練習を終えて21時に夜食(おにぎり1個またはパン)を食べる。実はこの時のポイントは、炭水化物の摂取量も相当多いのだが、ご飯を食べるタイミングも体重アップに関係しているのだ。運動を終えてから食事をする場合、最も理想的と言われる“40分以内”での食事を鵡川は毎日3食+捕食で実行しているのだ。
「最初は量が多くて食べるのが辛かったのですが、入寮して1~2カ月で慣れました」と、2年生部員たちは夕飯もペロリと平らげる。入学時から比べると、どの選手も体重は10キロ以上アップしたという。

【この日の献立は麺類。もちろんご飯も一緒に食べる】

【夕飯の食事風景】

【朝も食べ始めて数分でおかわりの列ができる】

【朝ごはん。全員で黙々と食べ続ける】

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【目次】
1.鵡川高等学校
2.ご飯は練習後40分以内に摂取
3.2か月に1回の筋力測定で、自分の体を知る
4.寮ではなく、体も心も育てる「塾」
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2か月に1回の筋力測定で、自分の体を知る

 鵡川高校では2か月に1回の頻度で筋力測定を行っている。ここでは、ベンチプレス、スクワット、立ち幅跳び、股割り、腹筋など、全18種目を計測して一斉に数値を出す。ここで、自分が2か月前よりも、また1年前より、どれだけ筋力がアップしているのかを知ることができる。例えば、ベンチプレスであれば昨秋11月から僅か1か月半で、2年生29人の平均は3.6キロアップの78キロ。1年生25人の場合は、1か月半で平均4.2キロアップの64キロまで上げられるほどになっている。これだけ一学年で部員数がいる中でも、各学年の平均値が全国標準よりも高い数値を出せるのは、食事指導同様、筋力トレーニングにも重点を置いている証拠である。

 毎回、測定が終わると久村トレーナーからこれから2か月間のトレーニングプログラムと、重さと回数を個人で記入する記録用紙が配られる。今回は、「除脂肪体重はいい数値が出てきたので、次はスピード・パワーを高めるトレーニングに入ります」と、新たなトレーニングメニューを紹介。2年生になるとトレーニングにも慣れて、1年生たちにマンツーマンで見本を見せながらポイントを教えてあげる場面も。

 このウエイトトレーニングは、オフシーズンの間だけは、週2回から週3回に増えるが、鵡川の練習の中でオールシーズン変わらないのが個々のスイングの量だ。ティーバッティング含め1日1000スイング振り込むことから鵡川自慢の強打線は生まれている。
「1日1000回を1年で300日続けるので、年間30万回はバットを振っています」と部員たちは胸を張る。食事×筋力×スイング。どれも「量」にこだわって、“全員”でやり抜くのが鵡川高校野球部の強さだ。

【各種目の数値を報告する部員たち】

【2か月前よりも筋力がついたかな?】

【メディシンボールを使ってパワー測定】

【握力を測定中…】

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【目次】
1.鵡川高等学校
2.ご飯は練習後40分以内に摂取
3.2か月に1回の筋力測定で、自分の体を知る
4.寮ではなく、体も心も育てる「塾」
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寮ではなく、体も心も育てる「塾」

【今年で監督歴50年目を迎える佐藤茂富監督】

 全寮制の鵡川には、週1日休みがある。その休みの日の使い方を聞いたところ、「全員、寮にいます」という答えが返ってきた。
実は野球部のルール中で、携帯電話やお菓子・ジュースの禁止はもちろんだが、外出も禁止事項の1つだ。そのため、部員たちは高校を卒業するまで、この町のどこにコンビニがあるのかさえ知らない。TVも寮に1台だけ設置。家に電話をする場合は、寮内に置いてある公衆電話から掛ける。鵡川のように、全国には同じようなルールが設けられている高校がいくつかあるが、鵡川の場合は「甲子園に行くため」「野球が上手くなるため」だけを目的にした野球部ではないことが、寮の入り口の上に書いてある文字をみれば分かる。

 寮の入り口には、『鵡川三氣塾』と書かれている。つまり、ここは佐藤監督による人生修行の“塾”なのだ。そして、その横には『元氣・本氣・一氣』と文字が並んでいる。食べることも、トレーニングも、勉強も野球もすべて『氣』から。そんな思いが込められている。
「監督は武士のような方です」と選手たちは言う。勝負の世界で勝ち抜くために、常に厳しい面をみせながらも、ふとした瞬間、彼らを思いやる言動をみせる監督の“氣”を選手たちはしっかりと感じ取っている。だからこそ部員たちは、24時間野球漬けの生活を送りながらも、常に懸命に、そしてどこか楽しそうに野球をしているのだ。
 食事やウエイト、各練習においても嫌々やらされているものではない。強くなるために、当たり前のこととして選手たちが前向きに取り組んでいるから、その結果が数字となって表れてくるのが鵡川の場合は早い。
 きっと北海道に春が訪れるまでに鵡川の選手たちは、もう一回り、大きく成長しているのだろう。

(文=安田 未由)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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